EU、ロマ人の統合促進で国別戦略策定へ
【ブリュッセル=瀬能繁】欧州連合(EU)の欧州委員会は、域内で約1100万人とされる少数民族ロマ人の生活改善をめざす対策をまとめた。教育、雇用、健康、住居の4分野で、年末までに具体策を盛り込んだ「国別ロマ戦略」を提出するよう加盟27カ国に要請した。
かつて「ジプシー」と呼ばれたロマ人をめぐっては昨年、フランス政府が同国内のロマ人のキャンプを撤去、中・東欧に送還したことで「少数者への差別」と問題になった。欧州委はロマ人を取り巻く経済的・社会的問題が域内での差別の背景にあると判断、加盟国に一段の対策を促した。
例えば、ロマ人で小学校を卒業したのは42%、平均寿命はEU平均より10歳程度短いという。加盟国は国別戦略で、ロマ人と平均的なEU市民との格差を埋めるための政策を提示。実施状況を欧州委が監視、年1回、欧州議会と加盟国に報告する枠組みをつくる。
ロマ人はブルガリアの全人口の約10%、スロバキアの9%、ルーマニアの8%を占める。世界銀行の試算によると、ロマ人すべてがEUの労働市場に全面統合されると、中・東欧を中心に毎年5億ユーロ程度の経済効果が見込めるという。