警察官の警棒が男子高校生(当時)に当たり、失明させた事件で、那覇地検が29日、警察官を業務上過失傷害罪で在宅起訴した。沖縄県警が書類送検した特別公務員暴行陵虐致傷罪から法定刑が軽い罪への変更。被害少年は本紙の取材に「この国では警察と対立した被害者は損をすると身をもって実感した」とのコメントを寄せた。
少年はもともと県外での進学や就職を希望していた。だが地検の処分や時期が分からないこと、起訴された場合も裁判の長期化が見込まれることから諦め、高校卒業後も県内にとどまっている。
当初から一貫して「警官に警棒で殴られた」と主張してきた少年は、「期待を持てずにいたので、起訴されただけまだ安心した。ただ、罪が後退しているのはとても残念に思った」と吐露した。
少年の親族は「業務上過失傷害での起訴は初めから決まっていたのではないか」と疑問を投げかけた。少年側は今後、刑事裁判手続きに被害者参加する。
■故意の立証困難か 一瞬の事件、証拠限られる
元裁判官の釜井景介弁護士の話 那覇地検が業務上過失傷害に罪名を切り替えたのは、巡査の行為が故意だと立証するのが難しいという判断からだろう。
一瞬の出来事で重傷を負った被害者は、当時の状況を明確に供述できない部分もあるはずだ。目撃証言などもない中で客観的な証拠は限られ、県警も地検も巡査の供述を前提とせざるを得なくなる。
県警は書類送検の際、巡査が左手でつかみかかった行為と右手の警棒が当たったことを一連だと捉え、故意の暴行に当たると結論付けた。だが、つかみかかる行為と警棒が当たって重傷に至らせた結果を結び付けるのには無理がある。
けがや警棒の状態などから当時の行為態様をどこまで推定し立証できるかが問題となるが、検察は合理的疑いなく故意だったと認定できるだけのハードルを超えられなかったのだろう。