故事成語を知る辞典 「目から鱗が落ちる」の解説
目から鱗が落ちる
[使用例] 何も言われずとも、こちらの胸にぐっと来るのだ。ハッと思う、とたんに目から鱗が落ちるのだ。本当に、改心も出来るのだ[太宰治*正義と微笑|1942]
[使用例] 私もおそらくオランダ書のほうが正しいだろうとは信じていたものの、現実の人体内臓にあたってそれを確かめ得て、眼からうろこが落ちたような思いがする[南條範夫*無頼武士道|1973]
[由来] 「新約聖書―使徒行伝・九」に見える話から。一世紀のこと、キリスト教徒を迫害していたサウロ(パウロ)という人物は、ダマスコという町へ向かう途中、目もくらむような光に包まれました。そして、イエスが「なぜ私を迫害するのか。町へ行けば、あなたのすべきことが告げられるだろう」と語りかけてくる声を聞いたのです。その光のせいか目が見えなくなった彼が、ダマスコの町で祈っていると、アナニアという人物が目を治しにやってくる幻を見ました。すると、実際にアナニアが現れて、「イエスが私を使わしたのです」と告げました。「するとたちどころに、サウロの目から、うろこのようなものが落ちて、元どおり見えるようになった」(口語訳新約聖書)ので、サウロはイエスの教えに帰依したのでした。
[解説] ❶パウロは、キリスト教が発展する基礎を築いた、重要な信者の一人。その彼が、イエスの教えに目覚めるという、重大な瞬間のできごとです。実際に目が見えず、実際に鱗のようなものが落ちたと、伝えられています。❷現在では、宗教的な目覚めに限らず、疑念や不安、迷いなどが吹っ切れて、真実が見えるようになる場合に使われます。
出典 故事成語を知る辞典故事成語を知る辞典について 情報