政治

2023.06.28

ワグネルの置き土産、ロシア軍の貴重な司令機を撃墜

Getty Images

ワグネルのどの防空システムがIl-22を撃墜したのかは不明だ。戦闘員らは少なくとも2つの短距離地対空ミサイルシステム(ストレラ-10とパーンツィリ)を携えてロシアに乗り込んだ。最大飛行高度3万9000フィート(約1万1900メートル)のIl-22Mはこれらの地対空ミサイルシステムの射高の上を飛行することができるため、ワグネルの戦闘員はIl-22が飛行場を離陸して上昇しているときに撃った可能性がある。

墜落現場をとらえた写真や映像から、撃墜されたクートはIl-22M11-RT型だったようだ。同機の主な役割は遠く離れたロシア軍の部隊間の無線中継だ。

イリューシン航空機と、数の少ないジェット機のベリエフA-50早期警戒管制機は、ウクライナでの戦争で重要な役割を果たしてきた。

ロシアの軍事ルールでは、局地的な作戦計画ですら上級指揮官が承認する必要がある。同様に、ロシアの戦闘機のパイロットは、ウクライナの防空活動の情報を伝えるために地上のレーダーオペレーターに大きく依存している。

戦闘機と地上側どちらもしっかり機能する長距離通信を必要とする。2人の無線オペレーターが連絡を取り合うには離れすぎている場合、Il-22Mの乗員が仲介役となり、見えないところで信号を受信して中継することができる。

長距離無線中継はロシア軍の作戦の中核をなすもので、中継が途絶えれば前線の作戦に支障をきたす。例を挙げると、ウクライナ北部の前線をパトロールするロシア軍の戦闘機中隊は、ウクライナ軍戦闘機の接近を早期に把握するのにベラルーシに設置された長距離レーダーPodlet-K1に頼っている。

このシステムは常に機能していたわけではないと英王立防衛安全保障研究所の報告書には書かれている。特にウクライナでの戦争の初期にはそうだった。

「戦争が始まって最初の週に、Podlet-K1システムがカバーする地域でウクライナ軍の低空飛行の戦闘機がさまざまな機会にロシア軍の高高度哨戒機を待ち伏せすることに成功したのは、地上ネットワークからの情報を哨戒中の戦闘機に伝達するIl-20Mクート空中司令・無線中継機へのレーダーから偵察情報の伝達が不十分だったことを示していている」と報告書は指摘している。

無線中継の途絶がいかにロシア軍を弱体化させるかを自分たちの目で確かめたウクライナ軍は、ロシア軍のIL-22MとA-50を排除することを優先した。

戦争の初期に1機のIl-22Mにウクライナ軍のミサイルが撃ち込まれたが、なんとか無事に着陸したと報じられた。また、ウクライナ軍のドローン部隊は2月に、ベラルーシの基地にいた少なくとも1機のA-50に爆発物を積んだドローンを着陸させ、機体を軽く損傷させた。

だがロシアは、ワグネルが反乱を起こしてロストフナドヌーからモスクワに向かう道すがら視界に入るすべてのヘリや航空機を砲撃し始めるまで、貴重な中継機を1機も完全に失ってはいなかった。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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2023.06.21

ビジネスをドライバーに他者と連携してチェンジを起こす―若きサステナビリティ・ストラテジストの原点と現在 そして想い描く未来

PwC Japanグループの「サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス(サステナビリティ CoE)」に所属するサステナビリティ・ストラテジストは、高い理念と豊かな個性を有している。そして、仲間と一緒に夢を見て、未来を思い描き、その実現に向けて努力を惜しまない。学生のころから「ビジネスを通じて社会課題を解決したい」という夢を抱えていたふたりはいま、何を想いながら働いているのだろうか。


「2030年、あるいは2050年において、どのような未来が訪れていることを見据えて、あなたは働いているのでしょうか」

彼女は、この問いに対して、はっきりと答えてくれた。

「誰かを搾取したり、自然を犠牲にすることなく、資本や富がよい形で再生産・循環されることで繁栄し、人と自然の幸福、健康、ウェルビーイングが最大化される未来です。それがサステナブルな社会だと思いますし、ビジネスが変革の強力なドライバーになると信じ、働いています」
この言葉を語ったのは哲学者ではなく、政治家でもない。ひとりのサステナビリティ・ストラテジストであるところに未来への強い希望が感じられる。

自分自身のパーパスと所属組織のパーパスが重なり合うとき

市來南海子(以下、市來):私は新卒で民間の事業会社に入り、新興国における事業の企画・推進に携わってきました。大学在籍時からタイの農村地域で、地域住民の生計向上や教育機会の創出を後押しする活動や、イスラエル・パレスチナでのインターンに取り組んできて、将来は途上国ビジネスに関わりたいと考えていたからです。2016年にPwCコンサルティング合同会社に転職してからは経営統合、事業戦略策定、オペレーション変革などの支援業務に3年間ほど従事しました。そして、19年にPwCサステナビリティ合同会社に転籍しています。

「ビジネスで社会課題を解決したい」という想いを学生時代から胸に抱いていた市來は、自身の課題解決力の更なる向上を視野に入れながら、経営コンサルティングの道へと進んだ。それから約3年後、自ら希望し、PwCコンサルティング合同会社からPwCサステナビリティ合同会社への転籍を果たした。

高校時代に途上国の搾取をテーマにした映画を観て、「生まれたところが違うだけで自分らしさや尊厳をもって生きることが難しい人もいる」ことにアンフェアネスを感じ、「そうした仕組みを変えていきたい」と思ったことが、いまの道に歩み出したそもそものきっかけです。社会人になり、一定の経験を積み、あらためて「自分がやりたいことは何か」と考えたときに、「サステナビリティを起点にビジネスをトランスフォーム(変革)することで、社会課題を解決していきたい」と強く思いました。

市來南海子 PwCサステナビリティ合同会社/PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス シニアマネージャー

市來南海子 PwCサステナビリティ合同会社/PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス シニアマネージャー


平野光城(以下、平野):私は、市來のひと月後に新卒でPwCコンサルティング合同会社に入社しています。PwCサステナビリティ合同会社に転籍したタイミングも市來と同じ19年です。大学時代には経済学部で開発経済学を専攻していました。「どうしてアフリカの貧困はなくならないのか」といった研究と共に、ソーシャルビジネスのコンテストに出て「ビジネスを通して社会課題を解決する方法」について考えたり、フィリピンに出かけて現地の農家でフィールド調査を行い、生産性向上と経済発展の道筋を議論したりという学生生活でした。
 
ムハマド・ユヌス氏の活躍(貧困層を対象にした低利・無担保融資を行うグラミン銀行を創設し、06年にノーベル平和賞を受賞)などもあり、平野は「ソーシャルビジネス」というワードの認知が拡がってきた時代の潮流のなかで青春時代を過ごしている。

社会課題解決となると国際機関やNPO、NGOへの就職も考えられますが、1年間のアメリカ留学時に世界の先進事例を具(つぶさ)に研究するにつけ、「ビジネスを通して社会課題を解決すること」のやりがいに惹かれ、確かなスキルと大きなインパクトで社会に貢献するためにコンサルティング業界を目指すようになり、PwCコンサルティング合同会社に入りました。

平野がPwCコンサルティング合同会社に加わった16年以降、世界から「サステナビリティ課題」および「サステナビリティ経営」に向けられる視線は、年を経るごとに大きなものに変わっていった。そうしたなかで、コンサルティング業界において他社に先駆けて15年から長期的視点に立って日本の企業に「サステナビリティ経営」の支援を行ってきたPwCサステナビリティ合同会社は、組織の質的および量的な充実を図っていた。

19年、私はPwCサステナビリティ合同会社への転籍を希望して、自ら手を挙げました。まさに、学生時代から抱えてきた自分自身のパーパスと所属組織のパーパスが、ぴったりと重なり合うときが来たと感じたのです。

平野光城 PwCサステナビリティ合同会社/PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス マネージャー

平野光城 PwCサステナビリティ合同会社/PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス マネージャー

サステナビリティ・ストラテジストの仕事の心髄とは

PwCが世界152カ国に拡がるグローバルネットワークにおいて掲げているパーパスは「Build trust in society and solve important problems(社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する)」だ。この存在意義を胸に抱き、監査およびアシュアランス、コンサルティング、ディールアドバイザリー、税務、法務といった多様な分野で約32,8000人のプロフェッショナルが働いている。そのなかで、PwC Japanグループに属する各法人で働くメンバーは、約10,200人にのぼる。

市來と平野のふたりは、上述したようにPwCコンサルティング合同会社に入社する以前から「ビジネスで社会課題を解決したい」という想いを抱いており、PwCのパーパスとの親和性は、そもそも高かった。PwCサステナビリティ合同会社への転籍により、それがますます高い次元でシンクロするようになったと言えるだろう。

市來と平野がPwCサステナビリティ合同会社に転籍した翌年、PwC Japanグループは「サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス(サステナビリティ CoE)」というチームを組成した。サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の専門家集団であるPwCサステナビリティ合同会社のコンサルタントを中心に、PwC Japanグループのあらゆるケイパビリティを有機的に協働できるよう、各法人を横断し連携するためのハブとなるチームだ。

いま、市來と平野は、そのサステナビリティ CoEで「サステナビリティ・ストラテジスト」として重要な課題と向き合っている。

市來:サステナブルな社会を実現するためには、大きなトランスフォーメーションが必要です。企業は、①これまでの成功の尺度や構造を見直し、②長期的視点で、より幅広い影響に責任を負い、③企業が活動すればするほど、社会や自然にとってポジティブなインパクトが生まれるビジネスモデルやビジネスポートフォリオに転換していくことが求められると考えています。

具体的には、サステナビリティを前提として、企業のパーパスや長期ビジョン、それに基づく経営戦略・事業戦略を見直し、環境や人権などに配慮された「サステナブルなもの」を「サステナブルに生み出し・届ける」ことができるように、サプライチェーンを変えていくこと、そして従来の短期的な財務価値だけでなく、長期的な社会・環境価値の観点も包含した新しい評価や管理の仕組みを構築していくことなどです。

新しいチャレンジであるが故に、参考となるデータ、成功の型や事例もまだ積みあがっていない状況です。先駆者となってこれまでの考え方や、やり方を変えることは勇気のいることであり、また容易ではないと思います。だからこそ、クライアントと対話や議論を重ねながら、共に「新しい未来」を創っていくことが、サステナビリティ・ストラテジストの仕事だと考えています。

また、先陣を切って新しい成功事例を創ることは、他の企業の「やってみたい、やれそう」にもつながり、ひいては業界・社会全体にポジティブな影響を与える意義のあることだと思いますし、やりがいを感じます。

他ファームよりも早い時期から日本の企業に「サステナビリティ経営」の支援を行ってきたPwCサステナビリティ合同会社は、常に前例がないなかで先進事例を築いてきた。つまり、日本における「サステナビリティ経営」の最先端企業と強いパートナーシップで結ばれているのだ。

平野:サステナビリティ CoEには、R&Dの機能もあります。さまざまな最先端ソリューションの開発も手がけているのです。私は19年以来、サステナビリティ経営の大きな推進力になり得るソリューションの開発に携わってきました。

このソリューションは、サステナビリティ経営に取り組むことが環境価値や社会価値を高めるだけでなく、自社の経済価値、企業価値も高めていくことを明らかにするものです。すなわち、どのように儲かるのか、成長につながっていくのかというインパクトパス(サステナビリティ活動が将来の財務に及ぼす影響の経路)を可視化します。

例えば、あるクライアントでは、サステナビリティ経営のロードマップを作成し、対外的に発表するにあたり、可視化されたインパクトパスのなかで明らかになった指標の数々を組み込んでいただきました。

インパクトパスの可視化は、サステナビリティ経営の大きな推進力になるだけでは終わらない。サステナビリティ経営に取り組む優良企業として、あらゆるステークホルダーから認知され、評価され、ブランド価値が上昇していくことにも大きく貢献する。

いま、他のファームも同じような考え方のソリューションを開発していますが、それらはすべて「似て非なるもの」と言えるでしょう。単に過去データを重回帰分析して相関係数を導き出すことに留まらず、未来志向の分析も取り入れて過去データのみでは見えてこないつながりを見つけるというフレームワークで成り立っています。私たちならではのソリューションになっているのです。


いま、未来を想い描き、他者と連携してチェンジを起こすことが問われている

市來:気候変動、資源枯渇、生物多様性の喪失、人権問題等は人類共通の課題であり、1個人や1企業だけで解決できるものではありません。また、経営者だけ、サステナビリティ部門だけで対応できるものでもありません。全社一枚岩となって連携することが必要です。「サイエンスに基づく課題認識」の共有と、よりよい社会・環境を次世代に残したいといった「想い」への共感が、サステナビリティをドライブしていく鍵になるのではないでしょうか。企業の文脈に応じたドライバーを生み出すサポートをすることが、私たちサステナビリティ・ストラテジストに求められている役割だと、私は考えています。

平野
:共感によって経営層を巻き込みながら、経営戦略を変えて、SXを促し、未来を変えていく。そうした意義ある仕事をチームで行うことができるサステナビリティ CoEに対し、私は誇りを感じています。

市來:サステナビリティ CoEは、自由で風通しがよくて自律性が求められるチームです。パートナーからアソシエイトまで、タイトル(役職)に関係なく「よりよくするために発言する、提案する」という雰囲気が濃厚です。役職が離れていても上役との距離の近さを感じていますし、「speak up(=(自分の考えなどを伝えるために)声を上げる)」の文化があります。

そして、志を共にする多様な人材が集合していて、人を蹴落とすとか、自分だけがよければいいという発想の人がいません。自分を大切にし、他の人も尊重したうえで、どのようにコラボレートしたらいいか、チームとしてのインパクトを最大化できるかについて考えられる人が集まっていると感じています。

23年1月、サステナビリティ CoEはチームが掲げるミッションを改定した。それは「SXを通じて、新しい価値をスケールをもって生み出し、ビジネスや社会のChange Makerになる」というものだ。さらには、このミッションにひも付く行動規範として5つの「Be」も掲げ、それぞれの「Be」に「Do」と「Don’t」の項目を設けた。

市來:私は、「仲間のよさや可能性を引き出せる存在」でありたいと常に思っています。5つの「Be」のなかでも特に「Be collective(多様な才能と連帯し、1人ではできない変化を起こそう)」に共感を覚えていますし、「Draw out the opinions of others and aim to create value that cannot be produced by one individual.(他者の意見を引き出し、個人では出せない価値を目指す)」という「Do」は私の従前からの価値観と共鳴するものです。

平野:私は、「Be」のなかでは「Be idealistic(夢を見よう。仲間と一緒に未来を描こう)」
が、サステナビリティ CoEによる価値創造の源泉になる姿勢考えとして欠かせないと考えています。これはサステナビリティ CoEの仲間はもちろん、PwC Japanグループの仲間と一緒にという意味において大事です。

チームのミッションにもある「Change Makerになる」というのは、いまの社会の流れを大きく変える存在になるということです。そのためには、いまの制約にとらわれて小さく考えるのではなく、高い理想をもたなければなりません。目指す未来を実現するために、私たちはこれからも前を向いて、社会をリードしていきたいと思います。

市來:自分を磨くとともに、他者にポジティブな影響を与えたり、他者の力を引き出したりしながら、良き未来を創るために建設的なアクションを続けていける人。そういう人間でありたいですね。

良き未来……。それは2030年なのか、2050年なのか。そこにどのような未来を見据えながら、サステナビリティ・ストラテジストは2023年の今日を頑張れているのだろうか。

市來:これまでの大量生産・大量消費の成長のあり方を続けると、地球はカタストロフィック(壊滅的)な世界になることが予測されています。まずは、何としてもこの大惨事を避けなければなりません。
そのうえで、人と自然の幸福、健康、ウェルビーイングが持続的に最大化される未来の実現を見据えています。誰かを搾取したり、自然を犠牲にしたりすることなく、資本や富がよい形で再生産・循環されることで繁栄するシステム、そして、恐れや怒りではなく「愛」がベースで成り立つ世界に転換していきたいです。ビジネスは、この壮大なトランスフォーメーションを促進する強力なドライバーになると信じ、今日を頑張ることができています。

PwCサステナビリティ合同会社
https://www.pwc.com/jp/ja/about-us/member/sustainability.html


市來南海子◎民間企業の新興国事業企画・推進を経て、PwCコンサルティング合同会社にて経営統合、事業戦略策定、オペレーション変革などの支援業務に従事。2019年より現職。現在は主に、サステナビリティの視点を融合した経営戦略/事業戦略の立案、経営管理の仕組み構築支援、サステナブルサプライチェーンの構築支援、新興国における社会課題解決型ビジネスの立ち上げ支援などを行っている。

平野光城◎新卒でPwCコンサルティング合同会社に入社。主に保険会社向けの業務コンサルティングに従事。2019年より現職。サステナビリティに関する戦略策定、長期ビジョン・マテリアリティ検討、途上国・新興国ビジネス展開に係る支援などに従事。現在は主に、企業のサステナビリティ活動の財務へのインパクト評価について、方法論の策定・検討支援を担っている。

Promoted by PwCサステナビリティ合同会社 / text by Kiyoto Kuniryo photographs by Shuji Goto edit by Akio Takashiro

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