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この作品「羽衣の天女/バニーガールの女王様、再び」は「ぎゆしの」「鬼滅の刃(二次創作)」等のタグがつけられた作品です。
羽衣の天女/バニーガールの女王様、再び/よしのの小説

羽衣の天女/バニーガールの女王様、再び

3,698文字7分

現代鬼殺隊ぎゆしの、SS2本まとめ。
書きたいところだけのいいとこどりです…😂
お付き合い頂きありがとうございます!

2022年10月17日 10:44
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羽衣の天女


 気付いてしまえば、堪らなくなった。
 控えめにひとつだけボタンを開けた白いシャツから覗く喉元とか、黒いジャケットの袖口からちらりと見えた細い手首の突起だとか。
 笑ってしまうほど些細で、多分そんなところに欲情されたなどと、当の胡蝶は思ってもいないだろう。
 ひらり、とビルから舞い降りると、前を開けたままのスーツのジャケットが翻り、まるで羽衣のようだった。
「冨岡さん、そちらは終わりましたか」
「ああ」
 言葉少なに応えて、冨岡は胡蝶から目を逸らした。時々ある潜入任務の時のような、扇情的な衣装でも何でもない。ただのパンツスーツだ。ビジネス街を闊歩する女性たちが、ごく普通に身に着けるものと同じような。ただ、その細腰をまるで強調するように、細い剣帯が巻き付き、そこに白い鞘に納まった日輪刀が提げられているのだけれど。
 夜明けのビジネス街は、まだシンと静まり返って人気がない。東の方から白みつつある空を見上げて、胡蝶はあくびを漏らした。
「雑魚ばかりとは言え、あの数はさすがに疲れましたね。引き上げましょうか」
 冨岡は黙って頷いた。下手に声を出せば、何を口走るか分からないと警戒したのだ。どうしてこれほど昂ったのか、己が分からないほどに腹の底で欲が渦巻く。胡蝶は気付いていないだろう。
 白いシャツから覗く喉、華奢な手首の突起、ローヒールパンプスから見える薄い足の甲。当たり前に出ている、露出とも言えないほどの肌に、冨岡が、劣情を抱いたなど。
 知られるのも無性に恥ずかしいから、冨岡は黙ったまま踵を返した。胡蝶は冨岡の無口には慣れきっているから、気にも留めず、好きにあれこれ話しながらついてくる。
 当然のように冨岡の車の助手席に乗り込んで、当然のように胡蝶の家まで、ただ送る。ふたりはただの同僚だ。そこに肉体を介在する関係があって、言いも言われもしない、何かがあるとふたりともに承知しているとしても。今日はふたりとも、誘いも誘われしなかったから、これで終いだ。
 胡蝶の住む、マンションの前で別れる。おやすみなさいと日が昇り始めた空を背に、胡蝶が微笑む。朝の風が吹いて、そのスーツの裾をばさりと揺らした。
 夜空を舞う胡蝶は美しかった。何の変哲もないただのスーツのジャケットが、ひらりひらりと翻り、まるで羽衣を纏った天女に見えて、その姿に劣情を抱いた己が許せなかった。
 胡蝶の部屋は五階だ。任務の後に送って行った時は、マンションの南側でいつも別れる。胡蝶は部屋に戻ると、いつもベランダから顔を出す。ちゃんと帰りましたよ、戸締りもしたから、あなたも帰ってねと伝えるように。
 冨岡がそれを待っていると、胡蝶が姿を見せた。桟にもたれかかるようにして、胡蝶は手を振った。その指が、奇妙に動く。
 指文字だと察して、冨岡は目を凝らした。
 ——おやすみなさい。あなたの夢を見るわ。
 ただの同僚だ。肉体を介在する関係があって、互いに言いも言われもしない、何かがあるとふたりともに承知しているとしても。
 時々、互いにその一線を音にしないまま、踏み越える。
 冨岡はマンションの駐車スペースに車を突っ込んだ。合鍵を持つ関係ではないから、インターホンを鳴らすしかない。胡蝶は開けてくれるだろうか。
 彼女は、きっと開ける。そうして「何ですか、堪え性がないですね」と揶揄うに違いない。
 まるで天女のように、清らかな微笑みで。
 それを確信して、冨岡はマンションのエントランスのインターホンを鳴らした。

コメント

  • 月白
    2022年10月18日
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  • レナ
    2022年10月17日
    返信を見る
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