default

pixivは2023年6月13日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴

この作品「夜明けの温度/さらさらすべる」は「ぎゆしの」「鬼滅の刃(二次創作)」等のタグがつけられた作品です。
夜明けの温度/さらさらすべる/よしのの小説

夜明けの温度/さらさらすべる

4,153文字8分

「夏のワードパレット」をお借りしてTwitterに投稿したSS2本まとめ。
今回はコスプレしていません(笑)

いつもお読みいただきありがとうございます。ブクマ、コメント等嬉しいです😆

2022年10月26日 17:24
1
white
horizontal

 枕元で唐突に鳴り出したスマートフォンに、冨岡は驚いて飛び起きた。夜明けの電話など、良い知らせであるはずがない。緊急連絡か何か、それとも誰かの訃報か。
『もしもーし、起きてます?』
 耳に押し当てたスマートフォンから聞こえた声に、冨岡は脱力してばたりとベッドに倒れ込んだ。
「……胡蝶、何の用だ、朝っぱらから」
 胡蝶も、冨岡と同じく非番だったはずである。昨日の朝、そういう話をしたから。
『眠れないので、子守唄でも歌ってもらおうかと思って』
「……切るぞ」
 下らない。同僚が唐突に妙なことを言い出すのには慣れてはいたが、久しぶりに夜に眠れたのに、早朝から叩き起こされるとは!
『あらひどい。実はね、緊急呼び出しで出動する羽目になりまして』
「何かあったのか」
『血鬼術の解毒が上手くいかないって呼ばれました。仕方ないですよねぇ。今、ラボから抜け出してきたところなんです。仮眠室ではどうにも寝られなくて』
「そうか」
 夏の夜明けは進みが早い。白みつつあることを、遮光カーテンから漏れる光に感じつつ、冨岡はあくびをした。
『ねぇ、冨岡さん』
「……胡蝶、俺は眠いんだが」
『ねぇ、……お邪魔してもいいですか』
「何で来る気だ、始発も動いてないぞ」
『歩いて行きます。ご存じでしょう、私たちには大した距離じゃありませんよ』
「こんな時間に女がひとりでウロウロするな」
『この生業の私に、まぁよくもそんなことを』
 クスクスと笑う声に、冨岡は苦った。
『だめですか』
「お前な……」
『なんてね。冗談ですよ。ごめんなさい、起こして』
 電話の向こうで胡蝶がくしゃみをした。冨岡は首を傾げて、ベッドから立ち上がった。
「胡蝶」
『はぁい。何です、子守唄を歌ってくれる気になりました?』
「知らないものは歌いようがない」
 狭い単身者用アパートは、寝室から玄関ドアまではわずかな距離だ。冨岡は音を立てないようにして、ドアチェーンを外し、鍵を回して、ドアを開けた。
 黒い制服を着たままの胡蝶が、ドアの脇にしゃがみ込んで、驚いたような顔をして見上げている。
「……もう来ているならそう言え」
「……だって、あなた、眠そうだったから」
「当たり前だ、何時だと思ってる」
 細い腕を引っ張ると、胡蝶はヨタヨタと立ち上がった。白い手に切り傷、目の下には隈があった。
「さっさと入れ。それからまず寝ろ」
 遠慮がちに上がってきた胡蝶に、適当に引っ張り出したTシャツとスウェットを押し付けて、冨岡はベッドに潜り込んだ。眠い。しかし一向に胡蝶が入ってこないから、おやと思ってもう一度起き出すと、胡蝶はリビングの狭いソファで横になろうとしていた。
「何してる」
「あなたが寝ろって言ったんでしょう」
「何でそこだ、ベッドで寝ろ。疲れが取れない」
「でも」
 眠気と苛立ちで、冨岡は舌打ちした。冨岡には図々しく飄々としているくせに、時々ひどく距離を置く胡蝶が忌々しい。
 その軽いからだを抱き上げて、勝手にベッドに放り込む。うしろから抱きしめるようにして、自分もベッドに入る。
「とみおかさん」
「寝ろ」
 何があったのかは、おおよそ察しがつく。どうせ胡蝶は話さない。その距離を胡蝶は許さない。「何か」があった夜明けに、冨岡のところに転がり込んでは来るくせに。
 胡蝶のからだは、夏なのに、少し冷たかった。夜明けの温度をそれに感じながら、冨岡は胡蝶とふたり、眠りに落ちた。

夜明けの温度(眠れない・抜け出して・なんてね)

コメント

  • 月白
    2022年10月28日
    返信を見る
  • レナ
    2022年10月27日
    返信を見る
  • ポッポ

    最近更新が早くて嬉しい限りです 寒い季節になりますのでお体にはご自愛ください

    2022年10月27日
    返信を見る
センシティブな内容が含まれている可能性のある作品は一覧に表示されません
© pixiv
人気のイラストタグ
人気の小説タグ