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この作品「甘い、苦い、甘い/肉を穿つ」は「ぎゆしの」「鬼滅の刃(二次創作)」等のタグがつけられた作品です。
甘い、苦い、甘い/肉を穿つ/よしのの小説

甘い、苦い、甘い/肉を穿つ

4,423文字9分

コスプレしたりしなかったりするいいとこどり特にストーリーのない現代鬼殺隊SSまとめ。
バレンタインネタとピアスの話です。コスプレはしていません!笑

いつもブクマやコメントありがとうございます〜☺️

2023年2月10日 12:13
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甘い、苦い、甘い


「おーくたびれてんなぁ!」
 同僚の声に、何だと思ってパソコンから顔を上げると、特殊警護部の扉を開けて、小柄な女が入ってきたところだった。タイトスカートにハイヒール、それから白衣。今日はラボに詰めていたのだろう。胡蝶は、藤毒と、血鬼術の解毒剤の開発の第一人者でもある。
 宇髄の声の通りに、胡蝶はくたびれた様子だった。「うるさいですよ、宇髄さん」と言う笑顔はいつも通りだが、髪がいささか乱れていた。
 カツカツとヒールを鳴らしながらやってきた胡蝶は、断りもなく冨岡のデスクの引き出しをガラリと開けた。
「おい」
「何してるんですか、冨岡さん」
「報告書だ。お前が建物を半壊させた昨日の任務の」
 私忙しいのでよろしくお願いしますね、と笑顔で言い放った胡蝶の尻拭いである。彼女が人三倍くらいに忙しいのは確かだが。珍しく嫌味を言った冨岡に、胡蝶はおやおや、と呟いて、引き出しからチョコチップクッキーを取り出して勝手に齧っている。
「チョコはないんですか、チョコは。頭が疲れました」
「そこになければない」
「気が利きませんねぇ」
 ひとのデスクの菓子を無断で食べておきながら、勝手なものである。もっとも、冨岡は甘いものはほとんど食べないのだが。
「仕方ないから、補充しておいて差し上げます。なんて親切なんでしょうねぇ!」
 胡蝶はそんなことを言いながら、白衣の左ポケットから何かを掴み出して、引き出しに、ひとつ、ふたつ、と歌うように言いながら入れている。どうせお前が食べるんだろうが、と思いながら、冨岡はエンターキーを叩いた。冨岡の間食など、菓子程度で足りるはずがない。胡蝶がやかましいから適当に買って、放り込んであるだけの菓子だ。
 持っているなら、ひとに文句を言う前に、それを自分で食べろ。訳が分からない。
「何だお前ら。職場でイチャイチャしてんじゃねぇぞー」
「そんないいものじゃないですよ、腐れ縁です」
 腐らせているのは、八割がたお前だが、ということもやはり言わずに、冨岡はむっつりと黙ったまま、報告書を仕上げにかかった。疲れる。同僚たちに、冨岡と胡蝶が恋人関係と思われているのは知っているが、実は付き合ってはいない、ということは気付かれていない。歪だが、胡蝶がそれを望んでいるというだけで、唯々諾々と付き合っている自分も大概だな、と冨岡は考えた。
 胡蝶は、ふらりと立ち上がると、部屋を見回した。
「甘露寺さんも不在だし、つまらないですね。仕方ないから宇髄さんにあげます」
「あん? 何だぁ?」
 胡蝶は宇髄のデスクに近付くと、今度は右ポケットからチョコレートを四つ、取り出して置いた。
「うん?」
「義理チョコです」
「いっ……ろけねぇぇ! アルファベットチョコかよ、お前」
 宇髄はゲラゲラと笑っている。
「お前、まさか冨岡にもそれか?」
「冨岡さんには特別に八個です。嬉しい?」
 冨岡は無表情のまま、パソコンの画面を見たまま答えた。
「何の裏があるんだと考えている」
「まぁ、失礼な。……あーもうそんなことどうでもいいです、私、疲れてるんです。寝てきます」
 宇髄はまだ笑っている。ド派手に面白ぇな、とでも思っているのかもしれない。
「おーおー、お疲れさん。もう家帰って寝ろよ」
「寝てから帰ります」
 胡蝶はカツカツとヒールを鳴らして立ち去った。
「バレンタインにアルファベットチョコってなぁ。あいつも大概拗らせてんな、冨岡よ」
「知るか」
 冨岡は、思わず苦虫を噛み潰したような顔になった。
 デスクの上のチョコを眺めやった宇髄は、喉をくつくつと鳴らした。あいつ、わざわざ「GIRI」って置いて行きやがったぞ、と言いながら。
「お前は八個か。I LOVE YOUでも書いてったか?」
 冨岡はため息をついて、開けっ放しの引き出しを見やった。横から覗いた宇髄が、文字を読み取って吹き出した。
「こ、拗らせてやがんなマジで!!」
「…………」
 冨岡はこの上ない勢いでエンターキーをパァン! と叩いた。それからさらにガチャガチャとキーボードを叩いて、送信。以上、報告完了。
「帰る」
「おーよ」
 宇髄はまだ笑っている。冨岡はジャケットを羽織って荷物を持つと、特殊警護部を出てずかずかと廊下を進んだ。機嫌の悪い顔の幹部に、他の社員たちがそーっと避けているが、知ったことではない。
 人気のない専用仮眠室のスペースに着くと、ちょうど胡蝶がドアを開けているところだった。
「胡蝶」
 背後からドアノブごとその手を掴むと、あら、と胡蝶は平然と言って、上目遣いに冨岡を見上げた。
「何だあれは」
「何のことです?」
 にこりと微笑む顔は、いつも通り油断ならない。
 どういうつもりだ、などと訊くも無駄だ。どうせ胡蝶は素直に言わない。安いチョコレートで書いた「I HATE YOU」の真意など。
 面白くない。振り回すつもりであんなことを仕掛けてくる胡蝶も、まんまと振り回されて、面白くないと思う自分も。
 冨岡は舌打ちをすると、「荷物を持って来い」と不機嫌に言った。
「はい?」
「送る。……か、俺の家か、どちらがいい?」
「それ、寝かせてくださるんでしょうね?」
「お前次第だ」
「あらあら、そんな大事なことの決定権、私に握らせちゃっていいんですか」
 クスクスと笑う胡蝶は憎たらしく妖艶だが、冨岡は構わなかった。
 どうせ胡蝶の「その気」は冨岡が左右する。分かりきった駆け引きにうんざりしながら、しかしこれが胡蝶だと嫌と言うほど知っている。甘くて、苦くて、毒がある、その面倒な女を欲しがる男の愚かさも。
 黙って待っていると、胡蝶は向き直って冨岡の襟元を掴んで引っ張った。それからルージュの落ちた唇を、そっと冨岡の耳に寄せた。胡蝶の汗と、化粧と、整髪料のにおいがした。それらがないまぜになった、胡蝶の肌の匂い。
「あなたの家がいい」
 どうやらその気になったらしい。いや、その気にさせられたのは冨岡の方かもしれないが。
 どちらがどうとは最早判然とせず、ただ得られた結果に満足して、冨岡は、分かった、と仏頂面のまま答えた。胡蝶はクスクスと、妖艶に、可憐に、笑うばかりである。

コメント

  • 月白
    2月12日
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  • 熊犬
    2月11日
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  • レナ

    なんだかんだいいつつラフラブな二人が羨ましい

    2月10日
    返信を見る
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