▲ニックから送られてきた広報資料ファイルのカバー
▲チラシ – SAYAKAホール開館記念25周年記念公演 – ブラック・ダイク・バンド(2019年10月27日、大阪狭山市)
▲同 – プログラム表紙
▲同 – 演奏曲目
2019年(令和元年)10月27日(日)、筆者は、快調に走る南海電鉄高野線急行の心地よい揺れに身を委ね、一路、5度目の来日を果たしたブラック・ダイク・バンド(Black Dyke Band)のツアー初日のコンサートが行なわれる大阪狭山市文化会館SAYAKAホールを目指していた!
これは、《第72話 史上最低のコンサート鑑賞記》でお話した2016年のツアーにつづき、翌年の2017年ツアーでも見事にスルー(つまり2年連続スルー!! もう、笑うしかない)された関西では、実に“29年ぶり”となるブラック・ダイクのコンサートであり、1989年の「チャイルズ・ブラザーズ・ツアー」(参照:《第14話 チャイルズ・ブラザーズの衝撃》)以来のつきあいとなる音楽監督のニコラス・チャイルズ(Nicholas Childs、親称:ニック)や、2013年に大阪でソロ・リサイタルを成功させたプリンシパル・コルネット奏者リチャード・マーシャル(Richard Marshall)に、『なぜ、いつも大阪は素通りになるんだ!』と顔を合わせるたびに苦情を申し立てていた筆者としては、行きがかり上、万難を排し、何としても顔を出さねばならないものだった。
とは言っても、もうすぐそこに山がせまる大阪府南部の大阪狭山市は、筆者が暮らす大阪市内からは意外と遠い。そんなロケーションから、ホールのサービスエリア外とみなされていたのか、筆者がよく訪れる大阪市内のいくつかの楽器店でも公演のチラシはついぞ見かけなかった。かつてニックやリチャードのリサイタルを開いた三木楽器でも、“来日それ自体”を知らなかったので、ひょっとすると、この日のコンサートを見逃してしまった大阪ピープルは、意外と多かったかも知れない。
それはさておき、日本の多目的ホールでブラスバンドのバランスのいい音を愉しむには、座席のポジショニングが結構重要なポイントとなる。幸い、会場となっていたSAYAKAホールの大ホールは、大阪市音楽団のレコーディング等で経験していたので、ホール音響の性格もよくわかっていた。そこで、チケットは、ネット購入ではなく、直接ホールに出向いて座席表を見ながら購入した。
都合、この日のコンサートのために、南海電車で二往復したことになる。
まあ、それほどにまでにこだわった上で、彼らのナマが聴きたかったわけだ!
こうして迎えた当日。ホールに到着すると、まず、よく外来バンドのコンサートでご一緒する全日本学生吹奏楽連盟理事長の溝邊典紀さんから声がかかった。ついで、その輪に加わったのは、ブリーズ・ブラス・バンド常任指揮者の上村和義さん夫妻で、それに、かつてリチャード・マーシャルとのジョイントを成功させた泉大津市吹奏楽団(大阪府)の団長、岩田雅之さん夫妻も加わるといった具合に、どんどん輪が拡がっていく。
これだから、ブラスバンドのコンサートは愉しい!
ホールに入ってからも、かつてブリーズが国内ツアーをしたときに2度もコンサートを設けていただいた長野県松本市のBritish Brass DOLCE(ブリティッシュ・ブラス・ドルチェ)代表の荒木信明さんや元ブリーズで今は大阪コンサートブラスでテナーホーンを吹く杉浦青也さん夫妻らが加わり、もうまるで同窓会のノリだ。
今日が何の日だったのか、忘れてしまいそうだ!
イギリスでは、“ブラスバンドをやっているものは皆ファミリーだ!”という言葉をよく聞く。日本にもそんな空気が生まれてきたのかも知れない。
プログラムにも、大阪ハーモニーブラス、インモータル・ブラス・エターナリー、大阪コンサートブラスのコンサートのチラシが挿まれ、DOLCEの荒木さんも、2020年3月に開かれる“30周年記念コンサート”のチラシを知人に渡している。
ホールの人には申し訳ないが、もう完全に社交場だ!
1990年にブリーズ・ブラス・バンドが関西で一人ぼっちで立ち上がった頃とは明らかに違う空気が流れていた!
さて、そんな盛り上がった空気の中、ステージに登場したブラック・ダイクは、やはりブラック・ダイクだった!
彼らは、前日の10月26日に来日したばかりで、いきなり母国では真夜中から早朝にかけての時間帯のマチネのコンサートはかなりキツいはずだ。旅の疲れも時差の影響もあっただろう。さすがに冒頭は、ホールの響きを確かめるようなノリで、珍しく少しアンバランスなところも散見されたが、そこはブラック・ダイク!すぐにホールの個性を捉えてブリリアントなサウンドが鳴り出し、プログラムの進行とともに、しり上がりのパフォーマンスとなっていく。
『すごい音ですねー!?』とは、ピーター・グレイアム(Peter Graham)の注目作、交響詩『ダイナスティ(Dynasty)』のフィナーレのコードが鳴り響いた後で、溝邊さんが思わずもらした一言だ!
また、プリンシパルのリチャードはもちろん、フリューゲルホーンのゾーイ・ロヴァット=クーパー(Zoe Lovatt-Cooper)、テナーホーンのシオバン・ベイツ(Siobhan Bates)、バリトンのカトリーヌ・マーゼラ(Katrina Marzella)、トロンボーンのブレット・ベーカー(Brett Baker)、ユーフォニアムのダニエル・トーマス(Daniel Thomas)、Ebバスのギャビン・セイナー(Gavin Saynor)という、ブラック・ダイクが誇る個性豊かなソロイストたちも聴衆を魅了した。
アンコール(この日は、グレイアムの『ゲールフォース』)の後、ホワイエでは、右から左にブレット・ベーカー、リチャード・マーシャル、シオバン・ベイツ、ギャビン・セイナー、ダニエル・トーマス、そして、指揮者のニックの順に並んで座り、サイン大会の開始!
もちろん列に並んで顔を見せると、リチャードもニックも、顔をくちゃくちゃにして喜んでくれた。
ニックが『いつ以来だ?』と言うので、『何年にもなるかな。』と曖昧に答えると、大袈裟なジェスチャーで“それはダメだ”という。
ところが、“2019年ツアー記念”のCDブックレットにサインを入れてもらったとき、いつものようにニックに『日付も!』とリクエストしたところで、事件発生!!
彼は、何を勘違いしたのか(たぶん時差の疲れだろう)、間違えて“10/26(26-10-2019)”と書いてしまい、アレ?そこにいたみんなで大笑いとなった!
『日本到着日のこの日付は、ある意味レアものかも知れませんね!』と、隣りにいた顔なじみのツアーコンダクターに言われて、“それもありか”と思って、あとの人に場を譲ったが、そのとき、“ツアーCD”の売り場に顔なじみのアリスン(Alison Childs。ニックの奥さんで、テナーホーン奏者)が立っているのを発見!
ブックレットを見せて、『ニックが日付を間違えたんだ。』と言うと、『まあ、なんてことでしょう。ラインを引いて消しましょうか?』と返してきたので、『いやいや、その上のスペースに“あなたのサイン”と“正しい今日の日付”を書いてくれれば、それでOK!』とリクエストして、笑顔で一件落着!!
この日につづき、ブラック・ダイクは、10/29(火) 札幌文化芸術劇場hitaru(19:00)、10/31(木) 東京芸術劇場コンサートホール(19:00)、11/1(金) 四日市市文化会館第1ホール(19:00)、11/2(土) すみだトリフォニーホール(15:00)の4公演。それに加えて、11/1の朝9時から、J-WAVE(81.3 FM)の“MUSICLICK!”にナマ出演もあるというから、口アングリの弾丸ツアーとはこのことだ!
日本人の体力なら、まず無理かな?
あっ、忘れていたゾ!
この日会った人の中に、“5公演をすべて聴く”という猛者がいたことを!!
(どうか“離婚案件”にまで発展しないことを心よりお祈り申し上げます…。)
イギリス発祥のラグビーではないが、彼らの凄さとチームワーク、そして音楽への献身をあらためて感じた一日だった!!
▲ CD – Tour of Japan 2019(自主制作、WOS 148)
▲同 – 演奏者リスト
▲同 – サイン用の頁
▲同 – インレーカード
▲チラシ – ブラック・ダイク・バンド札幌公演(2019年10月29日)
▲チラシ – ブラック・ダイク・バンド東京公演(2019年10月31日、11月2日)
▲チラシ – ブラック・ダイク・バンド四日市公演(2019年11月1日)
「■樋口幸弘のウィンド交友録~バック・ステージのひとり言 第103話 ブラック・ダイク弾丸ツアー2019」への1件のフィードバック