岸田首相襲撃の根源に「アベ政治」への激しい怨嗟…見えてきた木村隆二容疑者の犯行動機
何が凶行に駆り立てたのか──。岸田首相襲撃犯の木村隆二容疑者(24)が黙秘を続ける中、少しずつ犯行に至った背景が浮かび上がってきた。動機解明の手掛かりとなりそうなのが、「民主主義への挑戦」を続ける「アベ政治」への憤りだ。
■「民主主義への挑戦」に憤り
木村容疑者は昨年6月、参院選(同年7月実施)に立候補できないのは憲法違反だとして、国に損害賠償を求めて神戸地裁に提訴。その訴訟で安倍元首相の国葬実施や、安倍元首相と統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との関係を批判していたことが判明した。
木村容疑者は昨年10月、地裁に提出した準備書面で、「岸田内閣は故安倍晋三の国葬を世論の反対多数の中、閣議決定のみで強行した」と指摘。「民主主義への挑戦は許されるべきではない」と強い言葉で非難していた。
安倍国葬を「暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜く決意を示す場」と位置づけていた岸田首相が、民主的プロセスをないがしろにして国葬を断行したことは批判されて当然である。だからといって、爆弾を自作して襲撃していい理由には決してならないが、木村容疑者が「民主主義への挑戦」に怒りを覚えていたであろうことは想像に難くない。
「国葬は世論の反対が6割以上に上る中、強行されました。木村容疑者も6割を超えた人々のひとりです。彼のものとみられるツイッターを読む限り、統一教会などの宗教組織票を含む『地盤』と『看板』『カバン』を持った世襲への怨嗟や、そうした『持てる者』が階級支配を再生産することへのイラ立ちが透けて見えます。一方で、自民党保守派のような排外主義的な主張も散見される。もともとは自民党支持者ながらも、投票などの正当な手続きでは格差や階級支配をどうにもできない、と絶望した末の犯行ではなかったのか」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)