私は、球場で鳴らされる「音」すべてを否定しているわけではない。
例えば球場側が鳴らす選手の「出囃子」は、選手自身が選んだり、キャラに合わせてチーム側が選択したりしたものだが、それは全く気にならない。
今年、オリックスの紅林がアニメ「アラレちゃん」のテーマソングにして話題となった。彼自身の選択ではなかったようだが、そのギャップが面白い。「暴れん坊将軍」で出る中日の石川昂弥や、「星雲」などの西武の川越誠司、かつては「水戸黄門」で出たナイジャー・モーガンなど、今はやりの音楽でなく、不思議な選曲をする選手は、どんなキャラなのだろうと思ってしまう。

NPBの公式戦で試合前に「野球場に行こう」が流れるのは、本当に素晴らしい。スクリーンには後楽園球場、大阪球場など昔の球場の写真が映る。私は最近「100マイルのストレート、星に届くホームラン」でジーンとくる。大谷翔平は、これを一人でやってしまっているじゃないか!

また、多くの球場ではイニング間にCLAP(手拍子)を促す音楽を流す。2分15秒と言うわずかな時間の間に外野でリレー競走をしたり、チアガールが踊ったりするのも良いと思う。
ラッキーセブンで両球団の球団歌などが流れるのは、ずっと昔からあったが、これもプロ野球らしくって良い。
MLBでは「take me out to the ball game」が流れる。フェンウェイパークではニール・ダイヤモンドの「Sweet Caroline」が流れる。これもいい。この「キャロライン」とは、ケネディ大統領の娘のキャロライン・ケネディのこと、つまりオバマ政権時代のケネディ駐日大使のことだ。テレビでケネディ大使が出てくるたびに、私の脳裏には「Sweet Caroline」が流れていたものだ。
試合の後花火を打ち上げたり、みんなで大喜ぶするのも、自然な流れとしてよいと思う。

昔、台湾プロ野球(CPBL)を見たときにイニング間に「彼女にプロポーズ」をすると言う企画があったが、男がもじもじして中々告白できなかったために、審判がプレイボールの声が掛けられなくて試合が遅延したことがある。今年の日本ハムも似たような企画をしているが、インターバルで収まり切れないアトラクションはダメだ。

広島を除くすべての球団にはチアガールがいる。「きつねダンス」がヒットしたが、ヤクルトのYOASOBI「ツバメ」のダンスも良いと思う。あの歌詞は本当に素晴らしい。
各球団が工夫を凝らすのは面白い。今ではチアガールになる競争率は非常に高い。私はDeNAの神奈川県内での「野球教室」の取材をしたが、幼稚園ではチアガールのダンス教室もやっていた。これ、非常に人気だそうな。

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プロ野球は「プロ」なのだから、試合の演出にお金をかけるのは、当然のことだと思う。9回、3時間の試合をずっと凝視している人は少数派だろうから、集中力が途切れたときに音楽が流れたりアトラクションが行われるのは、適切なサービスと言えよう。
プロスポーツは「マーケティング」によって運営されている。こうしたアトラクションは「マーケティングの粋」と言ってもよい。

でも野球の試合が始まったら、グラウンドの選手の動きに注目したいと思うのは当然のことではないのか。一球一球の勝負を呼吸を忘れて見入るような「緊張感」が、良いのではないのか?その時に大音声で「ホームラン、ホームランなーんとか」って、大騒ぎする必要がどこにあるのか?
外野のポール横でものすごい人数が発する大音声をまともに受けるのは、バックネット裏だ。私はそれもあってネット裏にはいかない。「応援が嫌ならネット裏に行けよ」と言う人は、そのことを知らない。

試合の最中に大騒ぎする応援団各位は「野球の試合なんて面白くない、だから俺たちが盛り上げてやっているんだ」と思っているのではないかと思う。それを私は思い上がりと言うのだ。
イニング間にどれだけ大声を上げたって、お遊戯したって別に構わないのだ。応援団は本格的な音楽を演奏する腕前はないから、それで人々を満足させることはできないのだろうが。
試合が始まったら、選手のプレーを固唾をのんでみているのが「本当のファン」ではないのか、そう思っている。

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あたかも自分たちが主役であるかのような振る舞いは、滑稽でしかない。


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