ギャンブル色薄めてスポーツを前面に 競輪に巨額投じた社長のねらい

重政紀元
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 新しい千葉競輪場となる「TIPSTAR(ティップスター) DOME(ドーム) CHIBA」(千葉市中央区)が2日、オープンした。コロナ禍で無観客でのスタートとなったが、競輪場としては全国で初めて国際規格のバンクを導入。会場での券売をやめるなどスポーツ性を高め、新規ファンの開拓を狙う。(重政紀元)

 オープンに合わせて導入したのは新種目「250競走」。国内初となる国際規格に準拠した1周250メートルの木製バンクを使う。「PIST6 チャンピオンシップ」の名称で、今後土日を中心に、年間100日程度の開催を予定する。

千葉市長「家族連れで楽しめる」

 ギャンブルを前面に打ち出す従来の競輪とは差別化。会場に券売機は置かず、車券はすべてオンライン投票サービスで行う。

 選手の入場やインタビューは、レーザー光線や炎の演出で盛り上げるなどファッション性を高める演出も導入した。コロナ禍で約2千席の座席は空けたままの開催となったが、今後は飲食を楽しみながら観戦できる環境を目指す。

 ドームはJR千葉駅から徒歩圏内の千葉公園前にある。開会式典であいさつした千葉市の神谷俊一市長は「これまでの競輪場にはない、家族連れで訪れ楽しむことができるようになる」とまちづくり面での期待も寄せた。

 建設費を含め100億円超の投資をしたJPFの関連会社で、市から運営委託を受けるPIST6(千葉市)の鈴木千樹社長は「バスケットのNBA、野球のメジャーリーグのように、自転車トラックのナンバーワンを目指したい」と述べた。(重政紀元)

JPF・渡辺社長に聞く

 一時は運営する千葉市が廃止を表明した千葉競輪場。なぜ一企業のJPFは単独で100億円超の投資をし、再生させたのか――。弁護士で同社社長の渡辺俊太郎氏(54)に聞いた。(重政紀元)

 JPFは幻に終わった戦前の東京五輪に向けて祖父が開発した高感度カメラの会社が前身。戦後その技術を生かして競輪の判定業務を始めました。現在は千葉を含め、全国6競輪場の運営を委託されています。

 父の急逝で2007年に継ぐことになりました。その時から、競輪をスポーツとして普及させ、もっと市民が関われる施設にしたいと思っていました。ただ、個人では理解してくれる人はいても、組織としては一つもなかった。では「自分がやるしかない」と。

 幸い会社は無借金状態だった。資金は不動産売却で30億円、残りは金融機関からの借り入れです。ビルを持っているより、自分しかできないことをやるという使命のようなもののためですね。といっても勝算は持っています。

 千葉は全国43ある競輪場の中で5指に入る好立地です。競輪自体、中央競馬、ボートレースに比べると売り上げはまだまだ伸ばせる余地があるのは分かっています。分かっていても、最初にかけるコストを誰も負ってこなかった。

 売り上げの目標は最低限でも年間120億円。もし赤字になっても市へ負担を求めることはできません。

 最も大切なのは、競輪と自転車競技の融合です。競輪は公営競技の中で唯一の五輪競技。東京五輪でケイリンに出場した競輪選手は結果を残せなかったが、参加した3人は実力的にはトップレベルでした。

 五輪は1周250メートルの木製バンクなのに、日本の競輪場はコンクリート製で距離も333~500メートル。五輪出場選手は競輪の出場機会を削って練習せざるを得なかった。国際規格と同じにすれば、競輪を続けながら国際大会も目指せる。

 今回、会場に券売機を置かなかったのもスポーツ性を高めるためです。来場者の一部には、選手をおとしめるヤジを飛ばし、リスペクトを欠く人がいる。そんな人には会場に来てほしくない。あくまでもスポーツを見に来る場であり、それにベッティング(賭け)もできるというようにしたい。

 オンライン投票サービス「TIPSTAR(ティップスター)」を提供するIT大手のミクシィも賛同してくれました。9月末からはダンス・ボーカルグループ「EXILE」メンバーによるテレビCMを全国展開で大量に流していただいています。若い世代への理解につながると思っています。

 業界内で反発する声はあります。選手も「参加して大丈夫か」と心配していることも聞いています。しかし、運営者である他の自治体は「迷惑施設である競輪場を本当に変えられるのか」と強い関心を持っています。

 会場となるドームでは今後、中高生対象の自転車競技アカデミーを開き、隣接する千葉公園や幕張地区などでマウンテンバイクや障害者自転車の振興活動もしていく予定です。そのための環境整備もしたい。

 祖父が市内の病院の院長であった縁で市内の病院で生まれました。親戚が千葉に多く、自分自身も小学校まで千葉だったことも、思い入れにつながっています。(談)

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