フジテレビジュツの仕事

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2022年10~12月 毎週木曜日 22:00~22:54

  • 美術プロデュース
    三竹 寛典
  • アートコーディネーター
    大野 恭一郎/福井 大
  • 大道具
    永井 武
  • 大道具操作
    中本 晃幸
  • 建具
    岸 久雄
  • 装飾
    石坂 日和
  • 持道具
    倉田 めぐみ
  • 衣裳
    渋谷 清人
  • ヘアメイク
    高 美希
  • 電飾
    寺田 豊
  • フードコーディネーター
    はら ゆうこ

ビジュツのヒミツ①

ヒロインの部屋はリノベーションと「ロケマッチ」で

切なくも温かいラブストーリー。
主人公たちの揺れ動く心情に寄り添うために、
美術セットも“等身大”の空間を意識しました。

ヒロインの部屋は、古びた廊下の奥の方に。
築古アパートをリノベーションしたというイメージで
デザインしました。

生活感がありつつも、何となくオシャレにまとまっています。

家具や照明はリサイクルショップなどで手に入れたのでしょうか、揃っていなくても、それぞれに住人のセンスがにじみます。

“等身大”ですから自炊も多め。
キッチンスペースには、料理器具も多めです。

その壁一面を埋め尽くしているのはエキゾチックな「モロッコタイル」。美術デザイナーがこだわったアイテムの一つです。

普通なら一人で暮らす部屋には弟くんもいます。
デザイン画がぶら下がった一角が弟くんのスペース。
服もそのまま掛けてありますが、
意外と木目調の部屋にカラフルな風を吹かせています。

弟はソファで寝てもらうとして、
こちらはお姉さんのベッドルーム。

CDショップで働いていることもありますが、
彼女の部屋には“音”があるんです。

2Fにある彼女の部屋からは通りが見下ろせます。
ベランダの彼女と通りに立つ彼、というシーンもありました。

こちらが外観の撮影用にご協力いただいている建物。
ベランダの手すりの独特なウェーブが印象的ですよね。

実は、ロケ撮影とスタジオ収録した映像がつながるように
大道具スタッフが、同じデザインの手すりを鉄骨で製作したんです。「ロケマッチ」と呼ばれるテレビジュツの技の一つです。

「ロケマッチ」では美術スタッフも腕をふるいますが、
自然なつながりを表現できるかどうかは、
照明スタッフの腕の見せ所でもあるんです。

2022年11月

ビジュツのヒミツ②

それぞれのキャラクターが
投影された部屋のデザイン

一方こちらは、耳が聞こえなくなったことで
「人と関わらない」生活をしている主人公の部屋。

板間の和室に、必要最低限のものしか置かない
シンプルな配置です。娯楽に関するものも一切ナシ。
もちろん彼の部屋に“音”はありません。

出版社の校閲の仕事をするための作業デスク。

「広辞苑」が3冊。最新版以外に改訂前のものも揃えているようです。「記者ハンドブック」や各種辞典など、文字と向き合う日々を想像させる書籍を装飾スタッフが集めました。

柱に取り付けられた「チャイムランプ」は、
来訪者を知らせる“光のチャイム”。
主人公の生活が垣間見える小道具の一つです。

そしてもう一人、二人の間で揺れ動く高校時代の同級生。
彼の部屋は、居心地のよさそうなサンルーム付きの
マンションです。

シャープなイメージのインテリアでまとまっています。
サッカーボールもさりげなく。

思い出の詰まったアイテムも、壁に掛けられています。

高校時代から歳月も経て、
三者三様の日々を送る三人の部屋が、
フジテレビ湾岸スタジオでは、隣り合わせに建っています。
台本を読み込み、
それぞれの物語を想像しながら空間をつくる、
それが美術スタッフのお仕事であり、楽しみなのであります。

2022年11月

デザインのヒミツ

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ー今回のセットデザインのポイントは?

宮川 卓也

宮川

高校の同級生たちの8年後の生活空間を美術セットにするということで、見ている方に共感してもらえるリアリティーをベースに、少し脚色して肉付けをしました。同時に、主人公と同じ世代が「こういうところに住みたいな」と思う空間づくりを意識しています。
今回はセットデザインのイメージに近い実際の物件を、制作部と一緒にロケハンをしているんです。そうやってイメージをスタッフ間で共有して、皆が同じ方向を向いていると、いろんな局面でも話がスムーズに進みますね。

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ーヒロイン紬の部屋のデザインについて

生活感が感じられる温かみのある部屋にしようと、全体的には木調にしています。リノベーションされた古いアパートということで、ちょっとしたオシャレさも取り入れた明るめの部屋です。洗濯機や乱雑な棚など、人が暮らしている部屋だと感じるところもありますが、よーく見ると壁の一部が変わったデザインだったり、ブランケットがユニークだったりとセンスの良さが垣間見えたりします。

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やはり映像的にはいいカンジの心地よさも必要なので、徹底的なリアリティー追求というよりはバランスを考えてデザインしています。
あとは、監督との雑談の中で「玄関につながる欄間の部分にアーチ状の曲線を入れるとどうかなあ」という話があったんですが、共有しているイメージが同じ方向だったので取り入れました。冗談っぽく話していたのを形にするってことも意外と多いんですよ。

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ー想の部屋について

きちんと整理されているシンプルな部屋になっていて、和骨を使って組み上げました。といっても若者が住む部屋なので、壁紙は貼っていますし、畳ではなく板間というかフローリングです。
全体的にはモノトーンで、あまり人と関わらない仕事をしながら淡々と暮らしているというイメージ。作業デスクと本棚に囲まれた空間が彼の主な居場所です。あと気付かないと思いますが、デスク奥の窓辺に小さなサボテンの鉢があるんです。そんな生活だけどサボテンは育てている、みたいな感じもいいかなと思って。監督に言ったら「任せる」とのことでしたので。密かなこだわりです(笑)。

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ー 今回のドラマはロケーション撮影も印象的です。

そうですね。ロケーション撮影で美術スタッフがやることは、あれやこれやと多岐にわたります。
掛け替え用の看板を作ったり、小道具を用意したり、料理もそうですし、準備を怠ると現地で大変なことになりますから。それとスタジオではなく、実際の物件をセットとして使う場合もあって「ロケ飾り」の作業が大変になります。

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ー今回もそういうケースはありましたか?

想の実家である「佐倉家」がロケーション撮影です。制作部が見つけてきた空き部屋を、大道具スタッフや装飾スタッフが変身させました。スタジオと違って実際の部屋ですから、撮影機材の動線から考えなければなりませんし、そもそも人が暮らしやすいように部屋ごとに間仕切られていることが多いんです。今回はリビングとキッチンの位置関係をドリーショットで表現する、ということで落ち着きました。もともと壁のないところにも新規のものを建てたりしました。

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ー美術サイドからの見どころを教えてください

美術デザイナーとして今回は、主人公3人の生い立ちからイメージを広げて、それぞれの部屋に反映させたつもりです。美術セットや小道具も含めて、違う個性を持つ3人の物語を楽しんでもらえたらうれしいです。

(2022年10月)

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