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『100万回 言えばよかった』3人の配役に納得の声、落差生む演技力

TV 公開日:2023/01/19 27
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でも、幸せなシーンは回想。直後に映るのは、思いつめた表情の悠依。キュンのあとに突き付けられる“直木の死”という現実が、いつも襲ってくる。過去の日々が幸せに見えるほど、今が切ない。その後の展開を想像すると苦しくなる。


危うく事故に遭いかけた悠依を助けようとして手を伸ばしても、悠依に触れられず自分では助けられなかった直木。絶望した背中かと思いきや「そっか!」と閃き、次に映るのは「無理無理無理 絶対無理」と困った様子の魚住。直木が「手止めない」「そんなガチャガチャやんなくていい」なんて指示を出しながら、悠依の大好きなハンバーグを代わりに魚住に作らせていた。「ナツメグ シナモン セージ オレガノ ディル」(直木)「待って待って待って それが何かも分からない えっ どれ?あっつ!あっ…(熱いフライパンに触わってしまう魚住)」とコミカルな掛け合い。切なさがどっと押し寄せそうになると、直木と魚住のシーンでクスッと笑わせられる。


さらに「すごい演じ分け」「マツケンが大変なやつ」と視聴者に驚きを与えたのは、直木が魚住に乗り移るという展開。松山は魚住を演じるとともに、その魚住に乗り移った直木(佐藤健)も演じなければならない。松山がキャスティングされたことに納得の声が上がるとともに、顔つきや仕草も違う様子に「ちゃんと直木になってる」「松ケンさんがほんとに健くんだった」と称賛の声が上がった。直木が魚住に乗り移っている状態の料理シーンで流れ始めたマカロニえんぴつが手掛ける主題歌『リンジュー・ラヴ』のイントロやサビが、明るいメジャーコードで入るのも、なんだか前に進むような気持ちにさせる。キャスト陣の愛嬌と演技力の高さや演出が、特異な設定に自然と引き込み、幸せな過去と現在の状況の振り幅をより大きく感じさせ、つらい現実のなかにも笑いを生み温かい気持ちにさせる。


さまざまな感情で大きく揺れながら絶妙のバランスでドラマは展開していく。そんなドラマを象徴するようなシーンが、悠依が直木の存在を認識するシーンではないだろうか。幸せの象徴のような直木にしか作れないハンバーグと、二人だけがわかる思い出のしょっぱいプリンを食べて悠依の表情が崩れる。その表情が涙を誘う。直木の存在を感じられた幸せとともに訪れる現実。「見えないよ… 声も聞こえない。でも分かる。そばにいてくれてる。でもそれってつまり…あなたは 死んだの?」。直木の「ちゃんとそばにいるって伝えたい」という思いが魚住を介して悠依にやっと伝わったその時、悠依には“そばにいてくれる”と感じる嬉しさと直木の死を受け入れなければいけないという切なさが同時にくる。しかし傍から見れば、その場には魚住と悠依だけしかいない。聞こえるのは悠依のすすり泣く声だけ。


しかも最後に映されたのは、殺人事件現場の防犯カメラに映る直木の姿。ミステリーの要素もまた別の角度から心を揺さぶってくる。1話の最初のシーンで直木と言葉を交わした謎の男(板倉俊之)の存在も気になる。この何層にも重なるストーリーや感情を温かさをもって届ける脚本と、それを体現してちゃんと心に響かせる俳優陣。


先の読めない完全オリジナルストーリーにワクワクし、さまざまな感情を浴びる贅沢な金曜の夜が始まった。


文:長谷川裕桃


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