幽霊となっても存在を感じられることが嬉しい。でも体が拒絶する。
身元不明の男性が発見されたと警察から連絡が入り、悠依は所持品と遺体の確認へ向かう。そこで襲ってきたのは、その遺体が直木だったらどうしようという怖さ。「顔も見えない 声も聞こえない 触れない 触ってもらえない」「体がないって つらい」。涙がつたう悠依の頬を直木は触ろうとしてみたが、やっぱり頬をすりぬけ、涙も手につかない。
でもここで直木は言う。魚住に伝えてもらいながら。
「俺が死んでたとしても」
「・・・俺が死んでたとしても」
「前に進もう」
「前に進もう」
魚住が復唱するのをためらっても「伝えてください」と伝えた言葉は、大好きな悠依を信じる言葉。
回想シーンで、里親の勝さん(春風亭昇太)が亡くなって、悠依は絵本の『100万回生きたねこ』を読んだ。
白いねこが死んで100万回泣いたねこが白いねこのとなりで静かに死んだことに対して、「そんなの私は嬉しくない」「100万回泣いたら そのあとは 元気にピンっピン生きてってほしい」と口にすると、となりで聞いていた直木はじっと悠依をみつめて「悠依のそういうとこさ…」と言って言葉を呑み込む。
「すごく好きだって言えばよかった」。これも魚住にだけ聞こえる“言わなくていい”言葉だった。
先立たれて悲しみにくれても、そのあとは前を向いて生きていってほしい。
「俺が死んでたとしても 前に進もう」
悠依の言葉と直木の言葉が重なる。しかも、直木の言葉を魚住が復唱するという特殊な状況だけど、そうすることでその言葉に強さが加わるような気がする。
直木が幽霊であるという特異な設定から、笑いもキュンも悲しみも強さも生む。「前に進もう」という言葉の響き方が、なんともいえず新鮮で、心の奥をじわりと温めてくれた。
事件の真相を探りながら、この気持ちの揺れを描く脚本。インパルスの板倉俊之演じる謎の男は直木と“同類”と言い、笑いを生むやりとり。
シム・ウンギョン演じる宋先生は魚住を見て「ウソでしょ…」。事件のカギを握りそうな莉桜役には香里奈。『恋つづ』ではドS天堂先生の姉を演じていたが、今作では佐藤とどんな絡みを見せるのか。見どころは尽きず、どんな展開になるのか予想がつかない。ただ、今夜も新鮮で温かい感覚になれるのでは…と期待している。
文:長谷川裕桃