新型コロナウイルス対策として政府が始めた実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の受け付けが9月末で終了した。融資実績は42兆円にのぼり、巨額の公費を投じて企業の資金繰りを支えてきた。利払いが順次始まる来春に向けて企業の返済が本格化する見通しだが、コロナの影響が長引くなどして倒産はすでに増加傾向にある。返済が滞れば公費負担が増えるおそれもある。
ゼロゼロ融資は、コロナで売り上げが減った中小企業を対象に、金融機関が担保なしでお金を貸し出す制度。本来は借り手が金融機関に支払う利子を3年間、国や都道府県が負担し、返済できない場合の保証もつく。2020年3月に始まった。民間金融機関の新規受け付けは昨年3月で、政府系金融機関も今年9月末で終えた。
中小企業庁によれば、融資実績は6月末時点で約234万件、42兆円。政府は金融機関に利子として支払う予算として約1・8兆円を計上しており、3月末までに約4千億円を支出した。
手厚い支援の効果で、倒産件数は歴史的な低水準に抑えられてきた。帝国データバンクによると、21年度の企業倒産(負債1千万円以上)は5916件と前年度より2割近く減り、約半世紀ぶりに6千件を割り込んだ。
ただ、今春以降、物価高や円安の影響もあって増加傾向に転じている。8月は前年同月より44件多い493件と4カ月連続で前年同月を上回った。4カ月連続での前年同月超えはコロナ下で初めてだ。ゼロゼロ融資を受けた企業の倒産も増え、1~8月で253件と昨年1年間(166件)の1・5倍だ。借り入れをしてもコロナ禍で売り上げが回復せず、資金繰りが追いつかなくなったとみられる。
民間金融機関によるゼロゼロ融資が焦げ付くと、公的機関の信用保証協会が返済を肩代わりする。協会によると、ゼロゼロ融資を含む8月の肩代わり額(代位弁済額)は前年同月より26%多い266億円。前年同月を上回るのは12カ月連続だ。協会がお金を回収できない場合、損失の一部は公費で穴埋めされ、国民負担になる。
融資の無利子期間は来春以降…