ウクライナ大統領選、39候補が乱立 対ロシア争点
【キエフ=小川知世】31日投開票のウクライナ大統領選には最終的に39人の候補が乱立した。支持率では政治経験のないコメディアン、ボロディミル・ゼレンスキー氏(41)が終盤でも首位を維持するが、どの候補も過半数を得られず、上位2候補が4月21日の決選投票に進む見通しだ。
最大の争点は隣国ロシアへの対応だ。軍事力で圧迫するロシアに大半の候補は反発するが、解決への手法は異なる。有力候補の中でロシアに最も厳しい姿勢をみせる現職のペトロ・ポロシェンコ大統領(53)を巡っては、ロシアがインターネットなどを通じて同氏に不利な情報を流し、介入しているとの指摘もある。
39人の立候補はウクライナの大統領選では最も多い。投票用紙の長さは約80センチメートルに及ぶ。有権者が記入にもたつけば投票所が混乱し、投票率が低下する可能性もある。
キエフ国際社会学研究所などが28日発表した支持率はゼレンスキー氏(17.3%)でトップ。2位がポロシェンコ氏(11.7%)、3位は野党「祖国」を率いるユリア・ティモシェンコ元首相(8.3%)だった。
ポロシェンコ氏、ティモシェンコ氏が主導した過去の政権は経済再建の実績を残せず、汚職も相次ぎ発覚。既存政治への失望から有権者は未知数のゼレンスキー氏に新味を見いだしている。
対ロシアでは、ポロシェンコ氏は全面対決も辞さない構えだ。一方、ゼレンスキー氏は「ロシアとの交渉は不可欠だ」と主張。ティモシェンコ氏もロシアとの対話の用意があるとしている。
ロシアによる選挙介入への警戒も広がる。現地メディアによると、ウクライナ国家保安庁は最近、キエフの本部で欧州連合(EU)と共に海外からのサイバー攻撃を撃退する訓練を実施した。EUのハッカー役がウクライナの中央選挙管理委員会を攻撃し、同国のスタッフがそれを無効化するという内容だ。
国家保安庁の職員によると最近数カ月、ウクライナ政府機関のコンピューターへ不正アクセスを試みる攻撃が増えた。同庁の専門家はAFP通信に「ロシアによるサイバー攻撃だ」と指摘する。
ロシアはウクライナ大統領選でポロシェンコ氏の再選を阻止する狙いだと、米国のボルカー・ウクライナ担当特別代表は2月に発言した。ロシアは新政権となら取引できると考えているようだ。
仮にゼレンスキー氏が当選した場合、ロシアのプーチン大統領と渡り合えるかどうか、欧米は懸念する。政見発信はもっぱらネット上。組閣構想では有力政治家の登用に否定的だ。ウクライナの富豪イーホル・コロモイスキー氏の支援が取り沙汰される。同氏が事業環境の改善を優先するなら、対ロ融和を新政権に促すこともあり得る。
ロシアは2014年に軍事力でウクライナ南部のクリミア半島の併合を宣言した。さらに同国東部の親ロ武装勢力を支援し、ウクライナ軍との衝突を引き起こした。