「やっぱ 俺 死んでたわ」。魚住になるべく軽い口ぶりで明るく言おうとする直木だが、うまく笑えていない。心に受けた大きすぎるダメージを静かに表現する表情が秀逸だった。
悠依は、不条理な現実への怒りを押し殺しながら静かに気持ちを吐き出していく。最後に声を荒げて言った「絶対…絶…絶対に許さない!」という悲痛な叫びは、画面を通してそのまま伝わってくるようで胸を苦しくさせる。触れられなくても後ろから悠依を抱きしめる直木の表情は小刻みに変わっていた。
第4話にして、突き付けられた直木の死。でも、そこで第4話を終わらせないのが、この作品らしいと感じる。
「人間ってやっぱ体がないとダメなのかなぁ~」「つらいな~」と姉に電話しながら2人の気持ちに寄り添う魚住がいて、「何で死んじゃったのだよね」と悠依に温かい手を添えるハヨン(シム・ウンギョン)がいて。
歩き出した悠依にこみ上げる涙と主題歌『リンジュー・ラブ』の歌詞が重なる。テンポも少しゆったりした、いつもとは違うバージョン。
ついにしゃがみこんでしまった悠依に聞こえてきたのは、へたくそな口笛。やっぱりツッコミが入りそうな顔で、悠依の隣で一生懸命口笛を吹く直木が、自分がいることを必死に伝えている。
「ありがとう」と言ってやっと笑った悠依は、また立ち上がって歩き始めた。直木は隣を歩いている。
大切な人の笑顔を必死に取り戻そうとする直木の優しさと、絵本の『100万回生きたねこ』について「大好きな相手が死んじゃったら自分の人生もあきらめちゃう それは何か違う」と言っていた悠依の強さ。もう一度歩き出した悠依とそこに寄り添う直木の姿は、まさにこのドラマの強さと優しさを表しているように見えた。第3話では悠依から一方的に伝えられた気持ち。第4話では、直木の気持ちが口笛という形で悠依に伝わった。抗えない現実のなかで、優しさやぬくもりをなんとか掴みながら、少しずつ前を向いていく。自分のことを思ってくれる誰かの気持ちを感じることができるなら、自分以上の力で一歩前に進むことができるかもしれない。そんなことを思わせてくれるシーンだった。
しかしドラマはノンストップ。ラストには苦しみ出す直木の姿が…。ここにきて怪しさ満点のオーナー(荒川良々)や、悠依が莉桜と涼香と映っていた写真も気になるが、ひとまず予告のデートシーンを見て心を落ち着けながら、第5話を楽しみに待とう。
文:長谷川裕桃