「造語症」は本当にあるのか

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ネット用語に「造語症」なるものがあるようです。なんでも、オリジナルの造語をさも昔からあった一般用語であるかのように振り回す人のことを指すそうで、統合失調症の患者によく見られるといわれています。しかし、精神医学的に確固として定義されている訳ではありません。

しかし、ネット上でよく見られる素人の精神病認定においては「造語症」の概念が重宝されているようです。ネット上のお医者さんごっこでしか使われない「造語症」こそが、意味のない造語ではないでしょうか。

存在しない言葉を作る

造語症は「言語新作」「ネオロジズム(neologism)」とも呼ばれ、一般に存在しないオリジナルの造語を一般用語であるかのように使うことを指します。ただ、neologismは単に造語を生む・輸入する・用いること全般を指す言葉で、例えば起業する会社に名前を付けるプロセスにも当てはまります。造語症の原語とされていますが、範囲としてはneologismのほうが広いです。

造語そのものは起業や創作などの名付けで頻繁にみられるので、それ自体に問題はありません。問題となるのは、一般どころか専門用語ですらないオリジナルの言葉を、さも一般用語として流通しているかのような態度で使っているときです。

造語症はしばしば、統合失調症などの精神疾患者によく現れる特徴だと言われています。その点が一人歩きしたのか、「こいつは統合失調症だ(ゆえに話を聞く価値はない)」とお医者さんごっこするためのツールになり果ててしまいました。

造語症の研究

一応、造語症について細々と研究していた人が15年前に存在していました。臨床心理学の教授である塚本嘉壽さんは、造語症について専門書はないとしながらも、先行論文を頼りに研究されていたそうです。その為、仮説を立てる程度が精一杯です。

塚本教授によれば、造語症は音や綴りから言葉を作るのに加え、日本では漢字まで創作するケースがあるのだそうです。原因は諸説あり、象徴機能や記号化作用の欠損に基づくという説もあれば、現存の言葉では表しきれない心の不安や危機を訴える説もあります。

塚本教授は造語症に関して、多様な視点と応用例から考察していきたいと述べていました。しかし、その寄稿から15年経った今でも知識の体系として確立すらされておらず、造語症についての専門的な研究は頓挫しているとみてよさそうです。

フリー百科事典がダメ出し

「造語症」のあり方について意外な所が慎重を期するようにダメ出しをしています。ネット上のフリー百科事典のひとつである「ピクシブ百科事典」です。該当の記事はほとんど注意書きのような書き方をされています。

「2020年11月11日の時点で、『造語症』について精神病院や医師によるものと明確に判別できるサイトからの発信は(少なくとも日本語では)存在しない」

「英語のneologismを訳したものとされるが、neologism自体は創作を含む新しい言葉や造語を生み出す営みそのものを指す言葉である」

「精神病の個別事例として『存在しない言葉を生み出す』ことがあったとしても、『存在しない言葉を生み出す』こと自体が精神病である証拠にはならない」

「造語が精神病によるものかどうか判断できるのは実際に診断した精神科医だけ。よしんば精神病が認められたとしても、同じグループや立場の全員もまた精神病とはならない」

「奇怪な言説の呼び名として『精神病』『統合失調症』を用いるのは、病やその当事者への偏見を煽る危険な行動である」

「本記事に医学的見地からの情報を載せる場合は、執筆者や発信者が精神科医・研究者などであると判別できるソースも併記してください」

フリー百科事典にここまで言われるとなると、色々と察するものがあります。該当の記事は、聞きかじりの知識を振りかざして精神病認定する者らへの「お説教」でもあるのかもしれません。「所詮フリー百科事典だから」などと逃げずに一読してみてはいかがでしょうか。

参考サイト

言語新作とは
https://kotobank.jp

造語症について(PDFファイル)
http://www.saitama-u.ac.jp

造語症(ぞうごしょう)とは【ピクシブ百科事典】
https://dic.pixiv.net

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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