上川隆也、キャリアを重ねても変わらない役者としての佇まい「僕にできることを僕なりに」【連載PERSON】

上川隆也、キャリアを重ねても変わらない役者としての佇まい「僕にできることを僕なりに」【連載PERSON】

人生に影響を与えたテレビ番組を軸に、出演作品の話題からその人のパーソナルな部分にも迫るインタビュー連載「PERSON~人生を変えたテレビ番組」。今回は、木曜ドラマ『さよならの向う側』(読売テレビ・日本テレビ系、毎週木曜23:59~※全4回)で主演を務める上川隆也さんです。

中央大学経済学部在学中の1989年に演劇集団キャラメルボックスに入団した上川さん(2009年に退団)。1995年には、NHK70周年記念日中共同制作ドラマ『大地の子』で主演・陸一心役に抜擢されたほか、NHK連続テレビ小説『ひまわり』(1996年)、『白い巨塔』(2003年)、『遺留捜査』(2011年〜)、『ノーサイド・ゲーム』(2019年)といったドラマをはじめ、映画や舞台、さらにはその真面目で柔和な人柄でも愛されている役者さんです。

清水晴木さんの同名小説をドラマ化した『さよならの向う側』は、現世とあの世の狭間「さよならの向う側」で亡くなった人を迎える案内人(上川)が主人公。案内人は、訪れた人々に提案します。

「24時間の間、会いたい人と会うことができる。ただし、会えるのは、まだあなたが死んだことを知らない人とだけ」

訪れた人たちは葛藤しながらも“最後の再会”に向かう――。大切な人に思いを伝えたくなるハートフル・ヒューマンドラマです。

今回、白髪の案内人を務めた上川さんにお話を聞きました。不思議な雰囲気をまとった役への思いはもちろん、上川さん自身の魅力も溢れ出すインタビューとなりました。

この物語が伝えたいこと

――亡くなった方に寄り添う“案内人”という人物について、どんなことを感じていましたか?

当然誰も見たことがない世界観の物語の中、その成り立ちや能力なども計り知れない「案内人」という役柄については監督とも密に話し合い、シーン毎一瞬一瞬常に想像力をかきたてられ、様々なことを考えつつ演じていたように思います。

――案内人として死者と話をしていきますが、演じていたときの気持ちを教えてください。

黄泉と現世の狭間の話は古今東西、数多くあると思うんですけど、その中でこの物語の一つの特色といえるのが案内人の存在であると思うんです。でも彼は「超常」の存在ではなく、どこか共感をもって迎えていただけるような存在であることが大切だと捉え、そうした立ち振る舞いを意識しながら演じていました。

――演じる中で彼に対する思いは変わっていきましたか?

彼が案内人になった経緯にも関係してくるのですが……人が持っている痛みや悲しみを、当たり前のように持ちながら案内人を務めているということに、より共感を覚えながら撮影を終えました。やはり演じていくことで役への思い入れは深くなりますから、最終日を終えたときの御しがたい思いは当然ありました。

――演じるうえでこだわった点を教えてください。

案内人は、訪れる人々にどうしようもなく厳しい限定条件を提示しながらも、その中で一人ひとりの願いがどうにかして果たされる様に務めていたと思うんです。何故なら彼は、目の前の魂の悲しみが痛い程分かるからです。その理由は最終話で明かされますが、だからこそ案内人の一つひとつの行動が、彼の前を通り過ぎていく人たちへのエールである様にしたいと思い、演じさせて頂きました。

――感動する言葉がいくつも出てくるお話です。上川さんが印象に残っている言葉は?

この物語は全4話でお届けするわけですが、4話目の案内人の発した言葉です。ここでは明かせませんが、ありきたりの言葉です。でもそれは全話を通して描かれている、「誰しもがそのありきたりな想いを、大切な人に伝えられていないのでは?」という投げかけに他なりません。“この物語が伝えたいこと”だからこそ、とても胸に響きました。

影響を受けたのはあのスターたち

――ここからは、上川さんとテレビとの関わりについてお聞きしたいです。影響を受けたテレビ番組を教えてください。

僕は笑いが好きで、自分の務める舞台などでもその余地や演出家さんの許可があれば、(笑いを)差し挟んでいきたいと目論んでいるのですが、そうしたお客様に笑っていただきたい、楽しんでいただきたいと思っている根幹には、間違いなく「ザ・ドリフターズ体験」があると思うんです。

物心ついて間もないころから毎週土曜20時になると見られた『8時だョ!全員集合』や、スペシャル枠で定期的に楽しむことのできた『ドリフ大爆笑』等々、趣向の凝らされた笑いを一番スポンジの様に吸収力のある時期に見ていたことの影響は実に大きかったんだと、今更ながらに思います。今でも漫才やコントは楽しく拝見していますし、そうした思考の発端を作ってくれたのがドリフターズの皆さんだったと思います。

――上川さんも舞台出身ですし、通ずるところがあるんでしょうか。

それは分かりませんが、「間」や「テンポ」などの基本は『全員集合』から受け取ったものが今でも活きていると、ふと感じる時はあります。

――いま、よく見ている番組は?

ラヴィット!』は許される限り見ています。放送開始当初から拝見していましたが、川島明さんを中心に創り出される2時間はライブ感に溢れていて、これまであの朝の枠になかった他に類を見ない内容がとても楽しく、いつも興味深く拝見してます。

――今回の『さよならの向う側』においての役や、『遺留捜査』では、木曜20時ドラマ枠最後を飾ることになるなど、出演される作品において、重要な役を担うことが多い上川さん。ご自身が担う立場について、どんなことを思っていらっしゃいますか? 

『遺留捜査』で木曜最後の枠を務めさせていただくことに関しては、とてもありがたいと思う一方で、同じくらい“よくぞ我々にその任を預けてくださったものだ”という思いがあります。思い返せば『遺留捜査』という番組は、これまで数回放送枠を変えてきて、木曜20時に収まることになったわけで、なればこそ「この流浪の番組によくぞ(任せてくれた)……」と思わざるを得ない(笑)。そうしたお計らいについて、僕が返せることと言えば演技だけですし、より楽しんでいただけるドラマとしてお届けできるよう毎シーンに注力するしかないとも思っています。

――現場で年長の立場になることも多いと思います。先輩・後輩との付き合い方、仕事との向き合い方など、変化したことはありますか?

個人的に、以前と今を比較しても変わったとは思っていません。多少は経験を積ませていただきましたし、年齢も重ねてまいりましたが、それが立ち振る舞いに影響するかといえば、そんなこともなく、僕は僕にできることを僕なりにやっているだけだと思います。周囲の方からどう見られているのか知りようもありませんが、少なくともしばらくはこのままでいるのではないか、と思っています。

――最後に『さよならの向う側』の見どころを教えてください。

この物語は、ある意味人間賛歌だと僕は思っています。一つひとつの人間模様が色濃く描かれていきますので、それぞれのなりゆきを楽しんでいただきたいですし、作品から皆さんに向けられたエールも一緒に感じていただければと思います。

取材・文:浜瀬将樹、写真:フジタヒデ
スタイリスト黒田匡彦/Losguapos(ロスガポス)03-6427-8654

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