以前手に入れたポイラロイドカメラ、アレも意外といい仕事をしてくれてる
未だに壁に貼り付けたままの写真もあるけど、結構な枚数こっちに収めたし

「あ、あの……」

そこで、横から声がかかる

「はいよ。なんスか」
「あ、あの………気になったんですけど………」

控えめにそう言葉を発するのは………新入部員（仮）、ハギノモーリスちゃん
彼女が指さした一枚の写真に目をやって………白目を剥いた

「こ、この……生垣にめり込んでる人は一体………」
「ナンデモナイッス」
「うわぁプイ………懐かしいプイ………」

言えねえよ。姐御怒らせた時の自分だなんて

●

「それにしても、アルバムももう何冊も溜まったなんて。時間の流れるのは早いッスねぇ」

きっかけは、今日の練習終わり。午後の暇な時間で軽く部屋の整理を始めたことだった
その時に出てきた数冊のアルバム……姐御発案で製作され始めた、我がチームのアルバムだった。それが興味を引いて、掃除の後に読んでみることに
一緒にいたプイ先輩とハギノモーリスちゃんとで眺めていたが、視点はそれぞれ違う
プイ先輩は懐かしそうに。ハギノモーリスちゃんは新鮮そうに眺めている
まぁ、ハギノモーリスちゃんは来てからなかなか写真に写ってくれないので、まだ入ってないというのがあるのだが

「主に姐御が撮影した物の中から一番良さそうなものをチョイスして現像、それを収めるアルバムッス」
「そこに置いてあるポラロイドカメラも活躍中プイ。何か気になるものがあったら撮影してみるといいプイ」
「あ、は、はい………」

……ハギノモーリスちゃんも、慣れてきてくれたなぁ
最初は本当にどうなる事かと思ったけど、なんだかんだ逃げないでいるようになってくれたし。いやほんと、今だから言うけど最初はこれ無理じゃね？とも思ったけど
出会った頃から考えると、こうして一緒に並んで何かを見れるようになっただけでも大進歩だろう。これで（仮）が取れる日が来れば一番いいんだけど

「あ、ソングラインちゃんが初めてG1勝った時の写真プイ」
「この時はみんな大騒ぎでしたねぇ………最近もまた調子いいみたいでなによりッスよ」

あの時、めっちゃしんみりしてたんだけど感極まったソングラインちゃんによるエールちゃんへのロケット頭突きという別の意味での衝撃映像になったんだよね
横っ跳びに数メートル吹っ飛ぶエールちゃんは今でも覚えてる
もちろん、あの時の感動も。涙も。想いも。誓いも
きっと、ソングラインちゃんに言ったら恥ずかしがるかもだけど

「………私も、いつかは」

ボソッと言ったつもりだろうけど、ちゃんと聞こえてるよハギノモーリスちゃん。大丈夫、きっとその日は来る

「これは……雪掻きの時ッスね」
「こ、こんなに降った時があったんですか………？」
「これは本当に地獄だったプイ。一心不乱の総力戦だったプイ」

そうそう。んで、雪合戦になってエールちゃんにトドメ刺されたんだった
今年の冬はマシだといいなぁ………でもまた降るんだろうなぁ………雪掻きの準備は、しっかりしておこう

「あ、あの………この、カボチャの山は………」
「あー。覇王のチームが初めてやらかした時のものッスね」
「や、やらかした！？」
「あー、まだ農場始めてなかった頃プイ。そういえばこれがきっかけだったプイね」

そうそう。最初は、カボチャの繁殖力を舐めてて大繁殖させた覇王たちが泣きついてきたのが始まりだった
あの時は本当に大変だった。でもその後、まさかの菜園を作っての規模拡大を繰り返した末に今の農園になるなんて思ってなかったけど
いや、今のあそこ本当にすごいことになってるんだよな……あの人数でどうやってあの規模回してるんだ。時々お裾分けで凄い量届くし

「クリスマスも楽しかったプイねー。今年はハギモちゃんもぜひ参加するプイ」
「あ、えっと、その………いいんでしょうか………」
「もちろんッスよ。何を躊躇うことがあるッスか」

君はもう立派にうちの一員だよと
もうちょっと遠慮なくぐいぐいきてもいいのよ？と。この先輩見習って……いやそれは過剰投与か

「あ、あの………この皆さんが付けてるマスク。先輩と、同じですよね………」
「あー。悪ノリから始まったマスク戦隊ウママスクッスね」
「確かインフルエンザの大流行に便乗した悪ノリだったプイ」

今考えたら何だったんだあのノリ。大体いつものことだけど
そして今見逃さなかったよと。ハギノモーリスちゃん、『マスク戦隊ウママスク』なんて変なワード聞いてちょっと笑いかけてる
盛大に笑っちゃっていいのに

「………こ、この………みなさんが、ボロボロになって倒れてるのは………」
「ただの節分ッス。気にしないでいいッスよ」
「せ、節分で、ですか………？」
「ナニモオボエテナイプイ」

………酷かったね。姉貴の、姐御への豆誤射
おかげで全員連帯責任で『カワイイ』されることになったし。ハギノモーリスちゃんは知らなくていい事件だ

「これは、釣りですか？」
「あー。みんなで初めて釣りに行った時のものッスね。あれもあれで大変でしたね………」
「釣りは楽しかったけど、エサの臭いが酷すぎたプイ。あれはもうごめんプイ」

そうそう。黄金世代の某釣り好きウマ娘に指南を受けて釣りに臨んだんだけど、寄せエサの臭いが酷すぎて大騒ぎになったんだった
エールちゃんとか大泣きしちゃってたし。あれ姉貴とかよく暴走しないでいてくれたもんだ
最近行ってないし、道具が腐らないうちにまたみんなで行ってみようか
その時はハギノモーリスちゃんも一緒に。あ、エサはシーフードミックスか何かで

「これは海行った時ッスか」
「あ、あの………また先輩方が砂浜にめり込んでるんですけど………」
「エールちゃんの衝突事故ッス」
「これはハロウィンの時、これは台風の日、これは餅つきの時………」

そうして、次々と写真と、それにまつわる思い出を振り返っていく
アルバムに貼られた写真の一枚一枚に思い出がある。気が付けばこんなに時間が経ったか、という思いと。まだこんな最近なのか、という思いと
それはきっと人次第なんだろうけど、振り返ること自体は悪いことじゃないだろうし

「ハギノモーリスちゃんも、写真とかあったら出してくれていいッスよ。よろこんでアルバムに貼っていくッス」
「え、えっと……今度から、そうします………」
「あ、このチームのトレーナーさんがシワシワになってる時の写真プイ。いつの物プイ？」
「心当たりが多すぎるッスね………」

すると、プイ先輩が突然「あ！」なんて声をあげて
なんだ、変な写真でもあったか。いや変な写真だらけだけど
すると突然携帯を取り出して、何事か操作し始める。用事でも思い出したのだろうか
なんて思ってたら、とんだ爆弾が飛んでくることになった

「これも現像してくるから追加するプーイ」

そこに写っていたのは………げっ
それは、まぎれもないウチ自身で。ギターを手にして、顔を赤くしながら歌ってる姿が鮮明に写っていた
しまった。この前の妖怪芦毛はどこだが来た時の。まさかそんな隠し玉持ってくるとは

「ぷ、プイ先輩！！いつ撮ったんスかこんなもん！！！」
「こっそり撮ったプーイ。やっぱりギター持ってる姿似合うプイ」
「わ、わぁ………先輩、ギターも弾けるんですね………」

ええい、プギュラララララとか笑ってるこの先輩、一体どうしてくれようか
その写真をなんとかして削除せねば。また姐御にでも見られた日には間違いなくリクエストされるに決まってる

「今度ハギモちゃんにも聴かせてあげるプイ。きっとファンになってくれるプイ」
「あ、あの………是非、聴きたいです………」

……マジかぁ、ここでぐいっと来るかぁ
純粋に聴いてみたい、という視線を向けられてうぐっと言葉に詰まってしまう
おのれプイ先輩、この仕返しは後ほどしっかりさせてもらう。そのモチモチほっぺがどれだけ伸びるのか試させてもらおうじゃないか

「……今度ッスね」
「は、はい。楽しみ、です……！！」

そっかぁ、楽しみかぁ。こっちは今から戦々恐々だよぅ
何弾いたもんかなぁ。新曲練習しておくかなぁ………

「ところでプイ。ちょっと提案があるプイ」
「なんスか。その提案によってはほっぺうにょーんの刑の時間延長ッスよ」
「いつの間にか変な刑が決まってるプイ！？」

覚悟しろ、珍獣マスコットめ

「今度全員集まるのって、確か三日後くらいだったプイ？」
「そうッスね。全体練習があるんで、その時に久々の全員集合ッスよ」

最近聖剣先輩とか忙しくてなかなか顔出せないって嘆いてたからな。いい機会だろう
というか、うちのチームは集まりがいいようで悪い。結構な頻度でお仕事だったりレースだったりその他諸々でいない面子がいるので、全員集合って地味に珍しかったりする
姉貴も最近暇さえあればお年寄りの様子見に行ったりしてるし、バリバリ注目されてるエールちゃんソングラインちゃんコンビは取材とかも結構飛んでくるし
……最後に全員集まったのって実際いつのことだっけ。ちょっと考え込んでしまう

「ほら、アレプイ。久々に使うプイ」
「アレ………？」

プイ先輩が視線をやるのは、棚に置いてあるポラロイドカメラ
そして、次に視線を………ハギノモーリスちゃんに向けた

「ああ、なるほどッス」

それで、先輩の意図を理解した
なるほど、それはいい。こっちもそう思って、ハギノモーリスちゃんを見る

「……あ、あの？」

彼女自身は未だに状況を理解していないようだ。ただ、彼女には主役になってもらわなければならないだろう
だって、それこそが今足りない物なのだから

「………ふぇ？」

●

「もー。全員ジャージだなんて、華がないなぁ」
「部活の一風景なんスから。そこは妥協してくださいッス」

あれから三日
文句を言いながらも鏡で身だしなみを整えている姐御をなだめながら、こっちも最低限の身だしなみを整える
げげ、右の髪跳ねてる……今からスプレーで誤魔化せるかな

「ぷっきゅう。準備完了プイ」
「ほんとこういうの早いッスね」
「お仕事で慣れてるプイ。こんなのコツさえつかめばちょちょいのププイプイ」

普段プレハブでごろごろしてる時は髪なんてあちこち跳ねてるくせに、こんな時だけ準備がいいんだから
他のメンツもなんだかんだで準備ができてきたみたいで、プレハブの前にワイワイと集まりだす

「おーおー。賑やかなもんじゃねえか。全員集合とかいつぶりよ愚昧」
「そりゃウチも覚えてないッスよ。ていうか姉貴、ジャージめっちゃよれてるッス」
「これしかねーんだよ」

そんな会話をしながら、プレハブ小屋の脇に目をやる
そこには我らが後輩ｓが、なんかもうすごいワチャワチャとしてるというか

「あ、あの………！！やっぱり、私は………！！」
「今更逃がしませええええええええええええええええええん！！！！！！！！！！！！！！！！！」
「さあさあ、おとなしくセンターに来てもらうよ。大丈夫、恥ずかしくないから」
「ふぇええええ……！！！」

逃げ出そうとするハギノモーリスちゃんを、せいせーいと取り囲むようにして退路を塞ぐメイソンコンビ
ソングラインちゃんもなんかノリノリだし。やっぱ念願の後輩だもんね、仕方ないよね

「ふむ。これで全員準備は整ったか？」
「もー。こういうことはもっと早めに言っておいてよね！！！あ、鏡貸して。帽子のの角度が………」
「そろそろ撮影できるかな。そっちは大丈夫ー？」

姐御がそう声をかけた相手は………ポラロイドカメラを手に持った、妖怪芦毛はどこだ。もとい、ジャスタウェイ
なんでいるんだ、と思ったら姐御が用事のついでに頼んだらしい

「ええ。もちろんですカレンチャン。すぐにでも最高の一枚をお届けできますよ」
「集まるプーイ。ハギモちゃんをセンターにシュートするプーイ」

ワラワラと、プレハブ小屋の前に一同は集まり出す
そう。今日この日集まったのは、記念撮影
ハギノモーリスちゃんも含めた、『最新のチーム』の姿を写してアルバムに収めよう、というプイ先輩の提案だった
………提案者が本来チーム外なのは、この際横に置いておこう。今更も今更すぎるし

「さ、ハギノモーリスちゃん。中央へどうぞッス」
「で、でも……やっぱり、はじっこの方で………」
「そうは問屋が卸さないッスよー。はいはい、ここッスここッス」
「ふぇええええ………」

ついでに。今回の主役として、ハギノモーリスちゃんをセンターに入れようということで

「さ、では撮りますよ。３カウントでいきますので、みなさまご準備のほどを。何枚も撮影しますので、その都度声をかけさせていただきます」

妖怪がそういうとカメラを構えて。………妙に慣れてるなこの妖怪
ハギノモーリスちゃんも、そこでようやくと覚悟を決めたか。姿勢を正して、カメラに向き直る

（ああ、本当に）

聖剣先輩が、魔女っ娘が、姐御が、姉貴が、エールちゃんが、ソングラインちゃんが、プイ先輩が
そして、ハギノモーリスちゃんが
今ここにいる全員が作ってきたアルバムに、作っていくアルバムに、この一枚を加えられることを誇りに思う
絶対口にはしないけど。からかわれるだろうし

（いいチームに入れて、よかったッス）

なんだかんだ、そこだけは………否定できないのが、正直なところだから

「それじゃあ撮りますよー。３、２、１………」

パシャリ、と。乾いたシャッター音が、確かに聞こえた
この後、何枚も撮影しているうちにトレーナーが駆けつけてきて
自分だけのけ者かい、なんて若干めんどくさい拗ね方しやがったけど。まぁそれはそれ
トレーナーも含めた、最新最高の一枚を

（これから何枚でも、撮っていこう）

きっとそのすべてが
いつか振り返った時に、また語らうための一ページになるだろうから

以上。お題『アルバム』をもらったので酒飲んで舎弟した
次回でプレハブシリーズ１００作目になります

いい…

>次回でプレハブシリーズ１００作目になります
もうそんなところまできたのか…

プレハブ組は結局仲良いから安心して見れる

そんなにあったのかこのシリーズ…

当たり前のように写ってるプイいいよね

>そんなにあったのかこのシリーズ…
一応１００作目の時点で他に書いたものも含めてまとめを作る予定でいます

お、まとめは年末だけだと思ってた
これは見逃せない

今更プイ抜きの写真とか撮ったらすごく違和感ありそう

>今更プイ抜きの写真とか撮ったらすごく違和感ありそう
知ってる奴が見たらその時だけ何かあったのかと誤解しそう

ほのぼのしてるけど(うわこの写真13冠分写ってる…)となるオルプイツーショ

プイの笑い方が完全に珍獣なのよ

>ほのぼのしてるけど(うわこの写真13冠分写ってる…)となるオルプイツーショ
一般ファンから見たら何事かと思うやつだ

ｷﾀ━━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━━ !!!!!

>No.1069046168
ドリジャ…お前…

台に乗ってるドリジャでダメだった

まあ現実でも台乗ってるらしいからな

>これで精いっぱいです
ジャス!!!ﾊﾞｼｨ

>これで精いっぱいです
微修正です

普通にホラーだこれ