国際結婚、同性はビザ下りず 在留の許可求め、訴訟に
オーストラリアが8日に同性婚を合法化した。これにより、世界の26カ国・地域で同性婚が認められることになったが、日本では同性カップルに対する法的保障がない。グローバル化により国際カップルが増える中、日本人と外国人の同性カップルが在留資格の問題に直面している。
●国外退去命じられ
関東地方に住む台湾人の40代男性は3月、日本人の男性パートナーと長年連れ添ったのに国外退去を命じられたのは、性的指向に基づく差別で憲法の「法の下の平等」に反するとして、国に強制退去処分の取り消しを求めて提訴した。
男性は1992年に留学で来日し、パートナーと知り合って94年から同居を始めた。95年にエイズウイルス(HIV)の感染が分かり、パートナーの支えで治療を受けてきた。パートナーが抑うつ的になって働けなかった時期は、男性が家計を支えた。
同性愛への理解がない台湾の家族と疎遠なことや日本なら治療が受けられることから、94年にビザが切れた後も不法滞在を続けた。男性は「兄弟を装い、24年間息を潜めるように生きてきた。健康保険に入れず、治療途中で強制退院した経験が何度もある」と話す。
男性は2016年、職務質問で不法滞在が発覚し逮捕された。不法滞在者に対し、人道的配慮などから法相が裁量で判断する「在留特別許可」を申請したが許可されず、訴訟を起こした。訴訟の弁護団長を務める永野靖弁護士は「異性カップルの場合、事実婚状態で在留特別許可を認めないのは違法とする裁判例もあり、男性も認められるべきだ」と主張している。
●「特定活動」って何
そもそも、同性カップルは「在留資格」を得にくい現実がある。
配偶者を対象とする主な在留資格には、「日本人の配偶者等」のほか、就労などのために日本に滞在している外国人の配偶者や子に認められる「家族滞在」がある。しかし、同性婚の場合はこれらが認められず、大使の同性パートナーなどは「外交」「公用」、それ以外は「特定活動」として申請することになる。
ただしこれも、同性婚が認められている国の人同士に限られる。日本人と外国人が海外で同性婚している場合、日本人が帰国にあたって外国人の配偶者を帯同しようとしても、「特定活動」の在留資格が下りない。就労や留学など、自分で在留資格を得る必要がある。
10日に東京都内で開かれたシンポジウムでは、問題に直面しているカップルが困難な現状を語った。
宮本周平さん(24)とヘルゲ・ミヤモトさん(53)はドイツで出会って2年前に結婚し、里子も育てていた。最近、宮本さんが仕事の都合で日本に戻ることになり、ヘルゲさんも観光ビザで来日したが、日本語が全くできないため、就労ビザを取得するのに苦労しているという。周平さんは「ドイツでは家族として当たり前に暮らせたのに、日本で仕事が見つからなければ離ればなれになってしまう。こんな人権侵害はない」と憤る。
●「将来が描けない」
平奈津子さん(41)とロザリンさん(30)は、約5年前に知り合って米国で結婚。ロザリンさんは健康上の理由によりフルタイムで働けない時期があり、毎年就労ビザの申請が通るか不安を抱える。「明日にも家を失うかもしれないと怖くて、将来も描けない。異性のカップルと同じように、安心して暮らしたいだけなのに」と話す。
同性婚をめぐっては、宮中晩さん会の国賓に同性パートナーが出席することについて、自民党の竹下亘総務会長が「私は反対だ。日本国の伝統には合わない」と発言し、その後「言わなきゃよかった」と反省を口にしたのが記憶に新しい。先進7カ国(G7)の中で、同性カップルの法的保障がないのは日本だけだ。
明治大法学部の鈴木賢教授は「同性婚は今や国際社会の中で標準装備。日本だけが蚊帳の外に居続けるのは不可能だ」と指摘。「同性愛に対するスティグマ(社会的烙印(らくいん))をなくすためにも、婚姻の平等化が必要だ」と話している。
=2017/12/26付 西日本新聞朝刊=