んなこと言いだしてる先輩も、今日は私服姿でオフモード
ていうかなんだそのシャツ。『ありま天国』って。姐御に見つかったらまたカワイイされるぞ

「つっても、何弾くか………」

と、頭の中でなにやっかな………と検索していると
トントントン、と。プレハブの戸を叩く音
なんだ、誰が来たのか。まさか覇王のチームが追加で何か持ってきたのではあるまいな
もしそうだったらお返しの品用意せねば。そう思って、いったんギターを置いて立ち上がる

「はいはい、どうぞー。どちらさんッスか」

扉に向かってそう声をかけ歩み寄る
するとその声に応えてか、戸は開かれ………

「………………」
「………………」

えっと

「げ」
「本当に失礼ですね貴女」

そこにいたのは、割と見慣れた顔で

「疲れた顔してますね。芦毛します？」
「謎の動詞作るんじゃねーッスよ」

うん、まぁその
妖怪芦毛はどこだ………もとい、ジャスタウェイだった

●

「夏バテ対策？」

とりあえず、この妖怪を迎え入れて
適当な話と言う名のつつき合いをしばらく繰り広げてから、彼女が口にしたのはちょっと意外な要件だった

「ええ。夏バテ対策をひとつ、ご教授願えないかと」
「……とりあえず、なんでそんなこと」
「誰か熱中症でも出たプイ？」

プイ先輩の言葉を聞いて、ジャスタウェイは頭を抱える。ああ、これマジでそのパターンか

「実は、チームの先輩がこの季節外れの暑気にやられて熱中症になりかけまして。回復はしたのですが、若干早めの夏バテで食欲がなかなか戻らないものでして」
「ありゃ。そりゃ大変ッスね」
「それで、こちらのチームは貴女が色々気を遣っているでしょう。何かいい対策でもあるのではと思いまして。こうして、お願いしに参った次第です」

またプイ先輩以上の中々の無茶振りだ。そんなこと、突然言われてもどうすればいいのか
確かに色々気を遣ってはいるけど、特効薬レベルで効くようなもんは………

「あ、それならあのジュースどうプイ？よく飲ませてもらってて、おかげで健康そのものプイ」

なんて、プイ先輩が突然言い出す
なんだ、なんのことだ

「おや、やはり何か対策が？」
「えー？いや、それって………」

わからない。プイ先輩がここ最近よく飲んでるもん………と
そこまで考えて、ようやく答えは出た。ああ、そういうことかと
確かにアレは夏バテ中でもよく飲める。疲労回復にももってこいだろう。そういうことなら力になれるじゃないか

「ちょっと待っててくださいッス。今それ持ってくるんで」
「え、ええ。しかし、本当にそんな秘伝のものがあるとは………」
「秘伝なんて大したもんじゃねーッスよ。ただ、作り置きしておくと便利ってだけッス」

そう言って、キッチンに立つ。開けるのは冷蔵庫、その中にあるペットボトル
それはマジック直書きでラベリングされたしょぼい見た目だが、確かにこれは夏バテにはもってこいだ。糖分その他の補給にももちろんのこと、スイーツにしてもいい
その液体をグラスに注ぎ、炭酸水を注ぎ入れる
これで完成。妖怪の言葉を借りるなら、秘伝のジュースだ

「お待たせッス。さ、どうぞ」
「これは………凄くいい香りですね」
「あ、こっちも飲みたいプイー」
「はいはい。ちょっと待っててくださいッス」

そう言ってキッチンへと戻る。プイ先輩め、だったら一緒に言えというのに
その間、妖怪はそれを一口飲んで………

「………梅ですか！！」

一言で、答えを言い当てた

「ご名答ッス。こいつは梅のシロップッス。それを炭酸で割ったものッスよ」
「うーん、毎度ながら美味しいプイ。暑い日でもさっぱり飲めて、おかげで夏バテ知らずプイ」

夏バテ知らずて。そんな特効薬レベルのものではないのだが
ただ、効果があるのは確かだ。それは今一口飲んだジャスタウェイもよく理解した様で

「なるほど、梅のシロップ……これはどのようにして調達しているのですか？」
「調達っていうか、作ってるッス」
「作るって………これを、ですか？」
「去年も今年も手伝ったプーイ。おかげで味わいもひとしおプイ」

すっかり満喫モードのプイ先輩は置いておいて
まだ未開封の保存瓶を持ち出して来て、それを見せてやる
その中には梅の実、それと溶けかけの氷砂糖がびっちり詰まっていて。まさに熟成中といった風貌だった

「これは今年作ったんでまだ途中ッスけど、よければ作り方教えるッスよ」
「それは是非。これなら、チーム全体の夏バテ対策に役立てそうです」
「そんなら説明するッスよ。メモの準備はいいッスか？」

梅シロップの作り方

梅　　　１ｋｇ
氷砂糖　１ｋｇ

①梅酒用の保存瓶を熱湯消毒もしくはアルコール消毒して水気をしっかりとっておく
②買って来た梅の実のヘタを全て竹串か爪楊枝でとる
③梅の実を全部洗って、綺麗に水気を取る。この時、ヘタの部分まで拭くのを忘れずに
④梅と氷砂糖で層を作るようにして瓶に詰めていく。この時梅を傷つけないように
⑤冷暗所で保存する

「以上ッス」
「………シンプルですね。思った以上に簡単に作れそうです」
「青梅の時期もそろそろ終わりなんで、作るなら今ッスよ。道の駅とか回ってみるといい青梅売ってるんで」

まあ、要するに清潔にした青梅を清潔な瓶で氷砂糖と一緒に保存しろってだけなんだけど
これで三週間ちょっと経つと、いい感じのシロップになる。あとはシワシワになった梅を取り出して、割って飲むなりゼリーにするなり好きなように楽しめばいい

「去年、これやってて梅酒の密造と勘違いされてバンブーポリスのガサ入れ受けたッスねぇ………」
「あー、あったプイね。二人して悪ノリして、だまして梅シロップジュース飲ませたプイ」
「何やってるんですか貴女たち………」

呆れた顔の妖怪だが、まぁうん。それについてははい、何も言い返せません
だって楽しかったんだもん。普段人をからかう側になることあんまりないし

「今年も随分多めに漬けたんで、よければ少し持っていくッスか？今から漬けてたんじゃ肝心のその先輩の夏バテ対策に間に合わないっしょ」
「それは助かります。是非、少し分けていただけると」
「とりあえず瓶一本持っていくッスよ。ああ、それと」

思い出したのでまた台所をごそごそ漁る。梅シロップもいいが、これもいいだろう

「梅干しも少しどうぞッス。シンプルに効くッスからね、これ」
「………まさか、これも自分たちで作ってるのですか？」
「その通りプイ。今年もしっかりお手伝いしたプイ」

そうそう。プイ先輩も巻き込んで、みんなで頑張って漬けました。これは去年のだけどね
なんだかんだ言って、夏バテの特効薬に一番近いのはこの梅干しかもしれない。去年は姐御が夏バテしちゃって、定期的にこれ食べてたし
よく売ってる甘い梅干しがあまり得意じゃないので、自家製の梅干しはバチバチに酸っぱい物に仕上げてある。プイ先輩とか毎回食べるたびにお口がミッフィーになってるし

「こいつの種をとって身を刻んで、ご飯に混ぜ込むッスよ。それでおにぎり作れば暑くても食欲沸きやすいんで」
「………今回は本当に、何から何までお世話になってばかりですね」
「このくらい別にいいッスよ。そっちにもなんだかんだ世話になってますし」

梅シロップと梅干を受け取って、ジャスタウェイは頭を下げてくる
まぁ、今からの時期夏バテ・熱中症対策はいくつあっても足りたもんじゃないからなぁ………と。うちでも経口補水液とかの在庫確認しておかないと
ああ、そうだ。トウモロコシのお礼に、覇王の農場……もといチームにもお裾分けしようか。夏場の畑仕事は相当な重労働だろうし

「今度改めてお礼に伺いますよ」
「気にしないでいいッスよ。こんなもんお互いさまッス」
「ぷっきゅ、こっちも去年夏バテになった時にお世話になったプイ」
「あーたの夏バテは本当に酷かったッスからね………」

この人、去年はマジで溶けたスライムみたいになってて大変だったんだよな……
ありとあらゆる夏バテ対処法試してかろうじてウマ娘に戻したけど、しばらくお仕事の方にも支障出てたみたいだし
あの時ばっかりは上の方々に感謝されてもいいんじゃないかってくらい頑張りました、はい

「そろそろ本格的に暑くなるッスからね。プイ先輩も気を付けてくださいよ」
「去年みたいなことにはならないプイ。そのためにも梅ジュースおかわりプイ」
「本当に仲がいいですね貴女達」

その後、その他の夏バテ対処法などをジャスタウェイに教えながら時間は過ぎていって
トウモロコシ食べたり、ジュース飲んだり、梅干し試食させてみたり
なんだかんだ、静かな休日は賑やかになってしまったけど。それなりに、こちらも楽しく過ごせたのだった

●

「　償う人の背に　降り続く雨　きれいな水をあげよう　望むまま　」

翌日のプレハブ小屋にて、ギターを弾きながらちょっと静か目に歌う
プイ先輩からの改めてのリクエストを受けて歌っているが、なんかこう、やっぱ気恥ずかしい
当のプイ先輩はニコニコしながらじっと見てくるし。だから恥ずかしいんスよと

「　戸惑う人の目に　吹き付ける風　見えぬなら閉じればいい　手を取ってあげよう　」

と、ここからサビ……と言うところで

「ん？誰か来たプイ？」

トントントン、と。戸を叩く音
ギターを置いて立ち上がる。………正直助かった

「はいはい、どちらさんッスか」

言いながら戸に向かって歩み寄って。すると、戸の向こうから声がする

「失礼します。今両手がふさがっていまして。開けていただけないでしょうか」

………酷く聞き覚えのある声だった。具体的には、昨日
はいはいと言いながら戸を開けると、そこには案の定、妖怪芦毛はどこだの姿が
ただ昨日と違うのは……彼女が、両手で『それ』を抱えてきているとことだろう

「どうも、昨日は大変お世話になりまして」
「いやいや、そんなお気になさらずッス」
「入っても？」
「え、ええ。どうぞッス」

ジャスタウェイは『それ』を抱えたままプレハブに入ってくる
それを見て、プイ先輩も目を剥いた

「わ、大きなスイカプイ！！」

そう。彼女が抱えてきたのは、片手ではとても持てないだろう大きさの立派なスイカ
それは大きなスーパーなんかでもなかなかお目にかかれない立派なサイズで、思わずめが釘付けになってしまった
彼女はそれをテーブルに置いて、ふうと一息ついてから話し始める

「改めて、昨日はありがとうございました。おかげさまで、先輩の夏バテもなんとかなりそうです。教えていただいたおにぎりと梅シロップが本当に効果的でした」
「おお、そりゃよかったッス。早速試したんスね」
「明日、チーム総出で梅シロップも作ってみようという話になりまして。これで今夏は乗り切れそうです」

そこで、と前置きして

「うちのチームからのお礼といいますか。差し入れのようなものです。こちらをどうぞ」
「どうぞって……こんな立派なの、いいんスか？」
「もちろんです。皆さんで召し上がってください」
「こんな立派なの見たことないプイ」

プイ先輩はもう目を輝かせてスイカを見てる。いや、わかるけどね。こんな立派なの、マジで初めて見たし
これはみんな喜びそうだ。冷やしておいて、あとで美味しくいただくとしよう
しかしこんなものをいただいてしまって、逆に申し訳ない位だ。何かないか、と考えて

「折角ッス。ちょいお茶していいかんッスか？昨日の今日ッスけど、あの後梅関係で美味しいもん作ったんで」
「おや、いいのですか」
「もちろんッス。今準備してくるッスよ」

昨日あの後、興が乗ってちょっとしたお菓子を作ってみたのだ
焼き立ても美味しいが一晩二晩寝かせても美味しいものなので、今日のお茶請けにはぴったりだろう
沢山作っておいてよかった。だってみんなたくさん食べるんだもん

「どうぞ、梅ジャムのパウンドケーキッス。お土産分もあるッスよ」
「来たプイ来たプイ。これ昨日すっごく美味しかったから今日もお願いしようと思ってたプイ」
「梅ジャムの………なるほど、香りがすごくいいですね。これは生地に練り込んだのですか」

焼き加減が難しかったけど、何とか美味しくできてよかった
さっくり簡単に切り分けて、皿に乗せて二人の前に出す。ついでに紅茶も淹れようか

「そういえば先ほど聞こえてきたのですが、貴女ギターなんてできたんですね」
「げっ。聞かれてたんスか」
「時々聞かせてもらってるプイ。最近聞けてなかったからおねだりしたプイ」
「本当に器用ですね貴女………」

紅茶を淹れながら耳をへちょらせて塞ごうと頑張る
ええい、まさか聞かれてしまうとは。簡易建築たるプレハブ小屋に防音性を求めてもそりゃ無駄なのだけど、恥ずかしいことこの上ない
どうにかして記憶を消せないか………なんてことを考えていたら、はいっと、目の前に突き出されるギター

「途中だったし、また聞きたいプイー」
「マジで言ってんスか」
「おや、それはいいですね。私も興味があります」

何で乗り気になってんだこの妖怪
ええい、受け取ってしまったものの、どうすればいいのか。このままシラを切って逃げるか、それとも…

「………一曲だけッスよ」

我が身の、なんと甘いことよ

「わーいプイ。じゃあじゃあ、さっきの曲がいいプイ」
「私も先ほど途中まで耳に入ってましたし、その曲で是非お願いします」
「一曲ッスよ？一曲だけッスよ？」

念を押して、さらに念を押してからギターをスタンバイする
何回か弦を鳴らして音を確かめ………何回か深呼吸して
ゆっくりと、確実に。弦を鳴らし始めた

「　償う人の背に　降り続く雨　きれいな水をあげよう　望むまま　」

こうして、昨日の今日で梅尽くし、さらにはまさかの二人の眼前での演奏会なんて予想もしない展開にはなってしまったけど

「　僕を知っているだろうか　いつも傍にいるのだけど　My name is LOVE　ほら何度でも　僕たちは出会っているでしょう　」

まぁ………少なくとも。暇を持て余していた初夏の休日は、なんだかんだ退屈しない二日間になったのではないだろうか

「　そう　遠くから　近くから　君のことを見ている　」

そんな事を思いながら、ギターを弾いて、少し控えめな声で歌う
………アンコール、されたらどうしようか。ちゃんと断れるだろうか
そんなどうでもいいことを、考えながら

以上。夏バテしかけたので酒飲んで舎弟した

暑かったからね…お大事に…

なんだかんだ仲良いなこの妖怪

舎弟も長いこと続いてるな

オルプイもうプレハブ小屋で余生過ごしてる夫婦じゃん…

>以上。夏バテしかけたので酒飲んで舎弟した
酒じゃなくて梅シロップ飲めや！

舎弟文庫は俺にも良く効くから度々補充させてもらってる
それこそ梅シロップソーダに重なるようなものだな

確かに梅干しは酸っぱいものに限る

梅シロップは自作もいいけど
お気に入りの梅シロップを見つけたときが本当に嬉しい
吉田屋さんってところの梅シロップは今年も愛飲してる

ユーイチ会の先輩って誰だろう
ラインクラフトとかシーザリオあたりだろうか

>ユーイチ会の先輩って誰だろう
>ラインクラフトとかシーザリオあたりだろうか
😭

>>ユーイチ会の先輩って誰だろう
>>ラインクラフトとかシーザリオあたりだろうか
>😭
一番想像ついてダメだった

>>>ユーイチ会の先輩って誰だろう
>>>ラインクラフトとかシーザリオあたりだろうか
>>😭
>一番想像ついてダメだった
夏バテしてそうだな…

基本的にユーイチ会って優等生ばかりのイメージだもんな…
そりゃ😭だわな…

でもユーイチ自身はSETOの女トレーナーに転生してる…

📞くんもやりそうだけどな…

>📞くんもやりそうだけどな…
やるかやらないかで言えばやる

>>📞くんもやりそうだけどな…
>やるかやらないかで言えばやる
トレーナーににんじんのすりおろし食べさせてもらってそう…

まあでもコンくんは後輩だから…

ｷﾀ━━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━━ !!!!!

どうあがいてもチョーヤには勝てなかったんだ
なあ…ジンで漬けて炭酸割りしようや…

>No.1068655550
ジャス！！

自作のシロップは砂糖どれだけ入れるかが難しくてな…
あと梅の質

>どうあがいてもチョーヤには勝てなかったんだ
>なあ…ジンで漬けて炭酸割りしようや…
風紀委員ッス！床に手をついて大人しくするッス！

>>どうあがいてもチョーヤには勝てなかったんだ
>>なあ…ジンで漬けて炭酸割りしようや…
>風紀委員ッス！床に手をついて大人しくするッス！
尻を突き出せばいいのか？

>尻を突き出せばいいのか？
竹刀でぶっ叩かれるだけだろ…

>>尻を突き出せばいいのか？
>竹刀でぶっ叩かれるだけだろ…
ご褒美じゃん

>>尻を突き出せばいいのか？
>竹刀でぶっ叩かれるだけだろ…
笑ってはいけないプレハブ小屋…

>笑ってはいけないプレハブ小屋…
デュランダルがセイバーのマネとかしてたら耐えられないと思う

お