直木の魂が消えようとしている時、思い残すことがないようにと魚住(松山ケンイチ)が身を呈して、直木を自分に乗り移らせる。
しかし、直木ははっきりと言葉で思いを伝えなかった。
悠依は魚住に言う。
「ちゃんとした お別れなんて ないのかも。たぶん… みんな こんな感じで 生きてく」。
悲しくも穏やかに言う悠依の言葉は、噛みしめると涙が出そうになる。誰かを亡くした悲しみを持つ人々の心に寄り添う言葉。「毎日 仕事がありますし、日常に戻ると案外 前から こんな感じだったなって」と話す悠依の感覚もリアルなところだろう。
しかし、亡くなった人を忘れるわけではないし、存在が小さくなるわけではない。もらった言葉だって、ちゃんと心に刻まれ、それがまた誰かの支えになる。
意識を取り戻した莉桜(香里奈)。昔から知っていた希也や仲の良かった涼香が亡くなり、直木も死んで、「私だけが… こうしてる」と話す。すると悠依は言った。
「直木が 前に言ってた。無事でいることに罪はないって」
当たり前だと思っていた日常が突然失われてしまい、残された人に寄り添う言葉。でもこの言葉、直木が悠依に言っただろうか?第7話で悠依が襲われ、魚住が助けた後、自分だけが無事でいることに罪悪感を持つ悠依に直木は「無事でいることに何の罪があるんだよ」「堂々と幸せでいろよ!」と声を荒げたが、「自分で言ってください。そんな魂のこもった言葉は」と魚住はつっぱねて、悠依に伝えなかった。それでも悠依は「直木の言うことは 全部 私 分かります」と言った。ちゃんと伝わっていた。直木の精神はすでに悠依の中にあるのだ。そして、「莉桜ちゃんが生きてくれて また話ができて嬉しい」と現実にある幸せに目を向け、ずっと言いたかった感謝を言葉にした。
「私ね 幽霊は いる…って思うことにした」というハヨン(シム・ウンギョン)の言葉も寄り添う。悠依に向けるハヨンの笑顔があまりにも可愛くて、そんな笑顔がまわりにあれば、この先たくさん笑えるようになるんじゃないか…そう思わせてくれる。
それでも…
ふとしたときに押し寄せる大きな悲しみ。1人で街を歩く悠依が立ち止まって、また歩き出す姿が悠依の心情そのものなのだろう。
特異な設定に驚き、それによって笑ったり泣いたりしながら事件の真相を追う中で、描かれる心情はとてもリアルで人間的で、伝えようとしているメッセージは優しく温かい。そんな『100万回 言えばよかった』の結末とは…?