『100万回 言えばよかった』はラブストーリーであり、リアルな人間ドラマだ…
「ん?どゆこと?」「えっ?!?うそ!!」と視聴者に衝撃を与えた爆イケの佐藤健。「生き返った?!?」「全然わからない」「結末が見えない」と、視聴者は最終回を前に混乱した。ただそのイケメンぶりだけは理解できたという声もある。事件については大きな進展を見せた第9話だったが、第9話で胸をしめつけたシーンとラストの直木(佐藤健)の姿を見て、このドラマの第一報が出たときのことを思い出した。
(以下、第9話のネタバレあり)
“当たり前のことは、決して当たり前ではない”
“その当たり前がどんなに愛おしくかけがえのないものか”
誰もが、一番愛している人にきちんと「さようなら」を言えないまま、お別れすることになりませんように…。
殺された直木の“思い残し”。それが強烈に伝わってくるのが、直木が死に際に手を伸ばして掴んだ花。遺体で見つかった直木が左手に握りしめていたセントポーリアだ。
死ぬ直前の記憶がよみがえった直木が、自分の左手を見つめる。
英介(荒川良々)に対峙していた鋭い目から、ふっと力が抜け少しぼんやりする。心の奥にあるいちばん大事な部分に触れるような儚く無防備な表情。かけがえのないものを失う無常さや悲しさが漂う。
息も絶え絶え見つめた紫の花は、幼い頃里親の家で一緒に植えて、悠依が「また咲くといいね」と笑顔で見つめた花。直木が大事に育て、やがて花が咲くと悠依は「幸せだなぁ」と愛おしそうに花を見る。
セントポーリアの花言葉は「小さな愛」。「悠依 全然(お水)あげてなかったじゃん」「えへへ、忘れてた」と言い合いながら並んでしゃがんでいる二人の後ろ姿は、日常のかけがえのない幸せな景色だ。
死の直前、その花をおぼろげに見つめる直木の目からは涙が流れる。
思い出したのは前日のこと。翌日の悠依の誕生日に会う約束をたどたどしく取り付けて、もうプロポーズだとバレバレで、悠依はニヤつきながら「行く」と答える。その笑顔は最高に幸せそうでキュート。二人は明るい未来へ進むはずだった。
「行かなきゃ…」「行くから…」と必死にその花に手を伸ばす直木。やっと花を掴んだ直木の左手が涙を誘う。一番愛している人に伝えたいことがあった。それがやっぱりこのドラマを突き動かしている。
同時に、現実も痛感する。