生きること、死ぬこと。犯罪や事故。いい人、悪い人とのめぐり合わせ。
重たく、切ない内容であっても、ドラマは常に「前へ進もう」としてきた。最終回の届け方も、笑顔で過ごす時間がたくさん描かれた。マカロニえんぴつが歌う主題歌『リンジュー・ラヴ』が切ない歌詞でも明るくテンポよく力強くあるのも、そんなメッセージの一つなのではと推測する。
「世の中捨てたもんじゃありませんな」
「短くても その人の宝物みたいになる そういう出会いってあります」
散りばめられたセリフたちが、今からでも遅くないと背中を押してくれる。
視聴者号泣のラストシーンは、このシーンだけ見たとしても反射的に涙が出るのではと思ってしまうくらい、井上真央と佐藤健の名演に心揺さぶられる。
海辺の流木に座った二人の背中が並ぶ。
直木が「これは絶対言う」と決めていた再会の喜びと感じていた幸せを伝え、少し辺りが明るくなると悠依は「もう行くの?」と問う。
何度も「悠依」の名前を呼んで、「ありがとう」「ごめん」そして「愛してる」を伝える直木。途中で直木が「やっぱ照れる」と悠依を笑わせてから「海でも見ててよ」と言うと、悠依は「いいよ」と言う。“言わなくても分かる”二人なのだから、視線を外す瞬間、もう直木の顔を見ることはできないと分かっているはず。「たぶん全部は言い切れない」それでも直木は何度も言った「愛してる」。悠依が「もういい 分かった」と言うくらい。最後の「悠依 愛してる」にはこのドラマ全部の優しさが詰まっているかのようだった。やがて日が昇り、流木に座っている背中は一人になっていた。
口笛が一回鳴った。
悠依は顔を上げて少し笑った。
“Yes”を表す1回の口笛が、「そう。大丈夫。」と背中を押してくれている。
二人が見せてくれた最後の一日、ドラマがくれた優しさを胸に、前に進もう。
文:長谷川裕桃
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