金曜ドラマ『100万回 言えばよかった』(TBS)は最終回放送から1週間が経ち、放送のない金曜日に「100よかのない金曜日がこんなに寂しいなんて」「ロスから抜け出せない…」「3人のわちゃわちゃをまた見たい」という声が相次いだ。
1回目より2回目、2回目より3回目…
もうストーリーは知っているのに、感動が深くなる。分かったうえで見てみたくなる表情がある。一度セリフを文字に書き留めてみると、さらに泣けるのはなぜだろうか。
“最後の時間”なのだから、切ないし悲しい。それでも温かい気持ちになれたこのドラマの終着点。最終回には、「優しさ」が目一杯つまっていた。これからを生きる人々に贈るエールのような最終話をもう少し噛みしめていたい。
(以下、最終話ネタバレあり)
「明日なくしてしまうかもしれない何気ない幸せを 私たちは生きてた」
悠依(井上真央)と直木(佐藤健)が過ごした最後の一日。それが、このドラマの答えなのかもしれない。
声も聞こえるし触れることもできる。頬を触ってぬくもりを確かめて、二人で美味しいごはんを食べて、魚住さん(松山ケンイチ)を驚かせてデレデレさせて、買い物をして、手をつないで歩いて。
すっと“こうしたかった”何気ない幸せを生きていく。今までと違うのは、直木が「すげえ幸せ」「似合ってる」と素直に言葉にすること。「言ってもらって嬉しくない人なんて いない」。直木の伝える少しの言葉で悠依の笑顔が上乗せされる。井上の演じる悠依のとびきりの笑顔を見ていると、悠依の母親の口癖のように、ちゃんと言葉にして伝えることで少しふくらむ幸せを掴みながら生きたいと願う。
そんな二人のことを「ずっと見てたい」魚住さん。
視聴者も大好きでたまらない魚住さんだったら直木がいなくなったあと悠依と…なんて、そんな未来はドラマでは描かない。最終話放送日の3月17日、ドラマの中で迎えた「午後10時37分」。リアルタイムと合致した物語の時刻。その先の未来は託されもしないし、選択肢を塞いだりもしない。
3人でカードゲームをしている時、直木が「安心だし 魚住さんだったら…」と悠依を託すようなことを言うと、悠依は「そういうの あんまり好きじゃない 何か 勝手に託されるとか」と怒る。直木の本音は「相手が誰でもイヤ」。でも、「自分のいない未来のこと考えて気 揉むとかバカらしいし あなたの人生だ 好きにしろよ」「そうする」。
残された者の人生は、縛ることも縛られることもなく、その人の意志で決めればいい。ただ、「鳥野直木がいない世界なんて意味わかんない」と神様に怒鳴りたいのは悠依も魚住も同じで、振り返らずに手を振る直木を見送る魚住の表情は、その一瞬だけで涙を誘うほどだった。
「この先の未来 悠依がずっと笑っててくれるなら 俺の人生 全部意味あった」
海辺で直木が悠依に言ったこの言葉。何度聞いても、何度思い出しても、涙が出そうになる。直木の言葉を通して伝えられるメッセージは、優しくて強い。この先の幸せが愛した人の人生を肯定する。どう生きるか、それは好きにすればいい。ただただ幸せを願う強くて深い愛情。こんなの、どうやったって「笑ってられるように 頑張ってみる」しかない。佐藤が演じる直木の優しい表情と声が、強烈に背中を押している。
でも、なかなか思うようにいかないのが人生だ。