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(万太郎)ここまで来た。
あと ちっと…あとちっとで 証しができる。
この国の植物学にわしが 最初の一歩を刻むがじゃ。
(竹雄)これを… 万太郎が?
(大畑)万さん 夜食 食わんか? うどん のび…。
あ… 大将 勝手に すみません。こちら わしの相棒の井上竹雄と申します。
万太郎が お世話になっちょります。
いや… 助かってるのは こっちだ。
ハハ 熱心で 器用で 働き者でえ~ しかも お金…。
あ… どうだ? あんたも 夜食 食わんか?あっ いえ わしは…。
(大畑)イチ! イチ! うどん追加!
大将。うん?大将 お話があります。えっ?
お~…。やっと まともな一枚が刷れるようなりました。
ほんじゃき…。
お… 辞めるのか?
えっ? あっ いやいや…。(イチ)あんた。 うどん もう ないけど…。
うどんなんか どうだっていい!(万太郎 イチ)えっ?
万さんが 辞めるってよ!えっ?ええっ!?
そりゃあ 困るよ!そうだ!
うちが不満かい?いやいやいや… 不満らあ! いや…。
うどんがないなんて 嘘ついて ごめん。本当は あるよ。 今 ゆでるから。
いや うどんは えいですき!あっ じゃあ そば ゆでるよ。
そうじゃない…!おい 一枚ぐらい刷ったからってな辞めるもんじゃねえんだよ!そうよ うちにいてよ!いや 違う…!
(佳代)この人 うち 辞めるってよ!ああ…!
(宮本)おい 辞めるのか!?(前田)イワさんが 寂しがるぞ!
(岩下)寂しいぞ!ち… 違います! 聞いてください!
聞いてください!
仕事を… 仕事を注文いたします。
えっ?植物学会の会報誌。
その図版をこちらで 刷らせてもらえませんろうか?
置き土産かい?いえ。
じゃあ やるよ。 ねえ あんた。
ああ~ も も… もちろん。
おい イワさん 印刷機 いつ空いてる?
えっ? え…?あっ 俺 日取り見てきます!
(宮本)じゃあ 俺 石 準備します!
うまいもんだね。おやっさん 帳簿 どこやったんすか?
♪~
♪「言葉足らずの愛を 愛を貴方へ」
♪「私は決して今を」
♪「今を憎んではいない」
♪「命ある日々 静かに誰かを 愛した日々」
♪「空が晴れたら 愛を、愛を伝えて」
♪「涙は明日の為 新しい花の種」
♪「空が晴れたら」
♪「逢いに、逢いに来て欲しい」
♪「涙は枯れないわ 明日へと繋がる輪」
(藤丸)ふう…。 なあ 原稿って自分で英訳しなきゃ 駄目?
(波多野)僕は やらないよ。自分の分で 手いっぱい。
波多野~! キュウリ あげるから!
キュウリは もらう。うん。
なあ 万さん! 万さんも 一息入れたら?
うんにゃ もうちっと…。
うう…。
花は クサボタンに似ちゅうけんど…。
万太郎は 学会誌の準備をしながらも標本の分類と整理も 進めてきました。
そして 今日 ついに…。
はあ…。
(波多野)一息?うん。
キュウリ 要る?やっぱ 塩振りたい。塩のないキュウリなんてさ…。
終わった…。(藤丸)そう 終わってるよ。
やっと 終わった~。
えっ!? 標本の分類? 全部終わったの?
この教室の全部!?うん 全部。
お~! おめでとう!おっ… ハハハ…!
アハハ…。
(笑い声)
お~ やったな!ついに 終わったか!
万さんが来て 4か月か。 やり遂げたな!
いや~ もっと早う終わらせられると思うちょったけんどいや~ 夏まで かかってしもうたのう。
いや そりゃあ 土佐から持ってきた分も一緒に作業してたろ?
うん。 両方の標本を突き合わせたち名前が分からんもんが こんなにあった!
つまり ここに新種の植物があるかもしれないってことだ?
よし 教授に 報告してくるき。うん!
いよいよ ロシアに送るんだな~!
でもさ…。うん!
万さん自分の標本も 一緒に送るつもりだろ?
うん…。教授が許すかな?
(藤丸)どうだろう…?
失礼いたします。
あ…。
出直しましょうか?
(田邊)いや こちらの話は 終わったところだ。
あ…。
ほんなら ご報告いたします。
先ほど 未分類の植物標本の検定作業が全て終わりました。
(徳永)全て?
いいかげんに検定したんじゃないだろうな?
いえ…大窪さんにも 確認してもろうて進めてまいりました。
後ほど 助教授にも…。言われなくても 確認する。
(田邊)で ロシアに送る標本は 何点あるんだ?
この植物学教室のもんは103点ありました。
そうか…。
マキシモヴィッチ博士に問い合わせてみよう。
はい。 あっ その件についてお願いがありますけんど…。
わしが 土佐から持ってきた標本で学名が分からんもんが 52点ありました。
その52点も一緒に送っていただけないでしょうか?
ず… ずうずうしいにも 程があるぞ!
お前は 教授の口利きで自分の標本も確かめようというのか?
この教室にもきっと お役に立てると思います。
だが お前は 一個人だぞ!
お前は 個人の分際で 何の道理があって自分の標本をロシアに送れると思うんだ?
いや… そりゃあ教授が なんとか こう…。
無礼千万!暑苦しいぞ 徳永君。
この部屋で 四字熟語は やめたまえ。
(徳永)教授 やはり こいつは追い出すべきです。
で 槙野君…。はい。
私の答えは 分かってるんだろう?
はい。
田邊教授なら わしの標本も一緒に送ってくださいます。
(英語で)
博士に手紙を書く。これも まとめておいてくれ。
はい。 ありがとうございます。
おい 槙野 おかしいだろ!?
教授! 槙野が つけあがります。
いや 私は…。つけあがってるだろうが!
いや それは ただ その…田邊教授にとって 利があることですき。利がある?
土佐のfloraが完成したら 田邊教授がこれから西日本で採集を始められる時にきっと お役に立てます。
田邊教授にとって 利があることは教授は うなずいてくださいます。
それが たまたま わしにとっても利がある。
たった それだけのことですき。
徳永君 言ってるだろう?
At the heart of the matter,only one thing is important.
「核心は ただ一つ」…。
教授にとって 利があるかどうか。
君は 話が早くて 助かる。
私と君とは よく似ている。
ありがたいお言葉…。(田邊)フッ。
時に 学会誌は どうなった?
進めちょります。印刷の算段も 整いつつあります。
期待してるぞ。ありがとうございます。
失礼いたします。
教授 さすがに… さすがに!
槙野の言いなりでは ありませんか!?
学会誌を自主的に作ってくれている。助かるじゃないか。
権威を失墜させるものだったらどうするんです?
水準に達していれば 認める。
が そうでなければ…学会の名を かたって出されては困るから…一冊残らず燃やさせる。
無論 金も出さない。
燃やす?
ですが 大窪からの報告では…槙野は 石版印刷の技術まで習得したそうです。
授業料まで払って。そう。
原稿集めや構成にも多大な時間を使うんでしょう。
フッ全て 自分が好きで やったことだろう?
そうなのですが…。
学生と 年の変わらぬ者に全てを負わせるのは いささか…。
何だ?
「槙野を甘やかすな」と言ったのは君だろう?
矛盾の塊だな 君は。
はい…。
(柴)なあ 今な 根津の遊郭から大学に通ってるやつがいるそうだ!
(飯島)はあ? よく金がもつな!(細田)おっ そういや三國楼の おこまっていうのが…!おい!
はい…。学会誌の原稿は 書けたのか?
あっ いえ… まだです。
(柴)どうせ 槙野と2年どもが仕切ってるんですから…。
いいから 書け!
槙野!あっ…!
うっ… あ… と 徳永助教授先ほどは どうも。(徳永)何をしてる?
ヒルガオとユウガオが一緒に咲いちゅうのを見ちょりました。
今は 昼と夕方の境目ながですね。
なあ。はい。
問題。えっ? あっ はい。
アサガオ ヒルガオ ユウガオ一つだけ異なるのは ど… ど~れだ?
あ… ユウガオです。
アサガオとヒルガオは旋花科ですけんどユウガオは 葫蘆科で ウリの仲間です。
正解。
はい。
だが 私は ユウガオが好きだ。どうしてです?
「源氏物語」に出てくるからだ。
私は… うう…私は… 日本文学が好きなのだ。
貴様には 分からんだろうが…。いや 私も好きですき。
べんちゃらは いい。
好きです! 特に 「万葉集」!
「朝顔は 朝露負ひて 咲くといへど」…。
「夕影にこそ 咲きまさりけれ」。
何か 知らんけんどおまんらのおかげで徳永助教授と話せたきね。
(まつ)ああ お帰り!(寿恵子)ただいま。
ん… 疲れてるわね。
もうすぐ 発足式だからね。
ああ… 足が痛~い。
ああ… 冷やした方が いいわよ。
手拭い 持ってきてあげる。
ありがとう。
・(まつ)あっ 今日ね 文太さんが秋の練り切り 考えてくれたの!あとで 味見して。
うん。
♪~
ふう…。