【内田雅也の追球】岡田監督は先刻承知の「こんなもん」 原点にかえれ、で理想の「1―0勝利」
スポニチアネックス6/12(月)8:00
交流戦<日・神>勝利に喜ぶ岡田監督ら(撮影・高橋 茂夫)
◇交流戦 阪神1−0日本ハム(2023年6月11日 エスコンF)
阪神監督・岡田彰布は試合後、「まあ、こんなもんやろ」と言った。
何が「こんなもん」なのか。「どこかで1本出ていれば……とか思うけど、負けてる時(連敗中)はこんなもんやろ」という意味である。
放った安打は4本だけだが、実に10四死球を得た。それでも得点は1点だけ。13残塁と「あと1本」が出なかった。
この拙攻がチーム状態をよく示していた。前日、今季初の3連敗を喫していた。チーム状態は開幕後、最悪だったと言える。だから、適時打が出ない、イライラするような試合展開でも岡田は「こんなもん」と平気でいられた。それがシーズンの流れというものだと先刻承知のうえだった。
打線低調のなか、奪った10四死球は今季最多だった。岡田は試合前に言ったそうだ。前日は四球が1つもなかった。「昨日、ゼロやったやろう。だから、フォアボールを選べと言うたんよ」
四球を奪う姿勢は今季の阪神打線を象徴するものだ。キャンプ、オープン戦期間中から「四球を取れ」と言ってきた。選球、待球に、2ストライク後の打撃姿勢……などを指導していると、本当に四球を奪える打線になった。両リーグ最多、214四球をマークする。
岡田があらためて言った「四球を取れ」は、原点にかえれ、という意味がこもっていた。
得点力が下がるなか、先発・才木浩人の踏ん張りは大きかった。何より速球に球威があった。
球威を証明するように相手の送りバントは2度とも投前フライとなった(3回裏・郡拓也、6回裏・細川凌平)。バントすらさせず、ピンチを未然に防いだ。また、ヒットエンドランでも打球は転がらなかった(2回裏・奈良間大己)。いずれも高め速球だった。フライボールピッチャーの真骨頂だったと言えよう。
つい3日前(8日)、仙台で逆転サヨナラ3ランを浴びていた湯浅京己を1点リードで起用した起用も吉と出た。被弾の試合後は「しんどいやろう」と配置転換も示唆していたが、「2日空いたしな」と復活への期待と信頼の起用だった。
守りの野球を掲げる岡田は「1―0勝利」を理想としている。不格好だが結果は1―0。勝てばOKなのだ。また違った味がしたことだろう。
バスに乗り込む際「ふーーーーー」と長い息を吐いた。車窓では北の大地の美しい夕日が輝いていた。 =敬称略=
(編集委員)