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ネットで弁護士を探すことのリスク 多重債務整理の場合は要注意
2022年12月28日19:23
 以前はテレビコマーシャルで大々的に宣伝し、集客していた法律事務所がありました。
 東京に本店があり、広告宣伝費も莫大な費用を掛けているわけですから、地方から依頼をすれば当然に割高になるのですが、この多重債務整理事案の場合には、どうしてもネットで相談する弁護士を探す傾向があります。
 ネットで探すならもっと色々と検索すれば良いと思うのですが、それとは別にネットや電話だけで依頼できる「お手軽」なところに依頼する傾向があります。
 要は弁護士と面談をしないで簡単に依頼ができてしまう、だからネットで探す依存度が高まります。
 それはまた上位に来るところに依頼しがちになります。やはり高額の広告宣伝費を掛けたところということになります。

 こうした法律事務所に依頼するのはリスクが高いことをご存知でしょうか。
 こうした事務所に依頼をした場合の特徴は次のとおりです。
 ①破産ではなく分割弁済を勧める。破産手続は曖昧にしか説明しない、浪費があれば免責不許可の可能性を強調する。
 ②個人再生手続きの説明はしない。
 ③法テラスの説明はしない。
 ④途中で払いきれなくなると破産手続は地元の法テラスに行けという。

 ①②の目的は分割弁済での依頼を受けるためです。
 分割弁済は処理としては定型的であり、事務職員に丸投げでも処理できます。
 着手金も「東京基準」で請求されるので地方の基準から見ると割高になります。
 その際、法テラスの収入基準を満たし、法テラスの利用ができる場合であっても法テラスが利用できることの説明はしません。
 これらは一体のものです。
 破産手続、個人再生手続の場合、管轄は居住地の地方裁判所になるため、東京では全く対応できないためです。そのため、分割弁済でしか依頼を受けず、その分割弁済において返済開始後、滞り払いきれなくなると、破産手続は地元の法テラスに行け、となります。

221226(芽)①
2022年12月26日撮影


 しかし、破産か返済(個人再生を含む)の選択は極めて重要です。破産は借金からの解放であり、一番、生活再建がしやすくなるからです。手続き要件が整う限りは多重債務者にとっては選択肢の1つであり、その説明を曖昧にするのは極めて問題です。
 浪費があっても免責にはなり得ます。もちろん多重債務者自身の反省は必要であり、それを抜きに免責などにはなりませんが、要は経済的な更生に向けた姿勢が重要なのであって、浪費=免責不許可ではありません。
 そうした手続きの運用状況等を説明することなく、また安易に返済した方がいいと勧めるのは弁護士として明らかに営業目的から誘導しているものです。
 なお、破産手続の場合の法テラスの費用は約15万円ほどです。

 返済を選択するにあたっても個人再生手続の説明は不可欠です。
 返済総額を減額できるからです。
 100万円以下であればその額、500万円以下であれば100万円が最低弁済額になりますから(但し、他の精算すべき財産がその最低弁済額を超えない場合)、負債総額が200万円であれば返済総額は100万円になり、それを原則3年で返済するわけですから非常に返済がしやすくなります。
 個人再生手続の場合の法テラスの費用は約17万円が基準です。
 弁護士費用も含め総額で120~130万円で完済になりますが、分割弁済を選択すれば弁護士費用も含めて250万円ほどになります。
 大きな差がある以上、弁護士は両手続についてきちんと説明する必要があります。
 ネットで見つけてくる東京(に限りませんが)の弁護士の場合にはその選択をされては困るので再生手続の説明をしないことが見受けられます。

 以上のようなやり方は、当然に懲戒処分になり得るものです。非常に問題があります。
債務整理事件処理の規律を定める規程(PDF
3条
 弁護士は相談にあたって面談を行うことが義務となっています。
4条
 弁護士は債務整理にあたって種々の手続について事件処理の見通しを説明しなければなりません。
6条
 弁護士は多重債務者の負担を考え、日本司法支援センター(法テラス)の利用についても説明する必要があります。



 今般、このような広告が問題になっているようです。今に限ったものではありませんが。こういったことで誘導されることになります。
「借金減額診断」の広告ダメ?…どの選択肢も「結果が同じ」、弁護士会が指導」(読売新聞2022年11月17日)

ライズ法律事務所

弁護士法人ユアエース

弁護士法人ユアエース

 これに対する1つの見解がこれですが、どう考えますか。
「減額診断」広告に関する当協議会の見解の修正について

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カテゴリ : 消費者問題

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