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ネットで弁護士を探すことのリスク 多重債務整理の場合は要注意

 以前はテレビコマーシャルで大々的に宣伝し、集客していた法律事務所がありました。
 東京に本店があり、広告宣伝費も莫大な費用を掛けているわけですから、地方から依頼をすれば当然に割高になるのですが、この多重債務整理事案の場合には、どうしてもネットで相談する弁護士を探す傾向があります。
 ネットで探すならもっと色々と検索すれば良いと思うのですが、それとは別にネットや電話だけで依頼できる「お手軽」なところに依頼する傾向があります。
 要は弁護士と面談をしないで簡単に依頼ができてしまう、だからネットで探す依存度が高まります。
 それはまた上位に来るところに依頼しがちになります。やはり高額の広告宣伝費を掛けたところということになります。

 こうした法律事務所に依頼するのはリスクが高いことをご存知でしょうか。
 こうした事務所に依頼をした場合の特徴は次のとおりです。
 ①破産ではなく分割弁済を勧める。破産手続は曖昧にしか説明しない、浪費があれば免責不許可の可能性を強調する。
 ②個人再生手続きの説明はしない。
 ③法テラスの説明はしない。
 ④途中で払いきれなくなると破産手続は地元の法テラスに行けという。

 ①②の目的は分割弁済での依頼を受けるためです。
 分割弁済は処理としては定型的であり、事務職員に丸投げでも処理できます。
 着手金も「東京基準」で請求されるので地方の基準から見ると割高になります。
 その際、法テラスの収入基準を満たし、法テラスの利用ができる場合であっても法テラスが利用できることの説明はしません。
 これらは一体のものです。
 破産手続、個人再生手続の場合、管轄は居住地の地方裁判所になるため、東京では全く対応できないためです。そのため、分割弁済でしか依頼を受けず、その分割弁済において返済開始後、滞り払いきれなくなると、破産手続は地元の法テラスに行け、となります。

221226(芽)①
2022年12月26日撮影


 しかし、破産か返済(個人再生を含む)の選択は極めて重要です。破産は借金からの解放であり、一番、生活再建がしやすくなるからです。手続き要件が整う限りは多重債務者にとっては選択肢の1つであり、その説明を曖昧にするのは極めて問題です。
 浪費があっても免責にはなり得ます。もちろん多重債務者自身の反省は必要であり、それを抜きに免責などにはなりませんが、要は経済的な更生に向けた姿勢が重要なのであって、浪費=免責不許可ではありません。
 そうした手続きの運用状況等を説明することなく、また安易に返済した方がいいと勧めるのは弁護士として明らかに営業目的から誘導しているものです。
 なお、破産手続の場合の法テラスの費用は約15万円ほどです。

 返済を選択するにあたっても個人再生手続の説明は不可欠です。
 返済総額を減額できるからです。
 100万円以下であればその額、500万円以下であれば100万円が最低弁済額になりますから(但し、他の精算すべき財産がその最低弁済額を超えない場合)、負債総額が200万円であれば返済総額は100万円になり、それを原則3年で返済するわけですから非常に返済がしやすくなります。
 個人再生手続の場合の法テラスの費用は約17万円が基準です。
 弁護士費用も含め総額で120~130万円で完済になりますが、分割弁済を選択すれば弁護士費用も含めて250万円ほどになります。
 大きな差がある以上、弁護士は両手続についてきちんと説明する必要があります。
 ネットで見つけてくる東京(に限りませんが)の弁護士の場合にはその選択をされては困るので再生手続の説明をしないことが見受けられます。

 以上のようなやり方は、当然に懲戒処分になり得るものです。非常に問題があります。
債務整理事件処理の規律を定める規程(PDF
3条
 弁護士は相談にあたって面談を行うことが義務となっています。
4条
 弁護士は債務整理にあたって種々の手続について事件処理の見通しを説明しなければなりません。
6条
 弁護士は多重債務者の負担を考え、日本司法支援センター(法テラス)の利用についても説明する必要があります。



 今般、このような広告が問題になっているようです。今に限ったものではありませんが。こういったことで誘導されることになります。
「借金減額診断」の広告ダメ?…どの選択肢も「結果が同じ」、弁護士会が指導」(読売新聞2022年11月17日)

ライズ法律事務所

弁護士法人ユアエース

弁護士法人ユアエース

 これに対する1つの見解がこれですが、どう考えますか。
「減額診断」広告に関する当協議会の見解の修正について

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コメント

No title

法律系資格においては依頼者と面談することは必須でしょう。メールや電話ではどうしてもホントのところはわからないでしょう。うまく話を進めて真実を知ることが必須でしょう。男女交際のマッチングアプリのような危険性
があるのでは。
登記も権利者と義務者の共同申請構造ですから、一方の言うことのみ聞いて申請することは非常に危険です。

No title

 マッチングアプリの例え、いいですね。

No title

ついでに言えば所有権移転の登記でも義務者(売主)の意思のみ重視しがちですけど。他人名義を冒用して脱税、執行免脱に使うような場合もあります。冒用された他人がそれを悪用して第三者に転売するような事例もあるし。

事情を知らない第三者が民法94条2項の類推で保護されるにしても
司法書士も責任問われることもあり注意すべきです。

No title

ついでに言えば所有権移転の登記でも義務者(売主)の意思のみ重視しがちですけど。他人名義を冒用して脱税、執行免脱に使うような場合もあります。冒用された他人がそれを悪用して第三者に転売するような事例もあるし。

事情を知らない第三者が民法94条2項の類推で保護されるにしても
司法書士も責任問われることもあり注意すべきです。

ネット時代の弊害

大阪のデパートで、商品に値札が付いているのに、「これいくら?」と客が店員に尋ねた(=アンタの裁量でいくらになるの?)時代より、ネット全盛な現代は、世知辛い世の中になりました。
価格comなる、店の公示価格をまとめたサイトをお客が見たら、最安値を提示した店が、市場総取りです。(米帝大統領選選挙人・州ブロックと同じ)ガソリン価格を毎日降順でソートするサイトのお陰なのか、ガソリンスタンドの廃業が続出です。
訴訟案件を検索窓に入力、ENTERキーを押下すると、請負価格降順で弁護士事務所が出てくる。「依頼」コンボを押下すると、依頼手続き画面に進むようになると、過当競争により半分以上の事務所が廃業です。「過当競争は、健全な市場の育成を阻害する(キリッ!」と、暴利むさぼりを正当化した旧日本航空(廃品トマホークを、岸田日本に高値で押し売りする米帝侵略軍は、もっと悪質)は消滅、法曹界の過当競争を止める手段はありません。
「党に従う道に栄光輝け!従う党に栄えあれ!」の日本愚民に、政策金利いきなり2倍・クリスマスプレゼントをくれた、マリー・黒田・アントワネット「住宅ローン金利が上がって返済がきついなら、全額繰り上げ返済すればいいじゃない?」により、住宅ローン破産案件が続出します。安倍の下痢便で真っ黒田のクリスマスプレゼントで、銀行株が爆上げしました。これは、住宅ローン破産続出で、都市銀行が経営する高利貸し屋「初めてのアコム(三菱UFJ)」、「パッとピッとプロミス(蜜墨)」、「ほのぼのレイク(コロナ壺岸田の古巣長銀=新生銀行)」が大儲けするという、市場の判断です。多くの地銀筆頭株主である、米帝の走狗・ゴールド〇ンコセッ〇スは、ウハウハです。

No title

オンライン診療の是非も一時議論されてましたけど、
論外でしょう。病気は一括りにはできないでしょう。
個体差が大きいですし。基本的な問診、視診、聴診が昔から基本でしょう。「病気を見ずに病人を見ろ」とも言われてますし。データにとらわれず異常を察知するのが優れた臨床医です。

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猪野 亨(いのとおる)

Author:猪野 亨(いのとおる)
1968年生まれ
1998年弁護士登録(札幌弁護士会所属)
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対応エリアは道内(道外も事案により対応可)。土曜、夜間相談は要予約。
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