長野市の自動車販売店「デュナミス・レーシング」を巡る、巨額の詐欺事件。長野地裁は元社長の男に懲役3年6カ月の実刑判決を言い渡した。被害を訴える女性は、「あきらめているが、少しでもお金が返ってくれば」とコメントしている。
運び出される車。2022年5月、長野市青木島の自動車販売店「デュナミス・レーシング」の土地と建物の明け渡し強制執行の様子。
元社長の小谷徹被告は自動車販売名目で客から現金を受け取ったのに、車を納車しなかったとして捜査を受けていたが、当時、連絡が付かない状況となっていた。
その後、2022年10月に警察が逮捕。詐欺の罪で起訴された。
起訴されたのは客5人から合わせて1678万円をだまし取った罪。
ただ、これまでの裁判で検察側は「数十人が被害を受けた。被害総額は数億円に上る」とし、懲役5年を求刑していた。
きょう(6月12日)の判決公判。長野地裁の坂井唯弥裁判長は「経営が破綻していることを認識しながら、新たな顧客から得た金銭を別の顧客への納車費用に充てることを繰り返していて、起こるべくして起こった犯行」。「悪質で刑事責任は重い」とし、懲役3年6カ月の実刑判決を言い渡した。
被害を訴えている50代女性:
「単純にどうしよう。本当にどうしようって思いました」
被害を訴えているうちの一人、長野市の50代女性は2022年1月、NBSの取材に対し、困惑の声をあげていた。
女性は2021年1月下旬に軽自動車を購入する契約を結んだ。
過去にも店で2台、車を購入しており、以前と同様にドライブレコーダーとあわせた代金194万円を現金で前払いした。
しかし、5月予定の納車はいつまでたっても行われず、女性の催促に対しても「コロナ禍で半導体が不足し、生産が遅れているだけ」などと繰り返すだけで、年末には連絡もとれなくなっていた。
女性は今回の判決を受け、NBSの取材に、「顔を見てしまえば怒りが湧きそうなので傍聴に行くのを辞めた」「私たちも安くしてもらえることをいいことに小谷被告を頼っていた点では、今回の事件を助長してしまったのかもしれません。私はもうあきらめていますが、少しでもお金が返ってくるならいいなと思います」とコメントした。
また、同様の手口で130万円の被害を訴える女性は、きょうの裁判を傍聴し、その後、NBSの取材に対し「量刑が軽いのではないか。刑を終えた後、少しずつでもいいのでお金を返してほしい」とコメントしている。
弁護人によると、控訴するかは被告と話し合って決めるという。