劇場公開日 2023年6月9日

「【消されていたので】リトルマーメイドのアリエルを返してください【再掲】」リトル・マーメイド しかさんの映画レビュー(感想・評価)

0.5【消されていたので】リトルマーメイドのアリエルを返してください【再掲】

2023年6月12日
PCから投稿

一生懸命だけどどこか抜けていて、末っ子らしく天真爛漫で好奇心旺盛、家族にも海の仲間にも皆から愛されていて、けれども人間界に憧れている初々しくも可憐で、海になびくふわふわの赤毛と緑の尾の対比がおしゃれで可愛らしいアリエル。
くるくる動く豊かな表情を持ち、おてんばで手を焼かせる子だけど、どうしても愛さずにはいられない、そんなキャラクターのはずです。
しかし、そんなアリエルはどこに行ってしまったんでしょうか。
少なくとも、映画の中にはどこにも居ませんでした。
表情に乏しく、海age陸sageの歌であるアンダー・ザ・シーですら一緒に歌い、初々しさや可憐さ、アリエルらしい天真爛漫さや無邪気さなど欠片もありません。
そもそも、アニメのようなキラキラと輝くあたたかで色鮮やかな海の世界ですらなく、泡も波の揺らぎすらもない、ただひたすらに暗くジメっとしているような映像です。アバターなどから比べると格段に安っぽいCGでした。
アリエルのドレッドヘアを作るだけのために2,000万円以上費やすのなら、リトルマーメイドの世界観を高めるためにもっと別のことに使えば良かったのに。
あと、王子…様?? というか、そもそもこれはどこの国?どこの世界線?すべてが中途半端。
歌がうまいから配役を決めたそうですが、うーん、確かにうまいのかもしれないけど、アリエルの歌声ではないですよね、力強すぎる。ハリーさんも吹き替えの方も。聴いていてコレジャナイ感がすごかった。
というか何度も言うが、アリエルがアンダー・ザ・シー歌っちゃダメでしょ。
いくら歌唱力をアピールしたいとはいえ、そこは守るべきところじゃないでしょうか。
ついでにはっきりと言えば、ただただ純粋に可愛くないです……あの顔をアリエルとして巨大スクリーンで2時間見るのはきつい……別の作品の別のキャラクターならまだ許せますけど、明らかにアリエルではないですから。
ディズニープリンセスの中では珍しい人外の異形プリンセスだけど、実写のアリエルはあまりにも異形すぎませんか?
はぁ、どうしてこうなった。
リトルマーメイドのアリエルを返してください。
映画全体において作った側の主張したい思想ばかりが強調され、原作へのリスペクトが全くない、そんな作品に成り果ててしまっているように感じました。

【追記】
ちなみに、2,000万円以上かかったとされるドレッドヘアについては、アリエル役のハリーさんたっての希望だったようです。
以下、彼女のインタビュー記事を抜粋してみます。
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・私の本来の髪型であるこのヘアスタイルで映画に出るということは、ものすごく重要なことだった
・5歳のころから、ドレッドヘアにしているの。私という人間を表現する上でとても重要なパーツ
・ドレッドヘアが映画館のスクリーンに登場するということ、それが『受け入れられる』だけではなく、『美しい』と感じることができるものだということを、知る必要がある
・だれかが私に言ってくれたの。『いまの時代の子どもたちは、アニメ版のアリエルを知らない。彼らが見るのは、きみのバージョンのアリエルなんだ』って
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これを読むと分かるように、ハリーさんは役と自分をあまりにも同一視し過ぎてしまっているように思います。
リトルマーメイドという作品への愛やリスペクトが一切なく、アリエルという役を演じるというよりも、「これからは自分がアリエルのルーツ」とでも言わんばかりに、キャラクターそのものを乗っ取るかと思えるようなその言葉に本当に驚いてしまったことを覚えています。

また、この映画はいわゆる多様性だったり、月並みな言葉で言えば「みんな違ってみんないい」というコンセプトも含んだりしているのだと思いますが(アカデミー賞の決まりでそういうことになっていますし)、レビューの評価が高い方に限って、星を低く付けた人間のことが気に入らないのか、SNSに晒してみたり、自分は違うコイツは分かっていない理解が足りない低俗だ差別だヘイトだと言ってみたり、荒らしやサクラだ観てもいないくせにと決めつけてしまったり、逆にこの映画を良いと評価できる自分達はまっとうだ健全だと誇っているレビューさえありました(このレビューに対してもサクラ・荒らしだと決めつけてスクリーンショットを載せていたり、自分は違うというコメント付きで載せているSNSの投稿をいくつか見かけました)
多様性を謳う映画に賛同しておきながら、自分の意見と違うものは理解しようとも受け入れようともせず、自分達こそが正解で正当で健全であると主張し、そればかりか意見の異なる人間に対して排他的かつ攻撃的な姿勢を見せている。
そこがとても興味深いと思いました。

レビューを拝見していると、「アリエルに見えてきた」、「ちゃんとアリエルだった」、「(見た目の違いも)気にならなくなった」という言葉が散見されるのですが、『実写版』と名の付く映画だというのに、心の目で見たり、自己暗示をかけたり、自分に言い聞かせたりしないとアリエルに見えないって面白いなと思いました……何を実写したの………???

※レビューが消されてしまっていたので再掲します

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しか