蝋人形の館/聖飢魔Ⅱ
続・イタリア紀行(蝋人形の館/聖飢魔Ⅱ)
今では日本一ののめしこきを自称するぼくでも、こう見えてこれまで色々なバイトを経験してきた。浪人生活一年目は東京の住んだ意予備校に通わせてもらっていたからバイトはできなんだが、二年目からは実家近くのロイヤルホストでバイトをした。そのちょっと前にシダックス近くのローソンでバイトの募集があったから応募したが不採用であった。受け答えもよくできていた。しかれども、フードつきのパーカーとジーンズで面接を受けたのが悪かったのかしらん、二浪目が決定していたぼくにとっては、どんな拒否反応であっても随分と落ち込んだ。就活生のことなどこのときはその存在すら知らなかったが、採用を100社も断れれば人格が破綻して死んでしまうのは自然の斉一性の理だ。このときのぼくももしあと一回でも人から拒絶されていたら蚤のジャンプのラスト一回のように心が折れて名伯楽にどこかに連れて行かれ今頃はどこかのサーカス団に入って空中ブランコ乗りになっていただろう。県高出身であるからキキのように白鳥にならず、李徴のような虎になってボンキュッボンの鞭を持ったちゃんねえに調教されて火の輪を潜ってはぁはぁ、官能的な気分に浸る毎日を送っていたかもしれない。人から認められるといったささいな成功体験なくして人は生きられない。アリストテレスが語ったように人間はζῷον πολιτικόνであるから、いかなるバイト面接であれ不採用は結構ショックである。新潟高校出身の俺を落とすなんて、今に見てろよ。俺が東大合格して、新規採用でローソンに入ったらお前を窓際族に追いやってやる。パワハラかけまくって、ワタミのようにブラックにお前を染め上げて、お前の精神を破壊してやるかんな!俺を取らなかった店長、お前は蝋人形にしてやらない!次のバイト面接もものすごく凄く緊張した。何としても近場で働きたいから、次こそは必ずと親父のスーツを借りて面接に望んだ。わざわざ近所のファミレスのごときでスーツかと思うが、よくよく考えてみれば先ほど不採用だったローソンにもぼくのこうしたどうせ近場だからとか、わざわざローソンごときで、スーツを切る必要もないだろう、といった傲慢で侮った態度が見えていたのかもしれない。まさに、Medium is massage!これではダメだと考えを改め、望んだバイトの面接は早く終わり、採用が決まったら連絡差し上げます、とだけ申し渡され帰路についた。その翌日、早速採用の電話をもらった。