挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
続・イタリア紀行 作者:iccchiiiiii/一ノ瀬健太
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
6/22

བོད་པ རོལ་གཞས/Chanting by the Gyuto Monks

続・イタリア紀行(Chanting by the Gyuto Monks)

 もっとも、この寮自体がとてもつもなくおんぼろだから一般の人から見たらここで寝ていることは野たれ死んでいることと同義かもしれない。まぁ、それはそれで寝られる居場所があって息ができて、その上勉学まで出来るのだから大分ましと言うものだ。トルストイの上には上がある。下には下がある。犬に喰われるくらいに自由ならば、人非人の芸の世界に生きてソロモンの王すら越えていかなる俗界の寵児よりも幸福になることだってできる。天国地獄も胸三寸。奨学金からこうした必要経費を引いてみると、だいたいこれで2万円だからこれを先の5万1千円から差し引くと残るのは3万円。これであと一ヶ月の残りの生活費すべてを賄わねばならない。一日に使えるお金は千円である。一日千円というと以外に多く思われるかもしれないが、本当にそれだけで全ての生活必需品を補うのである。シャンプーもリンスも洗剤も、歯磨き粉もAmazonもすべてこれだけでマネージメントしていかねばならない。だから食事はダライ・ラマをはじめとするチベットの僧侶に習って一日一食に抑えることにした。その為、空腹を紛らわす為に身体が適応してビリルビンの値が高くなった。これにより治験のアルバイトでは毎回検査に引っかかるようになったからそのバイトも止めにした。このビリルビンは黄色のへムの分解代謝物で血中の値が高くなると空腹を感じさせない機能があると治験の検査医から言われた。一日三食食べた方が健康に良い、今はいいけれども歳をとってからツケが回って来る、そのことばが印象的であった。理想はこっちだって分かっている、好きでそんな生活をしているわけではないのだから、はいそうですか、じゃあ、そうします、と生活スタイルを艱難かんなんスタイルに変えられたら目的の王国は既に実現しているだろう。わかっちゃいるけど止められないから人類はいつもハイネの命題を乗り越えていくのだ。一日一食は克己、とすれば聞こえはいいかもしれないが、その背後にはぼくの個人的な生癖に起因している。それは夕飯をお腹一杯に食べるということだ。こればかりはぼくのプリンシパルだから、そこはどんなにお金がなくて貧乏であろうが譲れない一線である。だから夕飯で寺山修司の一点豪華主義を実現する為に、一日のリソースを全てそこに費やす。肉、緑黄色野菜、もずく、デザート、それだけで目のところだけ折られてエロ目になった野口英世はシビアに財布から旅立っていく。帰ってこいよぉぉおお!と念じながら西友のレジで自己啓発本に書かれてあった金持ちの金払いの方法をインティファーダと分かってはいるものの幾ばかりか実践する。それゆえに娯楽も文房具さえも買うことはNP困難なのだ。一日三食分散型スマートグリッド的食事よりも一食で肉まん全種類制覇をぼくは選ぶ。


  • ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いいねで応援
受付停止中
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。

感想を書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。