Moliendo Cafe/Jose Manzo Perroni
続・イタリア紀行(Moliendo Cafe/Jose Manzo Perroni)
もはや友人たちは社会に出て労働の日々を送っている。私はといえば、目覚ましをかけず、気ままに起きてカルディコーヒーを豆から煎る。下界の緑を見下ろし、晴れていれば爽快な空をコーヒーの香りとともに飲み、雨が降れば雨音と共に珈琲を呼吸する。風が吹いたら遅刻して、雨が降ったらお休みなカメハメハ大王の生活を送る。アラブの偉いお坊さんが恋を忘れた哀れな男に教えたしびれるような香りいっぱいの飲み物を燻らせながら『労働と日々』を読む、そんなおいしい生活を送っている。友人たちのことを社畜といって馬鹿にするつもりは毛頭ない。それとは逆で心からの敬意を抱いている。毎日満員電車に揺られ会社に行きつ戻りつし、牛丼屋に駆け込んでは腹を膨らませ、また寝て起きて会社に通う彼らの生活はぼくには到底真似できる代物ではない。ぼくの著書である『人間芸術家宣言!』をお読みになった方は既にご存知かと思うが、御天道様に胸を張って自立して生きることはそれだけで素晴らしい芸術であるから、それだけで彼らは十分に凄いものと心から思う。今の自分は月々5万1千円の奨学金をもらい生計を立てている。これだけで日々の生計を賄い営む。学校に通うにも定期がかかる。上石神井から上野までで7100円だ。それに加えてだいたい月々の家賃が光熱費を含めて1万円前後、これは大学の寮に住んでいるからこの値段であって、この寮がなければぼくは今頃野たれ死ぬかしていただろう。かもしくは、段ボールハウスに住んで通学時間0分、上野の森でキリスト教系の団体の炊き出しに行列を作っては温かいスープをほくほくしながらこの世の不条理を嘆きつつ、ふーふー吹いて飲んで、今、生きている!と生をとりあえず言祝いで、あわよくば、つぼみと性の頌歌の二重唱、か汁男優として数十重唱を奏でていたことだろう。