fiafia/Music of Samoa
続・イタリア紀行(fiafia/Music of Samoa)
そうした理由でそうこうと断っているうちに友人たちは社会人になった。大学生になった自分と行き違いになるかたちで皆が首にネクタイを巻きだした。パパラギを愛読していた彼も、ソローを愛した彼女もみなアミスタッド号に乗ってどこかへ行ってしまった。社会人になってしまえば常に忙しく、食って寝て起きて、食って寝て起きて、気付けばアラサー、アラフォー、アラフィフ、人生なんてそんなもんだ。付き合いは会社の人間だけ、低スペックな人間はエバーノート社のような有給システムなどその存在すら知らず、すやすやすと長期の休暇も取ることなど夢の又夢で、鬱で病んで会社を辞めるまでは旅行などチョベリバか、真剣十代しゃべり場くらい古代文明な死期である。当然海外の誘いもぱったりパタリロ来なくなり、今に至るわけである。この歳になってはじめて海外というのも随分と恥ずかしい話かもしれないが、それだってボロは着てても心は錦と親から教えられているし、意外にもこうした海外未経験者は自分の他にもけっこういるのではないかとも思う。さらにはそんなことを気にしていたって何もはじまらないという思いが強くある。いずれ山王工業とあたるのならばそれが遅いか早いかの違いしかない。つべこべ言わず、御託はさっさといいから飛び込めば良かったのだ、偶有性の原始の生命の