カゲロウデイズ/じん
イントロダクション
旅行に至る経緯(長いので読まなくても可。ただこれから連なる旅行記がこんな感じで続くのか、といった雰囲気は掴めることと思われる。)
続・イタリア紀行(カゲロウデイズ/じん)
齢27にしてはじめて海外旅行なるものに行く。当然今まで誘いも幾度かはあった。バリ島に行ってサーフィンばかりしている典型的なスーパーフリー早大生の友人からも毎年誘われてはいたが、金銭的な理由から毎度泣く泣く断っていた。あっちにいけば安くナオンが買えるぞ、童貞のお前もそこで筆降ろししたらどうだ?まぁ、下手したらそれは男かもしれないがな…がははははははっ!、と最近の旅行でニューハーフにヌかれた彼はぼくを羨ましがらせるように誇らしく語っていたっけか。円の強さにかまけてインドネシア女性の頬を万札で叩くといった勘違いの骨頂から来る傲慢さにある種の破廉恥と嫌悪感とそして穢さとを見てしまったが故にぼくは行くことを躊躇した、といえばかっこ良く映るかもしれないが事実はそうではない。行こうと思えばいつだって行けた。正直うらやましかった。それなのに行けなかったのは今思えば随分と情けない話であるが、そう、はっきりいって恐かったのだ。飛行機と、海外に行くことと。そして浪人である自分自信をみつめることが。欲しがりません勝つまでは的なド日本チャチャチャ精神論がぼくを亀甲縛りしていた。
旅は否応がなく自分を見つめさせる。自分を浮き彫りにさせ強さと弱さと三分の一の純情な感情を眼をカッ開いて見つめさせる。どんなに目をつぶろうとも旅行は2本指のピースで上まぶたと下まぶたをカッと開眼させてくる。おそらくは、それが嫌だったのであろう。当時のぼくは浪人という社会的な肩書きがあるうちは永遠にどんなイベントも楽しむことができないと決めていた。そんな時にこそ世界を見るべきだったのに。随分と惜しいことをしたと今でも思っている。勿論それと同時にやはり口座の貯金から金が減るのも嫌であった。それは今も当時も変わってはいない。口座の残金が2桁になるのはやっぱり何度経験してみても啄木と自分を重ねてしまう。じっと手を見るわけではないが、通帳をまじまじと見るのもまたあはれだ。2桁を見ると将来に対してののっぴきならない不安が脳裏を掠める。代助の赤い世界とはまた違った血飛沫のメリーゴーランドの世界に魔法使いは片足を突っ込む。賢者になるのもゴールドバッハの予想が証明されるのも時間の
問題だ。都の性北はサザエさんのノリスケと同じ会社に就職した。周りは進む。されど、自分の周りだけ時は止まっている。時かけ、シュタゲ、自然だけはいつもループする。エンドレスナイトな夜風は心地よく、また増えたばあ様の白髪がなびく。年々歳々花相似たり。歳々年々人同じからず。