特別寄稿
骨粗鬆症の語源
O.li.v.e.―骨代謝と生活習慣病の連関― Vol.3 No.1, 4-5, 2013
「鬆」の字の起源は明治時代に遡る. 1897年(明治30年)に, 東京大学整形外科学教室の初代教授になられた田代義徳先生がHermann Tillmanns著『Lehrbuch der speziellen Chirurgie』を全訳して, 『智児曼斯氏外科総論』を南江堂書店から出版された1). その著書のなかに「骨質鬆解症」の記載のあることが明らかになった. 「松の葉の重なりから向こうがすけて見えるさま」が「鬆」の字の成り立ちであるが, 明治時代の日本の原風景を髣髴とさせる字を疾患名に選ばれたことは, 漢字に対する造詣の深さと日本人的感性がうかがわれる. さらに, 「骨質鬆解症」はまさに「骨質がスカスカになっていく」ことを意味するもので, 現代の「骨粗鬆症」の概念と矛盾しない. しかし, この「骨質鬆解症」が「骨粗鬆症」なのか「くる病」なのかは定かではない. 1927年(昭和2年)に2冊の整形外科教科書が出版された.
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