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令嬢人形・由里子

All the tales of this page are fictions. It's not related to real person and organization at all.
本ページの物語は全てフィクションです。 実在の人物・団体とは一切関係ありません。
SCENE 2

 ゴォン!と背後でドアの閉まる音を聞いた時、ハッと拓郎は我に返った。 スタッフとおぼしき黒服の男達が忙しそうに動き回り、照明が落とされ、会場中央のお立ち台がライトアップされる。 高まる緊張感、いよいよオークションとやらが始まるに違いない。

 不意に静まった会場内に、マイクのハウリング音がキィーンと鳴り響く。
「…皆様、お待たせしました。 本日はお忙しいところ、ご来場いただき真にありがとうございます」

 恰幅の良い、マイクを持った中年男性が壁ステージに現れ、流暢な言葉でありきたりの前口上を述べ始めると、続いて奥から、車輪の付いた台座がスタッフの手によりスルスルと運ばれてきた。 台座の上には、1mちょっとの大きさで、真っ白いシーツに覆い被された”何か”が、微動だにせず載せられている。 スタッフが重そうにそれを抱え、お立ち台の”ジョイント”に設置する。

「只今運ばれて来ました”商品”、これが本日唯一の商品になります。 この度、皆様に御紹介するのは、我社でもとりわけ希少性の高い一品物です。 先ずはとくと御覧下さい!」
 そう言って司会者が勢いよくシーツを取り去ると、会場内の視線はその”商品”に集中した。


 !台座の上には、素っ裸の女性が鎮座していたのだ。 丁度、おしっこをするようなしゃがんだ姿勢で、大きくさらけ出された無毛の股間の秘部には、台座に固定されたペニス状の張り型が、深々と彼女の体内に収められている。 人形の顔は凛々しくも真っ正面を向いているが、光の加減でハッキリとは見えない。 ライトで照らされた全身は光沢を帯び、唯一、彼女が身に着けているエナメル製のハイヒールと変わらないツヤを放っている。

 そのリアルな造型に、最初は本物の女性が座っているのかと思ったが、次第にどうやらプラスティック製のマネキン人形らしいというのが段々わかってきた。 ただ、彼女の身体はピクリとも動かないけれど、全身がオイルやローションを塗られたかのようにヌルヌル揺らめいていたので、ここからではかすかな呼吸までは判別出来ない。

 精巧な人形か?…そんな物をオークションで?…じゃあロボット?まさか…と、会場内にどよめきが続く。 今の時代、”動き”はかなり人間に近いお手伝いロボットが家庭に普及しつつあるが、ユーザー側の拒否感もあって、あえて人形っぽい外観をしていた。 ダッチワイフ的なリアルドールでも、可動の関係上どこか作り物然とした雰囲気は抜けず、ここまで桁違いに本物ソックリなロボットは有り得なかった。 あるとすれば、映画撮影用の動かないダミーくらいだろう。

 そんな疑問の渦巻く中、突然、人形の載った台が水平に回転し始める。 彼女は同じ姿勢のまま、その見事なボディを惜しげもなく晒し、招待客全員にその美貌を振りまいていく。 人形の顔が正面に来ると、来客達は思わず顔を見合わせた…

「…あ、あれは!」
「…まさか、戸部さん?」
 十年近く経っているが、あの面影は間違いない、戸部由里子そのものだった。

 まるで戸部由里子自身を剥製にしたかの様な、彼女そっくりの美しい全裸人形は、ゆっくりと猥褻なポーズをしたまま、艶めかしく回転し続けた。 昔の知的な雰囲気をたたえた笑顔と、張り型を下半身にくわえ込んだ破廉恥さのギャップに、拓郎達は悪趣味な出し物でも見せられている気分になった。

 そうして人形は、そのままゆっくりと3周した後、回転を止める。 水を打ったように静まりかえった会場内…その静寂を破り、突然大音量のBGMがリズミカルに流れ出した。

 ズンズンズンズンズン…ドラムのリズムと同時に、戸部由里子そっくりな人形の首が、カクン、カクンと動いたかと思うと、彼女のなめらかなボディ全体が大きく仰け反った。 ブルブルと震えるその身体は、今ここで命を与えられたかのように、カクカクした動きが次第に洗練されてゆく。

「お、おい…動くぞ…」
 動揺する会場内を尻目に、戸部由里子人形は妖しげな笑みを浮かべると、周囲を一瞥してから、スムーズな動作でその長い脚を優雅に開いて、ハイヒールをグリグリさせながら足場をもう一度確かめる。 そして中腰に立ち上がると、台座に固定され今まで彼女の体内に収納されていた張り型が、ヌメりながらその長い本体を露わにする。 次の瞬間、戸部由里子人形はしゃがみ込み、全身でまた張り型を飲み込んだ。

『ん、んん、あああぁ…』
 悩ましげな声が響く… ああ、あれは戸部由里子の声だ… 昔聞いた懐かしい涼しげな声そのままで、BGMをかき消す程の嬌声を上げながら、戸部由里子は張り型を自分のヴァギナに出し入れした。 ヒールを踏ん張り、細く長い優雅な腕でバランスを取りながら、グチョ、グチョ、と淫音をならすかつてのマドンナの姿を、招待客は固唾を飲んで見守った。


 オナニーに夢中な美女の迫力に圧倒される中、いつのまにか戸部由里子のすぐ後ろに立つ司会者を、会場内の誰もが突然そこに現れたかのように感じただろう。 司会者の男は、一心不乱にピストン運動を繰り返す彼女に向けて、手に持った小さなリモコンを操作した。 丁度、MP3プレイヤーのような、簡素な電子機器である。

『んっ、んあっ』
 司会者の親指が動く度に、戸部由里子の動きは止まった。 だが、直ぐにまた動作を続けてしまう。
「あれ、おかしいな… おい、お楽しみは中断だ、この淫乱人形め、止まるんだ!」

『あ、ふあぁぁ…了解しました・プログラム動作を・停止します』
 何度目かのリモコン操作で、戸部由里子…人形がビクッと反応し、彼女の頭はうなだれ動作は完全に停止した。 フウ、と司会者の男は自らの額の汗を拭う。 会場内がシーンと静まりかえる。

「…えー皆様、いきなりお見苦しい所をお見せしまして申し訳ありません。 薄々お判りかと思いますが、この女は精巧に作られたロボットです。 ですが、勿論ただのロボットではありません」

 そう言って司会者の男が、再びリモコンを操作し始めると、戸部由里子人形はビクリと反応し、無表情のまま両手を前に置き支え、優雅にボディを立ち上げ、ゆっくりとヴァギナから張り型を抜き去る。 やがて台座から降りて床に降り、気を付けの姿勢からクルリと回れ右をして颯爽と壁ステージに歩き出した。 テーブルの間を抜ける彼女の歩く姿は、昔の戸部由里子そのままだった。

「このロボットは、実は…戸部由里子さん御本人のボディを使用した、世界でただ1つのセックスロボットなのです」
 司会者の爆弾発言に、会場内のどよめきは更に激しさを増した。


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2005/11/01 Update.

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