超法規的組織シャーレ で 仕事をしたくない サトウカズマ先生 作:奈音
カズマ先生は今回の件で真面目に全財産投げてます、素寒貧です…悲しいなぁ…。
――それでは、ムリゲー第二部後半戦、決戦スタート
――ミレニアムサイエンススクール 第二防衛都市ウル
第一作戦攻撃ライン 光の剣:対アトラ・ハシース スーパーノヴァ 発射管制室
セミナーコユキ、C&Cアスナ
『――対象A.H.A.
光の剣:対アトラ・ハシース スーパーノヴァ射程圏内に間もなく入ります…。
先生、コユキ、アスナさん、ご準備を…』
「「――だから長い」」
「確かに、毎回それは長いかも…、もう光の剣でいいんじゃない?」
『――そんな、アスナさんまで……』
「……お前の事だろうから、無駄口叩いてても準備は全部済ませてるんだろうが…、
おーい、そんなことより、リオ。 全体統制指揮官方の方から激励をくれよ」
『――私が、ですか?』
「生きるか死ぬかの瀬戸際なんだから、こう、なんかテンションがあがるやつをな」
『……それは、私よりも先生の方が適任でしょう――
ゲーム開発部の彼女たちを元気づけた時のように、お願いしますわ』
「――………おい、まさか、見てたのか?」
『私は先生のファン……、らしいですから。……期待していますわ』
そういうと通信が切れてしまった。あ、あの野郎……、いや女だから野郎ではないが、そういうことではなく。この決戦目前で最後方の中央管制室なら余裕もあるかと思って話を振ったのに、アッというまに開戦の激励を委ねられてしまった。全作戦攻撃ラインにオープン状態で繋がっているままで名指しされてしまったので、気のせいかはやくはやく~というからかうような声を感じる。――というかモモイとミドリだった。その二人を止めるようにユズが制止しているようだが、このままあの二人は騒ぎ続けるだろう。
カズマは盛大にため息をつくと、まぁここで俺がどうなっても、あとはヒフミがなんとかしてくれるみたいだから、まぁいいかと、最後の、未来観測機関「讖(しん)MkII」の動作確認の時のことを思い出しながら、息を吸った。
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――??? ヒフミ 未来観測機関「讖(しん)MkII」の記憶
「――私には、好きなものがあります!」
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「――俺には、嫌いなものがある」
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――??? ヒフミ 未来観測機関「讖(しん)MkII」の記憶
「――友情で苦難を乗り越え、努力がきちんと報われて」
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「――築いてきた友情を打ち壊されて、努力が全く報われず」
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――??? ヒフミ 未来観測機関「讖(しん)MkII」の記憶
「――辛いことは慰めて、お友達と慰めあって……!」
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「――辛いことがあっても泣き寝入ることしかできなくて、慰めてもどうにもならなくて」
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――??? ヒフミ 未来観測機関「讖(しん)MkII」の記憶
「――苦しいことがあっても……誰もが最後は、笑顔になれるような!」
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「――どう足掻いても笑顔になんてなれずに、下を向いて俯いて生きていくしかない」
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――??? ヒフミ 未来観測機関「讖(しん)MkII」の記憶
「――そんなハッピーエンドが、私は、好きなんです!!!!!!」
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「――そんなバッドエンドを、消し飛ばしに行くぞ、お前ら!!!」
通信越しでも伝わる、この場に集った生徒たちの轟く鬨の声。ただでさえ狭い管制室に詰めているのにも関わらず、コユキとアスナもやぁああああってやりますよ!とかセンセーちょーかっこいい!!とか、興奮気味に反応が返ってきているのは、煽った甲斐があってそれなりに気分がいいが、それなりにうるさい。
『――それでは、消し飛ばしていただきましょう……。
お話の間に電力の充填はしておきました。射程圏内……いつでも撃てます。
カズマ先生、コユキ、アスナさん、トリガーメッセージを、お願いしますね……』
「はいよ……。一応声紋認証だから、二人とも声を合わせろよ…」
「――じゃあ、私が合図するね! せーのっ、で一緒に」
「にははははっ、ちょっと、恥ずかしいですけどね……」
「……じゃあ、アスナ頼んだ」
「――まかせて! いくよっ…、せーのっ!!」
「「「――セイクリッドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」」」
未来観測機関「讖(しん)MkII」、シッテムの箱、アロナ、このままだと力が保たないと言われたことから集めたありったけの、文字通りありったけの青輝石…、魔王城の結界魔導士を消し飛ばした時と同じレベルの量を念のために持ってきて、使い切っていいとあらかじめアロナに許可したそれら。だからカズマはもう素寒貧だ、逆さに振ってももう何も出てこない。三人の手が重なったトリガーデバイスに手を置きながら、カズマはこの時ばかりは、かつてのデストロイヤーの結界を破壊した駄女神に、祈りをささげた。
「「「ブレイクッーー、スペル!!!!!!!!!!!!!!」」」
聖なる魔法陣が空中に五つ展開され、その力がすべて集まるように、光の剣:対アトラ・ハシース スーパーノヴァに収束し、大気を揺るがす宇宙戦艦の主砲が、宙空に光の軌跡を描きながら機動要塞アトラ・ハーシスに……、直撃する。
『――光の剣、直撃を確認…! 障壁を観測できています…!!!
でもこれは…、威力がこれでも足りていない……?!?!?!』
『アトラ・ハーシスが直撃を受けて動けなくなっていることから、効果は十分にあるわ…!!
しかし、先生、あと一息、もう少し威力が足りません…』
そんなことは分かっている、分かっているのだ。今更ながらカズマはあの駄女神はとことん規格外だったという事を痛感する。あれだけの結界を破壊しておきながら、その後に爆裂呪文を撃てるほどの魔力を吸いつくしても、まだまだ平然と元気に動き回っていたのだから。
さっきからものすごい勢いで魔力が吸いつくされて行っている感覚がしていて、今にも倒れそうだが、それをアロナが青輝石を使ってフォローしてくれる形でまだなんとかなっている。だが、このままだとジリ貧だ。……おそらくこれ以上の出力はまだ出せる、限界を超えることは可能だという感覚がカズマにはあった。やってもいいが、それをやると間違いなく爆裂魔法を撃ち込んだ後の爆裂狂と同じになってしまうが、もうカズマはヤケクソだった。
「――ぬ”お”お”お”お”お”お”お”お”お”お”お”お”お”お”お”お”お”お”お”お”お”お…!!!!!」
砲撃の威力が目に見えてわかるほど規模が増えて、砲身が熱暴走を始めるが、それでもカズマは魔力を込めるのをやめなかった、既に管制室の中はアラートが常に鳴り響く状態で、機械音声は一秒でも早く退避しないと命に関わるというメッセージを発信し続けている。コユキもアスナもカズマの気合に押されたのか、赤く染まる管制室の中で、三人は叫び続ける。そしてもう一秒も持たないとカズマが限界を迎えそうになった直前。――大きな破裂音が大気中に広がり、アトラハーシスは大きく後ろに吹き飛ばされた――
『結界の破壊を確認……!
お疲れ様です、カズマ先生、コユキ、アスナさん…!!!』
『――今です!!
第二作戦ラインの温泉開発部、カスミさん、メグさん、両脚の破壊を!!』
『――その言葉を、待っていたぞぉ!!』
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――ミレニアムサイエンススクール 第二防衛都市ウル
第二作戦攻撃ライン 温泉開発部カスミ、エンジニア部
「――第一砲撃群、班長カスミ! 準備よし!!
どうだメグ…!?!?」
『――こっちも準備万端だよ部長…!
いまの砲撃戦を見て、
急遽こっちで待機してるエンジニア部にリミッターを解除してもらったところ!!』
「――甘いなメグ!
第一砲撃班は全員リミッター解除機能を最初から搭載済みだ!!」
『……さっすが部長!!
――よし!! いつでもいけるよ!!』
「……カスミ、言っておくが。
リミッターを解除をしたことで砲身が焼け付いても撃ち続けることは出来る…が、
そのまま撃ち続けたら暴発する…、引き際を見誤らないようにして欲しい…」
「――ははっ……!!
それはいましがた大爆発を起こしたところの、カズマ先生にでも言ってやれ…!!
中央管制! 第一砲撃群カスミ、第二砲撃群メグ、いつでも行ける!!!」
『砲撃を続けられる時間は、そんなに長くない…
廉価版だから、10発もフルチャージで撃てば焼け付く、から。気を付けて――』
『――説明しましょう!
時間ギリギリまで改修は行ったんですが、
やはり威力を殺さずにするとなると限界があります!!
それでも本物と遜色ない、80%ほどの出力を維持し続けられますから、
それを100砲撃単位で、あのクモの節足に浴びせ続ければ機動力は奪えるはずです!!』
「――お前ら話は聞いたな!
いくぞ…、カズマ先生に我々も続く…!!
あんなクモ足、一本一本もいで標本にしてやれ!!!!
――タイミングはいつも通りだ、いくぞぉ…!!!!!!」
廉価版:光の剣を固定砲台にして、都市の外壁にずらりと並んだ温泉開発部が自動照準機能を起動し、左右に250基ずつ配置された光の剣がぐぉんぐぉんと唸りを上げる。
「「――――――――発っ破ぁ!!!!!!!!!!!」」
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――ミレニアムサイエンススクール 第二防衛都市ウル
第三作戦攻撃ライン 美食研究会、ゲーム開発部、C&C
『――アトラ・ハーシス脚部の撃破を確認…!!!
本体が動けなくなったことで内部から自動迎撃機が多数出現中…
温泉開発部の皆さんは可能な限り援護を…!』
『――はっはー…!! 人生で最大の発破を経験させてもらったんだ…。
言われなくとも暴発するまでやってやるさ!!』
第一作戦の結界の破壊の成功、第二作戦の機動力を奪うことにも成功、さぁそのまま第三作戦を開始して、お城に囚われたお姫様を攫いに行くだけという段になったが、そんなものに作戦も何もないだろうと考えていたネルにとって、自動迎撃機がアトラ・ハーシスの内部からわさわさ出てくるのは少し予想外だった。
なるほどなるほど、これが音に聞こえたシャーレの先生ね…、船上でしてやられた時はまぐれだまぐれだとネルは騒いだが、一癖も二癖もあるメンツをあっという間にまとめ上げたことと言い、ここまでの状況を読み切ったことと言い、敵に回すのは避けたい相手だ。トキに煽り方を丁寧にレクチャーしたと言われても頷けるほどの、読みの深さである。
まさか、あれほどの砲撃を二段階で浴びせ続けた相手に、まだまだ余剰戦力が残ってるなんて普通考えるか…? 第三作戦の為に、ここまでの過剰戦力を残しておく必要があると断言されたことに反発したネルにとって、いつの間にか治されていた傷のことも含めて、シャーレの先生というのは、連邦生徒会長の代理というのは、そういうものなのかと戦慄を覚えた。
「――ネル先輩。ご主人様は、規格外でしょう…?」
「……ちっ、あぁ認めてやるよ――
お前らがそろいも揃って、ご主人様呼ばわりするだけはある」
「おやおや随分と遅い気づきですね……。
私など、会ったその日にもう気が付いていましたが…、ピースピース」
「――トキてめぇ、あのクソグモぶっ壊す前に、もう一度決着付けてやろうか…
って、なんだ、もうそれ装備してんのかよ? 早くねぇか…?」
「――ここからは歩兵戦ですので…、い ち ば ん、火力のある私が道を切り拓きますから、
ネル先輩は、私の後ろに、か く れ て、引っ付いてきてくれていいんですよ…?」
「上等だてめぇ…、この前も私が勝ったしな!!
今回も同じことになるってことを、分からせてやるよ!!」
あっという間に、血の気が多い二人が突出して自動迎撃機群の中に飛び込み、まるで湯水で氷でも解かすような勢いで、瞬く間に敵勢力を削っていく。ところどころで、その突破力が失われないように外壁の上から砲撃が飛び、それでも間に合わない部分を二人の後ろに続くアカネとカリンが援護していくが、二人とも呆れ顔だった。
「――ネル先輩、作戦の目的を覚えておられるんでしょうか…」
「……まぁ、やらないといけないことは結局同じだから、結果は変わらないと思う。
部長並の戦力が一人から二人に増えたから、突破も楽になりそう」
「ふふふっ…、そうですね、では。
我々の後ろに続いてる方々から、
”もうC&Cだけでいいんじゃないかな”と、言わせてしまう程度には、
ご奉仕させていただくと致しましょう…!!」
「――お姉ちゃん……」
「言わないでミドリ!
盛大に覚悟を決めてテンション上げてた私たちが馬鹿みたいになっちゃうでしょ…!」
「――ううっ……」
歩兵戦を行うネルとトキがこじ明けていく穴を、戦闘車両に乗ったアカネとカリンが更に広げ、そうやって作っていく道を、悲しい顔をしたゲーム開発部と、いつも通りの美食研究会が装甲車両に乗って追いかけていく…。
――ドカン、ドカンと、限界を迎えた廉価版:光の剣が暴発していく空気の振動音を感じながら、彼女たちは、最終決戦場に乗り込んでいった。
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――ミレニアムサイエンススクール 第二防衛都市ウル
第一作戦攻撃ライン 光の剣:対アトラ・ハシース スーパーノヴァ 発射管制室跡地
セミナーコユキ、C&Cアスナ
「――し、死ぬかと思った…」
「に、にははははははは……、う、運よく装甲板に庇われる形で、
一緒に吹き飛ばされなかったら…、
私も手足の一本位はなくなっていたかもしれません…」
「――しかもあの高さからそのまま落ちてたら、私たちはともかく先生は即死だから、
三人纏めて団子みたいに、たまたまなってて、よかったね!」
「ありがとうございます、幸運の女神様…」
「えっへへ~、先生が不調の原因も無くしてくれたしね…、絶好調だよ!」
「……そうだな、ちょっと当分忘れられそうにないわ」
カズマの言っていることは助かってからも気絶したふりをして、散々味わった柔肌の感触であり、アスナの言ってることはカズマに対する最大の感謝であった。カズマは変なところでヘタレなので余り気付いていないが、C&Cからの好感度はかなり高く、多少のことをやらかしても許してくれるのだが、隣にいるコユキの視線が少しずつ鋭くなってきている気がして、肝心なところから視線を外した。
「――それで、先生どうしますか…?
もう第三作戦攻撃は突撃しちゃいましたし、時間の問題だと思いますけど、
中央管制棟に行きますか…?」
「――いや…、俺の勘が正しければ、
このままだと、アトラ・ハシースは絶対に自爆する…」
「先生が言ってた、制御コアやエンジン部を制圧してもダメなの?」
「制御コアは破壊したら、ウルを含めてこの辺は更地になるだろうな…
そしてコアを安全に取り除いたとしても、制御を無くしたあれは…、
循環してる廃棄熱の行き場を無くして、同じ結果になる」
「――なんですか、その二段階の痛がらせみたいな自爆!!
古代の人は馬鹿なんですか…!! こわすぎません…?!?!」
「……だからスーパーノヴァが二門欲しかったんだが、
あとでこいつをもう一度使えるかなとか考えていたのは甘かったな…。
うーん…、まぁなんとかならなくても、退路は確保されてるから、大丈夫か…?」
「――そこは断言してくださいよぉ…!!」
満身創痍のカズマはアスナに背負われ、コユキから泣きつかれながら、既に戦場跡となった大地を進んでいく。アリス救出の最終段階は、目前に迫っていた――
――というわけでブルアカ世界でデストロイヤー戦したかったという話でした。
これがやりたかったんだよ(二回目
ブルアカの「わたしたちの青春の物語!」、このすばの「このすば一期10話デストロイヤー戦か、OP曲」を見ながら読むともっと楽しめるんじゃないかな…(宣伝。
この結果は、連邦生徒会長が在籍していた場合の、アリス討伐戦を考察し、その上でカズマさんならどうするかと考えて書いたものです。超人らしいから、SRT使い潰せばこのくらいできるでしょ…。