超法規的組織シャーレ で 仕事をしたくない サトウカズマ先生   作:奈音

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 ミレニアム編の評判が上々なので三日目の連続投稿です。
もっともっと、もーっと★10もそれ以下も戴けたらモチベーションが上がって嬉しいかなって…。


 前回でようやく破滅しましたので、これにて中盤戦閉幕。
アトラハーシスと戦うための、前提はここまでです。


六話 覆面水着団フィクサー サトウカズマ

 

――シャーレオフィス 

  キヴォトス対策委員会 先生の執務室 カズマとアビドス生徒会

 

 

 「――連邦生徒会の秘密金庫の襲撃…?」

 

 

 「………そんなことしてどうするのさ~、先生」

 

 

 「そ、そそそそ、そうよ! 私たちは犯罪者集団じゃないんだからね!」

 

 

 「あ、あの、みなさんこれもしかしてバレてるのでは…?」

 

 

 「あらあら~……」

 

 

 結局、未来観測の通りになってしまったとカズマは溜息を吐きつつ、ほぼほぼハジメマシテ状態のアビドス生徒会に対して、うってつけのやって欲しいことがあったので言ってみたが、まぁ案の定の反応ではある。……とは言っても、ヒフミ経由でアビドス生徒会の前科を知っていたカズマにとって、そして彼女たちが求める最終的なゴールに関してある程度の理解もしていたので、この説得は容易だった。

 

 

 「ヒフミちゃん経由で知ってたなんて、人が悪いねぇ~、先生…」

 

 

 「――ん。でもそれなら一番しっくりくる。カイザーと、連邦生徒会の、癒着……」

 

 

 「なによそれ!! 

  ――じゃあ私たちが散々苦労させられてきたのは、

  そいつらの利己的な目的の為だったってこと…?!?!」

 

 

 「………企業間の取引でなら、よくあることですね。

  介入しないことを条件に、利益の一致先への協力を取り付ける――

  アビドスの崩壊が手筈良くいったのも、組織的な動きだったということ…」

 

 

 「そしておそらく、その決定的な証拠があるのが、連邦生徒会秘密金庫、ですか………」

 

 

 アビドス生徒会の決断は早かった。各々がポケットやカバンに手を突っ込むと、取り出したマスクをかぶりだす。それはそれぞれが好みの色を選んだ目出し帽であり、彼女たちが銀行強盗をした際の正装でもあった。銀行強盗の正装ってなんだよって感じだが、この格好自体が、彼女たちの絆の証の一つなのである。

 

 

 ――0号。黄色い覆面がトレードマーク。後方支援で横長の耳が飛び出している。

      覆面水着団の命名者。

 

 ――1号。桃色の覆面がトレードマーク。アホ毛が飛び出している。

 

 ――2号「ブルー」。青色の覆面がトレードマーク。獣耳が飛び出している。

 

 ――3号「クリスティーナ」。緑色の覆面がトレードマーク。シニヨンが飛び出している。

 

 ――4号。赤色の覆面がトレードマーク。ツインテールが飛び出している。

 

 

 リーダである5号「ファウスト」…なぜか覆面が紙袋になっていて、ほんのりたい焼きの香りがするヒフミを除いた覆面水着団勢揃いである。 カズマはその光景にニヤリと笑うと、説得が成功した時のために用意していた、額部分にSと書かれた青色の覆面を被り、名乗りを上げた。

 

 

 「――我が名は佐藤和真、

  覆面水着団の裏の支配者、フィクサーとなる者。

 

  アビドスの解放に協力する、シャーレの先生であり…、その全責任を負う者……」

 

 

 「――おお、ノリノリだねぇ~、先生」

 

 

 「……なんでそんなに用意がいいのよ!

  でもお陰で覚悟が決まったわ、その金庫、ぶっ壊してやるんだから…!」

 

 

 「――ん。銀行は楽勝だった。金庫も大丈夫」

 

 

 「み、みなさん、壊したら証拠もなくなっちゃいますから……」

 

 

 「――なんだか楽しくなってきましたね♪」

 

 

 思いのほかノリノリだったアビドス生徒会にカズマはホッとしつつ、アビドス一同が部屋を退出したすぐあとに突撃してきた、この密談をなぜかこっそり聞いていた便利屋68に尊敬の眼差しでアウトローがどうやらこうたらと暑苦しく熱弁されたので、手数が増えそうだからまぁいいやと、金庫襲撃への同行を許可した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――シャーレオフィス キヴォトス対策委員会 対策本部 地下列車

 

 

 「――待たせた」

 

 

 「……いいえ、ちょうど我々の方も自己紹介が終わった所です。

  カズマ先生のご要望通り、美食研究会と温泉開発部は揃っています」

 

 

 「――待って待っておかしいでしょ…?

  なんか先生もこっちを見たわりにスルーしちゃってさ…!

  わたし、給食委員会なんですけどぉ…?!?!」

 

 

 「あらあらフウカさんったら…、そんなに喜んでいただけるとは思っていませんでした。

  こうして連れて来た甲斐があるというものです…」

 

 

 「連れて来たもなにも、あんたがこの騒動が起きた時に真っ先に!

  私をしっかり簀巻きにして、給食部の車ごと連れ去ったんでしょうが…!!」

 

 

 「――大変な戦いでしたね★」

 

 

 「運転がすごくうまくて、安全にご飯が食べられてよかったよー(もぐもぐ」

 

 

 「イズミ! 食べるか喋るかどっちかにしなさいよ…!

  先生の前なんだからね、はしたないでしょ!」

 

 

 「………あー、なんだ。もうそろそろフウカも諦めたらどうだ?

  ゲヘナとトリニティの手配書に、がっつり載ってるし…」

 

 

 「――どんなことがあっても私の味方をするって約束守って…!

  というか、今すぐ守って! このバカ共から…!」

 

 

 「……でもなぁ、手配書については撤回の要請を出せるけどさ…、

  前のことは本当に悪かったから…、フウカが毎日のように襲われてる対策の為に、

  ゲヘナ給食部に装甲車両の手配したのに、その装甲車両で来てるからなぁ…」

 

 

 その上で、カズマの息が掛かっているゲヘナ給食部部員に、可能な限り全力でフウカを守ってやってくれと、ひそかにお願いしてのこの結果なので、もう手の施しようがないようにも思える。今後の対策として、装甲戦車を給食部に供与することをフウカに約束して、この場はなんとか協力してもらうことに納得してもらった。

 

 

 「――話がまとまったところで、本題に入りましょう。

  先生、よろしいですか……?」

 

 

 「…そうだな、頼むカンナ」

 

 

 「ではスクリーンに映します」

 

 

 縮尺が分かりやすくなるように示されたスクリーンの中でも、それはあまりにも巨大だった。まるで都市そのものが動いているかのような威容。かといってその速度が遅いわけではなく、空を飛ぶ鳥を装甲上部にある対空砲火で消し飛ばしながら、規則正しく動く八本の節足を蠢かせて、明確な目的をもって前進している。

 

 それを捉えたカメラが大きく空に引いて行って、ようやくその全貌が掴めてくる…。くも、蜘蛛、スパイダー…、八本の節足を持ち、本来のそれよりも多くの複眼を煌めかせて、現代兵器の粋の全てをこらした芸術品のようなそれが、ミレニアム地区の大地を歩きやすくなるように蹂躙していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ――――機動要塞 ATRA-HASIS-ARK

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミレニアムセミナー生徒会長、調月リオから殲滅協力要請が来た古代兵器に名付けられた名称であり、明星ヒマリから救助協力要請の来た、アリスという要救助者対象が現在も意識不明のまま眠っている、キヴォトスを滅ぼしかねない揺り篭の名称でもあった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――ミレニアムサイエンススクール 要塞都市エリドゥ v.s.ATRAHASIS緒戦の記録

 

 アリスは絶望の檻に囚われ、要塞都市エリドゥはその全てを暴走するアトラハーシスに取り込まれはじめた。本来ならその時点で、エリドゥ各所で戦っていた、――ことの推移を見守っていた全ての生徒すら取り込んで、生体部品の消耗品としてアーカイブ化されるはずであったが、ここでコユキの生来の能力が、この事態に対抗できた。

 

 息を吸うようにセキュリティを破壊すること、複雑怪奇な暗号を解読すること、カズマから貰った新しいお守りを持っていたこと、それらすべてが最高の結果を引き寄せた。

 

 

 「――コユキ!」

 

 

 「にひひひひっ…!

  まだ起きたてだからか、私の敵じゃないってことですよぉ!!」

 

 

 ユウカの号令を待つまでもなく、もしもの時の為に待機していたコユキがその全能を振るい、アリスの精神世界に潜り込んでいたゲーム開発部の三人を回収することに成功する。

 

 

 「――ぷはっ、戻ってきたぁ…?!」

 

 

 「あと少しだったのに、追い出されちゃった…!!」

 

 

 「ご、ごごごごご、ごめんなさい…っ!」

 

 

 アリスの心を救い出すために全てを託された勇者パーティはクエストに失敗した。……ならば次にすることは、一刻も早く次につなげられるようにするために、この場から逃げ出さなければならないとリオは判断する。ゲーム開発部率いる彼女たちがエリドゥに来た時点で、最悪の場合を考えて連絡は入れてあるし、LIVE映像をシャーレに送信し続けている。

 

 この事態に気が付いたカズマ先生ならば、私がどうなったとしても後事は託せるはずだ。リオはこの都市を作った責任と、アリスをここまで追い込んでしまった責任を取らなければならない…。

 

 

 「――第二プランがあります。全員この都市を出て南に向かいなさい…。

  ………………なにをしているの、立ちなさい!!!!!」

 

 

 絶望に打ちひしがれて、立つ気力もなくしたゲーム開発部をリオは一喝する。ひうっ、はいっ、すすすす、すいませんと三者三様に気合を入れられた三人はAMASの先導によって部屋を辞していく。コユキがあれほどの才を持っていたのは予想外だったが、自動機械の制御が戻ったことによって、エリドゥで戦闘行為を行っていた生徒全てと、主要な機動兵器を逃がすくらいのことは出来そうだ…。

 

 

 「らくしょう、らくしょう……、あれっ? うーん、こうかな?

  ちょっ…、もう対応してきたぁっ…?! 

  不味いです不味いですよユウカ先輩ノア先輩ぃいいいい…!!!!

 

   まだまだ余裕の範疇ですけどっ…、時間の問題ですよこれっ…!!!

  こんな幼稚園児のはいはいレベルならまだなんとか対応できますけど…、

  一時間もしないうちに大人になりそうな勢いで対応してきてます…!」

 

 

 いいや、駄目だ。そのコユキも少しずつではあるが苦しそうな表情を見せてきている。

 

 

 「――リオ、先程あなたは第二プランがあると言っていました…。

    もう一つのセーフハウス…。

    この事態に備えて、あなたは、あんなバカげたものを造っていたのですか…?」

 

 

 横に眼をやると、自分自身の両脚でしっかりと立っている、ヒマリの姿が目に映る。

 

 

 「えぇ…、ここから南に下ったところにある、第二要塞都市ウル。

  カズマ先生がトキに溢していたことを半分実現した、特殊砲撃型都市、コードRG…。

  ………エンジニア部の作った光の剣を、文字通りその大きさにした武器型大都市よ」

 

 

 他の生徒を手早く避難させ続けた結果、最早この管制塔には、というかエリドゥにはセミナーの四人とヒマリだけが残っていた。……今回リオが敗北した最大の原因はヒマリにある。まさかいつの間にか健康優良児になっていた上に、C&C最強のダブルオー…、美甘ネルと同等レベルの戦術能力を身に着けて、最終局面になってから横殴りの奇襲を仕掛けてくるとはさしものリオでも予想できなかった。

 

 

 「なるほど……、次善策があるなら、私たちもそろそろ避難しましょうか…。

  コユキにも限界があります…」

 

 

 「――……??? 何を言っているの?

  これ以上の情報、物質的被害が広がらないよう、

  全ての連絡口と移動手段は破壊したわ…、逃れる手段なんて――」

 

 

 「――リオ、エリドゥに、温泉はありますか…?」

 

 

 「え、ぇえ…、カズマ先生が妙に露出の高い生徒を引き連れて作っていったのがあるけれど。

  それがいったい、なんだって――」

 

 

 その後、セミナーの四人とヒマリは、無事脱出に成功した。

その脱出経路を、とてつもない火薬量の爆発物によって、破壊しながら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――移動中…… キヴォトス対策委員会 対策本部 地下列車

 

 

 「――我々が! 作った!!」

 

 

 「温泉開発のためだからね! 仕方ないね!!

  ……でももしもの時の為に、爆薬を、沢山仕掛けておいたよ!」

 

 

 「………温泉開発部の開発能力には目を見張るものがありますね。

  この各学区への列車と線路も、温泉開発部によるものとは――」

 

 

 「言っておくが、そいつらは温泉に関係なかったらここまで出来ないからな…。

  いや、おかげでいままさに助かってはいるんだが…。

  ……アビドスと便利屋も同じようなのに乗って、別任務に向かったしな」

 

 

 画面上で共有される、温泉開発部によって作成されたいつでも爆破できる仕様の温泉用緊急通路に驚愕する一同。これは、カズマが温泉開発部との交渉をうまくまとめた後、その温泉のためになら、開発に関して万能と言っていいほどの能力に眼を付けて要請したものだ…。

 

 温泉開発部の未来のために、温泉に一刻も早く駆け付け、それを開発するための、効率化された最速の経路が必要だと思わないか、思うだろ!!、流石先生お目が高い!さぁ作ろう今作ろうどんどん作ろうという………、という、バカみたいなノリとテンションによって造られてしまった、キヴォトス中の全学区に繋がるバイパス線路である。

 

 そんなバカみたいなことが実現できていいのかとカズマも一瞬思ったりしたが、そういえばこいつら温泉開発部は、一瞬ともいえる時間で温泉郷を完全配備できるほどの謎開発能力を持っているから可能なんだろうそうなんだろうと、既に思考を温泉に投げ捨てていた。

 

 

 「(――しかし、カズマ先生、同封されている記録にあるように…

   この相手には、ありとあらゆる物理的手段が効かないことが分かっていますが…、

   それは情報共有しないでよろしいのですか…?)」

 

 

 「(それに関しては、大丈夫だ、多分。多分な……。

   前も似たような相手と戦ったことあるし、対応方法が同じでいいなら多分……

   一応、アロナにも確認したし、なんとかなるんじゃないかな…)」

 

 

 「(多分ばかりではないですか…!

   それに先程配られた人数分の覆面は何なのですか? 覆面水着団とは、なんなのです???

   大丈夫なんですか、先生…?!?!)」

 

 

 「(SRTの件みたいに何とかなるって……多分な…)」

 

 

 列車内にいるすべての人間が覆面を被った不思議な集まりは、一路、ミレニアムサイエンススクールが救援を求める、第二防衛都市ウルに向かってひた走る。

 

 

 ――キヴォトスの趨勢は、すぐそこまで迫っていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、v.s.機動要塞 ATRA-HASIS ARK(後半戦)

本当ならこの辺で全部終わってるはずだったんですが、どんどん長くなったので分割しました。いよいよの戦いはまだ書いてる最中ですので、まだ無理かな…。

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