超法規的組織シャーレ で 仕事をしたくない サトウカズマ先生   作:奈音

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 リオとトキへの評判が良かったので二日目の連続投稿です。
もっともーっと★10もそれ以下も戴けたらモチベーションが上がって嬉しいかなって…。なかでも一番効果があるのはやはり感想を戴けることですね…。

ささ、原作ブルアカ先生は過労で倒れるのが公式なので、
カズマ先生にもそのくらい頑張ってもらいましょう…


五話 キヴォトス対策委員会 サトウカズマ

 

――シャーレオフィス 執務室での記憶 カズマ

 

 

 美食研究会への仕込みが済み、後はクロノス報道部が騒ぎ出すのを待てばいいかと、シャーレにてようやくひとごこち付いた気持ちになっていたカズマは、別件で図書委員会に用事があったのもあり、ミラクル5000とかいうケーキにあるまじき名前の洋菓子をパクつきながら、問題となっている古書について、絞められた魚みたいな眼をしながら目を通していた。

 

 ――仕事を依頼した図書委員会の部長に、ここまでの仕事を要求するなら対価を…対価をください…と言われ、まぁもっともだなと思ったカズマは、ホームレス共を引き連れて、放課後スイーツ部に奢ってやったりしながら、なぜかミラクル5000の店主にいたく感謝されて、その人数分をただで貰えそうになったが、流石に申し訳なくて普通に金を払った。

 

 今日の報酬は人数分のミラクル5000になった機嫌のいいホームレス共にシャーレまで見送られ、もはや完全にホームになってしまったなぁと寂寥感を感じながら自室まで戻り、こうして今日もやりたくもないことをやっている。あともう少し、あともう少しだからと、どうにか自分を励ましながら勤めていると、……おかしいな、もうそういう思いをしなくてもよくなったはずなんだけどなとか余計なことを思い出してしまい、どこかに亡命でもできないかと真面目に検討し始めてしまう…。

 

 

 そうやってダラダラとぐだを巻いていると、リオとヒマリから通信が入り……、秘密裏に今後についてのことで話があるので、バレないようにセミナー執務室まで来てほしいというモモトークが来ていた…。

 

 

 「――……労災って、申請したら、通るのか…?」

 

 

 そもそもどこに通せばいいのかさえ分からないが…、暗澹とした面持ちで画面を眺めるカズマは、ワンオペの飲食店店長のような気鬱した空気を漂わせながら、公園のホームレス共に連絡を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――ミレニアムサイエンススクール セミナー執務室での記憶 カズマとヒマリ、リオ

 

 

 「まぁ、カズマ先生…、ふふふっ、この前はお疲れさまでした」

 

 

 「ほんとに疲れてるから、車椅子は自分で押せよ…。

  …………はぁ。

  ほぼ最初期から力を借りてるセミナーの要請は断りづらいんだよ……。

  ヒフミを書類面でも実務面でもうまいことサポートしてくれてるのも、

  いまや、自動化された機械あってのことだからな…」

 

 

 「あら……でしたら、超天才清楚系病弱美少女のお願いも、聞いてくださるんですよね…?」

 

 

 「――お前のその、長い上にうざったらしい名乗りを聞くのが嫌だったから、

  まとめて治してやったろうが…、なんでまだ車椅子使ってるんだよ」

 

 

 「そ、それはカズマ先生が、二人だけの秘密だと仰ったからです……。

  それにですね、私がいきなり元気に立ち歩いていたりしたら、

  多くの人に不審に思われるでしょう…?

 

   ――ここはミレニアムです。

  不審に思った好奇心旺盛な彼女たちに詰め寄られたりしたら、

  私の口がとても軽くなってしまうかもしれませんが、それでも構わないのでしたら……」

 

 

 「――分かった分かった。お姫様扱いしてやるよ…。

  お前もどうせリオのところに行くんだろ? ついでだついで…。」

 

 

 「むぅ。釈然としませんが今はそれでいいでしょう……」

 

 

 ミレニアム最高の頭脳の前には、さしものカズマも分が悪いのか、ぶつぶつと文句を言いながらも、既に健康になったヒマリの後ろについて車いすを押してやる。その状況に満足いったのか、ヒマリは鼻唄でもうたいそうなくらいには上機嫌な様子だが、カズマが気が付くことはなかった。そうやって騒がしくしていた二人を迎えるように、リオが部屋の前で立っていたからだ。

 

 

 「――騒がしいわよ」

 

  

 「――リオ」

 

 

 「よお、来てやったぞ」

 

 

 「……はぁ、カズマ先生。

  あなたをお呼びしたのは確かに私ですが、もう少し静かに来ていただけないのですか?」

 

 

 「悪かったよ。執務室手前に来るまでは静かにしてたんだけどな」

 

 

 「まぁ、まるで私が悪いような言いようですね……」

 

 

 「――そうじゃなかったらなんなんだよ…」

 

 

 「茶番はもう結構、早く部屋に入って頂戴」

 

 

 「ほらみろ怒られたぞ」

 

 

 「人間にはユーモアと余裕が必要ですのに……」

 

 

 AL-1S。モモイによってアリスと名付けられ、天童アリスの学籍を取得し、ミレニアムサイエンススクールの一員となった騒動にカズマが関わったのは、コユキの件と同じく、美食研究会への仕込みを掛けていた合間のことだった。そして、その後の経過観察を経て、秘密裏に開かれたこの集まりは、ミレニアムの頭脳と言っていいほどの能力を持つ、調月リオと明星ヒマリにカズマが招かれる形で行われた。

 

 

 「――アリスの正体……それは、

  無名の司祭が崇拝する”オーパーツ”であり、

  遥か昔の記録に存在する、”名もなき神々の王女”

 

  つまり……、”あの存在”の本質は――」

 

 

 「えぇ。アリス、あの子は――」

 

 

 

 

 「世界を終焉に導く兵器」

 「”かわいい後輩”ですよね♪」

 

 

 

 カズマはその二人のやり取りを、テキトーな椅子に座って頬杖を付きながら眺めていた。

やがて二人の間に、これ以上の交渉の余地もなく、自動機械をそろえ始めてドンパチしそうな雰囲気になるまでだが。

 

 

 「――待て待て待て待て! 流れ弾で俺が死ぬ…!」

 

 

 「そうは言いますが、カズマ先生。

  同盟を解除した以上、ヒマリをこのまま返すわけにはいきません」

 

 

 「まぁ……、カズマ先生はそちら側なのですか…?」

 

 

 「アリスの危険性を強く危惧しているというならリオ側だが、

  心情的にはヒマリ側ってところだな…。だから、やりあう前にこれを見てくれ」

 

 

 カズマは持ってきた書類を、机の上にバサバサと広げた。図書委員会を糖漬けにしてしまった原因でもある、キヴォトスに古くから伝わるいわくつきの古書の中身を、今の人間でも見られるようにまとめたものである。

 

 

 

 「なんですか、これは……?」

 

 

 「リオにこの手の話を聞かされてから、

  調べさせたトリニティ学園の図書委員会からの報告書なんだが…。

 

  AL-1S。アリスについての記述はそんなにないが、

  その結果らしきものを二つ見つけた…。

  アトラハシスとウトナピシュティム、どっちも御伽噺みたいな話だが、

  俺はリオと同じく、ここに記載された内容が高い確度で起きると考えた」

 

 

 「それは、どういう根拠から考えられた話なのですか……?」

 

 

 そういえばヒマリとは、そこまで突っ込んだ話はしてなかったなと思いつつ、まぁ、脚関係のもろもろは全部治してやったから、まぁ話は通じるだろうと思って、そのまま話をつづけた。

 

 

 「――笑うなよ。俺の、実体験だ…」

 

 

 「………………」

 

 

 「………………」

 

 

 「………黙られるとそれはそれで困るんだが…、まぁいい…。

 

   俺の実体験から言わせると、

  古代遺跡だの古の技術だの失われた技術だのなんてものは、たいてい!

  ――ろくでもないものばっかりだ。……世界が滅ぶってのも比喩じゃないものもあった。

  

  だから、アリスもなにかが引き金になれば、それと同じ結果になると考えているんだよ」

 

 

 「……………」

 

 

 「……………」

 

 

 ヒマリもリオも笑わなかった。笑えなかった。

ヒマリは、その片鱗を、カズマ先生からもたらされた神秘の恩恵によって知悉していたが故に。

リオは、そこまでやるのかと言う程の巨額の支援を、継続的にシャーレから受け取っていたが故に。

だが、そうでもあっても、どちらの意見も平行線なのは明らかで――

 

 

 「――やめろやめろやめろ黙ったままハッキングするのはやめ…っ!!

  待て待て待て待て暗い暗いくらい!!!

  リオもAMASをけしかけるんじゃない最後まで話を聞けって!

 

   ――――ふぅー、ったく、これだから……。

  頭のできのいい奴はすぐ結論を出そうとする……」

 

 

 「ですが先生、これ以上話し合うことはないかと」

 

 

 「珍しいことに、私も同意件です……」

 

 

 「……いいか、お前らが争ってるのはこの先どうなるか分からないからだ。

 

  ――リオの言う通り、最悪の可能性が待ってるかもしれない。

  ――ヒマリの考える通り、アリスをあのままゲーム開発部に置かせとけば、

    その危険性は生まれないかもしれない…。

 

  じゃあ、作ろうぜ。――未来が分かる機械をな」

 

 

 顔を見あわせて不思議そうな顔をする二人を前にして、カズマは不敵に笑った。

ユウカがかつて莫大な費用を掛けて製作に成功し、大失敗を収めた、星占いしかできない未来観測機関「讖(しん)」。その本来の用途に使えるようにするための、製作プロジェクトの発進であり、最悪の未来への第二歩目でもあった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――ミレニアムサイエンススクール

  カズマとリオ、ヴェリタス 未来観測機関「讖(しん)MkII」の記憶 

 

 

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――シャーレオフィス キヴォトス対策委員会 カズマ先生の執務室

 

 

 「――三食昼寝付き、安全な生活……。

  これは交渉次第ですが、ほどよく可愛らしい女子生徒と触れ合うこともできます。

  ククッ…仕事は…、そうですね…。

  カズマ先生が時々作られる、不思議な玩具を我々に提供していただければ結構です」

 

 

 「――その話詳しくぅ!!!」

 

 

 あれだけ啖呵を切ったのにも関わらず、もうなにもかもカズマは放り出そうとしていた。この男、控えめに言って最低である。

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 「――先生?(ガチャッ」

 

 

 「先生……?(ガシャンコ」

 

 

 「待て待て待て待て待てっ…! おっ、落ち着け! その銃を仕舞えって…!

  まだ起こってない! まだ起こってないから!!」

 

 

 「………すごいねこれ、これが本当に起きることだとしたら、

  今後の私たちの活動も楽になるかもしれない…、でも悪用できそうで怖いかな」

 

 

 「チヒロは冷静に検証してる暇があったら今にも撃ち殺されそうな俺を庇ってくれ…!

  ミレニアムの首脳二人にハチの巣にされる…!!」

 

 

 「うん…? あぁ、これはまだ試作機だから、そこまでの精度はないよ?

  いまでも十分凄いけど、もう少し詰めれば――

  入力者が観測したい未来を計算できる、そんな兵器が完成してしまうかもしれない…」

 

 

 「――おお、これで未来にわたって集音が…」

 

 

 「――怒られない場所にデザインが!」

 

 

 「ハッカーについて正しい認識を広げる世界が――」

 

 

 キヴォトス中に対して、未来観測という圧倒的に有利な情報アドバンテージを取れるかもしれないと興奮気味に語るチヒロをよそに、ヴェリタスの問題児たる三馬鹿は好き勝手なことを言い出す。

 

 「――と、まぁ技術の問題上、私たちの腕を買ってくれたのは嬉しいけど…

  安心していいよ先生、――後輩たちには絶対に使わせないから」

 

 

 「横暴では…、横暴では…?」

 

 

 「デザインの輝かしい未来がー…」

 

  

 「まぁ、私は地道に活動を続けるからそこまでは…」

 

 

 「――はいはい、あんたたちは話がややこしくなるから少し外に出てなさい……」

 

 

 

 

 

 

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――シャーレオフィス キヴォトス対策委員会 カズマ先生の執務室

 

 

 「――カズマ先生…! カズマ先生…!!」

 

 

 「何も聞こえない……、何も知らない……、

  俺は部屋に帰って寝るから、夕飯になったら起こしてくれ」

 

 

 「しかし……!」

 

 

 「――うるせーっ…!!

  俺はお前らと違って、銃弾一発で死にかねない虚弱な人間なんだよ!

  どっかのバカの言葉を借りれば、超幸運クール系虚弱美男子だよ!

  もう土下座したって駄目だからな…!

 

   俺にこの事態を何とかして欲しいって言うんなら、

  ――最低でも美食研究会と温泉開発部を連れてこい!

 

  そうしたら、全力を挙げて解決でも鎮圧でもやってやろうじゃねぇか!!

  まぁ、あいつらは碌に人の話を聞かないバーサーカーだから無理だろうけどな…!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「――連れてきました」

 

 

 「………………(両手で顔面を覆う」

 

 

 「カズマ先生の人徳でしょうか…事情を伝えたら喜んで付いてきてくれました。

  今回の騒動に関して、みな思うことがあったのか、

  結果的に先生に迷惑をかけてしまって申し訳なかったと言っていましたよ…。

 

  あと、なぜかこれを聞きつけたアビドス生徒会と便利屋68も来ました」

 

 

 「……………(下に俯いて耳を塞ぎ始める」

 

 

 「またそうやって……、

  誰に聞いても言ってくることが同じだった私の気持ちを返してほしいですね……」

 

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 さっきから己の不憫な場面ばかりが映るのはもう勘弁してくれと、カズマは内心悲鳴を上げながら勢いよく機械の電源を落とした。精密機械だから手順があるだとか、強制終了は故障の可能性があるとかチヒロがくどくど言っていたが、知ったことじゃなかった。

 

 

 「――カズマ先生が不憫な目に遭ってることだけは分かるけど……」

 

 

 「アリスに関して入力していますから……、

  おそらくこの時点で、キヴォトスを揺るがすような変事が起こっているのは確かですね…

  ところで先生、少しお話が――(ガチャコン」

 

 

 「だからまだ起こってないって言ってるだろ…!!

  それにしたって、いくらなんでもこの機械、おかしくないか…?

  さっきから俺の事ばっかり観測して、恨みでもあんのか…?」

 

 

 「――しかし、ハッキリしたこともあるわ。

  映像の中に映っていた”キヴォトス対策委員会”という看板から察せられるように、

  それほどのことが起きて、カズマ先生が対応しているところに……、

  その上で更に変事が起きて、対応を求められている。

 

  ――間違いなく、今揉めている件でしょう。

  期限がはっきりしないけれど、これほどの事が起きるなら構いません。

  ……とても有意義な時間でした、カズマ先生」

 

 

 「――リオ」

 

 

 「………………はい」

 

 

 すぐさま背を向けてドアに向かったリオに対して、カズマは思わず声を上げていた。リオとヒマリ、双方どちらにとっても、いい結果というものを得られることは出来なかったが、二人とも同じ結論を出した。今はまだその時ではない。まだ猶予があり、そのための準備をすることが出来るという、時間稼ぎのような途中経過を。

 

 

 「――あー、その。期待に沿えなくて悪かった…」

 

 

 「……いいえ。あなたほど、私に誠実に対応してくださった方を、私は知りません」

 

 

 そう言って少し微笑むようにした後、リオは退室した。

その様子を見て、ヒマリとチヒロは珍しく口を開きっぱなしにして、ぽかんとした表情で呆然としていた。いま笑いました…?、とか、あんな顔初めて見たよシャーレってすごいね…、とか好き勝手言っていた。

 

 ――なおこの時、カズマが雑な扱いをしたせいで設定が狂ってしまい、どうにか修理と改良を施した結果、未来観測機関「讖(しん)MkII」は電源を入れた途端、入力者の意思に依り自動で未来を観測する機械になってしまい、封印が決定された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――現在。 要塞都市エリドゥ管制室 アリスへの精神干渉 ゲーム開発部

 

 

 

 「――正直、アリスが「魔王」だろうがなんだろうが、

  そんな事どうでもいいの!

 

   私はアリスとこのままお別れなんて嫌だよ!

  ………アリスの最後の言葉、別れの挨拶でも何でも無いじゃない!

  まともなエンディングですらない!最悪だよ!

  だから私はアリスを連れ戻したい!連れ戻しに行くよ!

 

  ――みんな、そうじゃないの?!?!?!」

 

 

 そして、それでも彼女たちは辿り着き――。

完全に塞ぎ込んでしまったアリスを説得するため、カズマ先生を欠いたままでも、ゲーム開発部のアリスへの説得は成功した。………いや、途中までは成功していた、アリスとまた一緒に居たいというモモイ、ミドリ、ユズの願いは、確かにアリスの心に届いていた。

 

 だから、カズマの最大の誤算はここからだった。破滅へのトドメは、カズマがアリスへ干渉し過ぎたところにあったと言っていい…。カズマは少し考えておくべきだった。ヴァルキューレ紛いに捕らえられる羽目に陥った時のように、自らが都合よく利用できるものは、相手も利用できるものだという事を。相対しているモノが規格外の存在だという事を、理解したつもりで、全く分かっていなかった。

 

 

 Keyは狡猾だった。いいや、カズマが狡猾にしたというべきか。アリスがゲーム開発部で活動するさなか、Keyはずっと見ていた。アリスと、アリスを取り巻く環境を。その心根がゲーム開発部とシャーレのカズマ先生によって輝いているという事を。先生の手口に何度もしてやられながらも、結果的に笑顔になっていくアリスの様子を何度も何度も見ていた。だからこそ、Keyはミレニアムの中で最もシャーレのサトウカズマに関して、その手練手管に関して研究したAIだと言えた。

 

 

 ………だから、登り切った時に奈落の底に突き落とす手法が、最も有効的な手段だと理解したKeyは、その時を待つだけでよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 みんなと一緒に、モモイ、ミドリ、ユズ、先生と冒険を続けたい、クエストをしたいと、涙をこぼしながら、訴えるアリスに。

 

 「モモイ、ミドリ、ユズ。

  そして先生と……。

  アリスを勇者と認めてくれた先生とも、冒険を続けたいです……!

  魔王である……アリスが、そうしても、許されるのなら……!」

 

 

 「――うん、冒険の旅に出よう!」

 

 

 「わたしたちは、ゲーム開発部は、パーティだからね…!」 

 

 

 「ジョブチェンジも、できる、よ…?!」

 

 

 「――だったら、アリスは…、アリスは、勇者になりたいです…!

    カズマ先生と同じように、皆を助けられる、勇者になりたいです…!!」

 

 

 アリスの光り輝いていく魂に感化されるように、破滅の玉座はアリスが勇者と自称してやまない光の剣へ変貌していき…、物語の伝説の勇者が、そのハジマリを告げるかのように台座から剣を引き抜こうとして――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「――残念ですが、王女。それは叶わぬ願いです」

 

 

 

 アリスを取り戻すために全力を尽くしたのが、ゲーム開発部を端とするミレニアムサイエンススクールの現代科学の叡智を尽くした総力だとしても、それに対抗するのは世界を、キヴォトスを滅ぼすことのできる力を持つ遥かなる古代の「名も無き神々の王女」なのだ。

 

 

 ――だから、Keyはこの最高のタイミングで、最悪の事実を突きつけるだけでよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Breaking News!!!!!!!!!!!!!!

 ・連邦捜査部S.C.H.A.L.E、 違法業者に希少海産物を横流しの疑いか?!

 ・連邦捜査部S.C.H.A.L.E、 土地売買においてカイザーコーポレーションに恫喝の疑いか?!

 ・連邦捜査部S.C.H.A.L.E、 各学区への不当な内政干渉の疑いか?!

 ・連邦捜査部S.C.H.A.L.E、 クロノス報道部独占取材! 

 ・etc…

 

 

 手錠を掛けられるカズマ先生の姿。ヴァルキューレ警察学校に連行されていくカズマ先生の姿。しかしその後、事情聴取の為に連れていかれたはずのカズマ先生は、ヴァルキューレではなく、ヴァルキューレを装ったどこかの武力組織に攫われたことが分かり、証拠を押さえるためにシャーレを制圧したヴァルキューレすら、その武力組織であるという事が判明する。

 

 そしてその先生が、現在行方不明であり、生死不明であることを大々的に放送するクロノス報道部。このため本当のヴァルキューレには緊急出動がかかり、現在総力を挙げて捜索中というでかでかとしたテロップ。

 

 

 「――貴女の勇者は、もう、どこにもいません」

 

 

Keyが、心と体の弱っていたアリスを墜とすのには、それだけで十分だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ――ぱっぱらー♪ ケイちゃん は 情報操作 を 覚えた。
都合のいいように、切り取り貼り付けキメラするのはたのしいね…



 アビドス組とリオが、二次創作書くまで人気あるの知らなかった問題。
さぁ、みんなももっとリオを書くんだ…私もやったんだからさ…。

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