超法規的組織シャーレ で 仕事をしたくない サトウカズマ先生 作:奈音
もっともーっと★10もそれ以下も戴けないかなって…。
それではカズマさん、オンステージ。
――公安局局長室 カンナ
「――ふっ、不可能です!!」
「………そうだな、俺もそう思う。普通に考えれば無理だ。
だから、俺もいままでそんなことを考えたとしても、そんなバカなことはやらなかった。
だけどな、カンナ、お前は俺がどこに所属している先生なのか分かってるよな?」
「……それは、連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの先生で、
超法規的な権力を認められている組織の長で…」
「そうだな、超法規的な組織のTOPだ。
そしてその超法規的という意味は、とても範囲が広いんだよ…。
ひっ…じょ~に残念なことにな」
本当に残念そうに語るカズマ先生の姿勢は、公安局で様々な犯罪者と接してきたカンナから見ても虚偽を口から出しているようには見えなかった。先ほどから一貫して、面倒ごとから早く解放されたいといった虚脱感のような空気が感じられる。
「――たっ、確かに先生は全ての学区を超えて活動を認められておりますが、
それがなんだというのです?!」
「……なんだよ、意外と鈍いなカンナ。
じゃあ、正確に俺が認識してることを全部言ってやる。
連邦捜査部S.C.H.A.L.E
一つ、連邦生徒会長が立ち上げた超法規的機関であり、
強制法的執行権と武力鎮圧を許可されている。
一つ、連邦組織のため、全生徒を制限なく加入させることができ、
各自治区で制約なしに戦闘活動が可能。
一つ、本部所在地はサンクトゥムタワー、
部室であるシャーレオフィスはタワーから30キロメートル離れた外郭地区にある」
「――改めて聞くと知らないこともありましたが、
全体的なニュアンスとしてはキヴォトスの誰もが知っていることのように聞こえますが…?」
カズマはじとっとした視線をカンナに向けると、はいはいヴァルキューレ一年生にもわかるように教えてやるからノートの切れ端でいいから寄越しなさいと、国語の授業で筆者の意図を読めない残念な生徒を見るような目で見つめ、スラスラとペンを走らせて今言ったことを全て書き始める。
「………はぁ、言葉で言うと分かりにくいから全部書くぞ…で、
SRT特殊学園は
一つ、連邦生徒会長の直属として創設されたため、
連邦生徒会長の権限を以ってあらゆる自治区への介入が可能
一つ、キヴォトスの法執行機関における最高学府であり、
並の集団では1個小隊にすら太刀打ちできない実力者揃い
一つ、場所は…そういえば知らなかったが、
同じように連邦生徒会にアクセスしやすい場所にあるんじゃないのか…?」
――切れ端の一つ目に、連邦捜査部S.C.H.A.L.Eを。
――切れ端の二つ目に、SRT特殊学園を。
その二つを横に並べて、はいじゃあ、ヴァルキューレ新入生のカンナ君。この二つを納得いくまで何度も何度も見比べた時、分かることがあるよね?と出来の悪い生徒を見守るような目線で問いかける。
「これが一体何だと………………?
………――――!!!
そ、そんな、これでは、これではまるで――――!!」
「――そう、見比べてみると分かるだろ?
連邦捜査部S.C.H.A.L.Eってのは、責任者を変更して、
人事を自由裁量できるようにしただけのSRT特殊学園と何ら変わらない。
そして連邦生徒会長ができることなら、俺にもできるようにされている。
SRT特殊学園を再び創設するくらいのことは、俺には可能なんだよ。
まぁ、可能であるということと、実行可能であるかということには
天と地ほどの差があるんだが…。
……………それにしたって、俺は初日にこれに気付いてから、
連邦生徒会長とやらは馬鹿なんじゃねーかと思ったよ。
……まぁ、SRTを解体しないといけない事情があったのかもしれんが、
それは今はいい」
「せ、せんせい、あなたは…」
超法規的組織。その意味を正しく理解してしまったカンナは、目の前のカズマ先生が、文字通りキヴォトスという世界全てを支配出来る位置に君臨しているということを理解する。サンクトゥムタワーなんてなくても、いつでもその気になれば、どうとでもすることが出来る。それが連邦捜査部S.C.H.A.L.E………。
「――ほらみろ、そういう顔になるだろ?
ただでさえキヴォトスなんてのは治安最悪の場所なのに、
そこの治安維持組織のTOPがそんな眼で俺を見るってことは、
それに気が付いてるやつも当然、そういう視線で俺を見ることになる。
――そうするとどうなる、排除を考えるんじゃないか?
…………まぁ俺一人なら逃げるか、極力関わらないようにしたいな。
だからこそ俺は、自衛の為に何かを手に入れたとしても必ず手放さざるを得なかった。
………危険だと思われた時点で終わりとか、厳しすぎると思わないか?」
溜息を吐きながら両手を広げて肩をすくめるカズマ先生を見て、生徒たちの為という建前を付けて、先生がいままでやってきたことをカンナは思い出す。
そういえばそうだ。生活安全局にフブキを慕ってたくさんの生徒が入学した一件にも、確かカズマ先生が一枚噛んでいた。思ったより優秀な生徒もいて、どこの部署にもフブキを慕う娘たちが配属されることになってしまった為、強制的に次期生活安全局局長に内定させられてしまったフブキが怒っていたことを思い出す。
カズマ先生に絶対にドーナツ一年分奢らせてやる!と息巻いて、当の怒りを向けられたカズマ先生も、そんなんでいいのかと言わんばかりにポンと公式ドーナツ三年権を渡していたという話だったはずだ。そのドーナツを使ってさらに影響力を高めたフブキはいまや生活安全局の要となりつつあり、だからといってそれ以降、特にカズマ先生からの介入はなく、首を傾げている生徒が多かったのを覚えている…。
「――な、なるほど、そう考えると先生の行動の一貫のなさには
頷けるところが多いように思えます…
常に仕事をしたくないようなそぶりを見せる割には、
しっかりお仕事をされていますし、
温泉、各学区への情報網、裏社会の利権…そういった莫大な利益を
手に入れる機会が沢山あったにもかかわらず、そういう素振りが全くない…」
「――いいや、最初から最後まで一貫してるぞ。
俺はこんな危ない役職なんか、とっととおさらばしたい…。
そのために、いやいやであっても、着地点が見えてたから頑張れた。
まぁ着地先はなくなったわけだが…。
だいたい仕事のやり方にも注意しないといけないのが辛すぎるんだよ…。
危険に思われないために、ある程度、善意と偶然を装う必要がある。
そしてなによりも、俺のやり方には善意の協力者が大量に必要だ。
故意的であったとしても、その程度の言い訳が付く程度にうまく立ち回る必要があることを、
実質的に強要されているってのはどんなイカレ野郎ならできるって話だが…
幸い俺はなんとかなった…、今まではな。
だけど俺は銃弾一発で死の危険性があるからな、いつも考えてたよ…。
――それがいまじゃこの有様で、後始末が必要なわけだが…」
ぐっと、カズマ先生がまえのめりになり、その姿に先程まで感じていた畏怖のようなものは感じないが、なにかを求めるような圧を感じた。
「しかしそれでは、さきほど仰ってたようにカズマ先生の身が危険に…」
「――だーかーら、お前に相談してるんだよ…、カンナ。
これを認めるか、認めないかをな…」
「け、決定権は私にあると…?」
「いーや、決定権は俺にある、そこは変わらない。
その後の全責任も俺が取る。
……さっきのでわかっただろ…?
そういう眼で見られないような、建前が必要なんだよ。
俺もさすがに命が惜しいからな…、無理やりことを進めようとは思わない。
――だからお前がこの話を拒むなら、この話は終わりだ」
終わり終わり、この話は終わりだなっと、カズマ先生は先程まで強い覚悟を見せるようにしていた姿勢を捨て去って、椅子の背持たれに体を預け、なにもかも投げ出したいような態度を取り始める。カンナは額から嫌な汗を流しながら、もしかしたらここがキヴォトスの分水嶺かもしれないということを、いやでも確信させられる。
――ま、間違いない、この人、私が断ったら逃げる気だ…っ!
いやいやまさかと思いながらもカンナは想像を巡らせる…。今のキヴォトスの状況でそんなことが可能なのかは不明だが、たびたび都市伝説のように語られることのある、シャーレのカズマ先生の不思議能力というのもあながち嘘ではないのかもしれない。
あれだけ怒り狂って、こちらを説得するようなことを言っておきながら、この人はいざとなったら自分だけでもなんとかできると確信できるだけの隠し玉がなにかあるから、その態度にはどこか余裕があるのだ…。まずい…。
――ダラダラと汗を流し続けながら真剣に考えるカンナの考えはまさしく正解であった。カズマもこの世界にいい加減に慣れて来て、多くの人との縁もでき、離れがたく感じていることは本当だが、余りにも最速で事態を解決に導いてきたため、帰属意識が希薄であり、執着も余りなく、いざとなってしまえば、そしてこの話が通らなければカズマは全てを投げ出してでも、ここまでことが進んでも未だに使うことを躊躇している手段を全力で使って逃げる気満々であったのだ。
しかし、ここでの落とし穴が、カズマは自分自身に向けられている感情の矢印について多少は気付き始めてはいるものの、そこまで深刻に考えていないということである。刺され死ぬかもしれない未来がそれなりに現実味を帯びてきていることを、悲しいかなカズマは全く把握できていない。
場合によってはそのまま言い訳出来ないようにされる可能性を少しは考えた方がいいのだが、ハーレム宣言を堂々とする割には、その心根は意外と臆病童貞ヘタレで一途であることも、少しずつバレてきているので、実は女性関係に関しては既に問題だらけである。
そんな風に、ぼーっとしているカズマの表情の移り変わりを見ていてようやくカンナは得心したのか、決断への迷いの為に重く閉ざされていた口を開き始める。
「……その、それは結局、決定権は私が握っていて、
頷かないなら、この事態を何とか出来る方法を
私が捨て去ることになる、という風に、
私を脅迫しているのと何も変わらないのでは…?」
「――脅迫? おいおい人聞きの悪いことを言うのは止めてくれよ。
決定権も、その後の全責任も俺が握ってるが、
その選択権を、カンナの立場をおもんぱかって委ねてるだけだって。
建前がないと、強権的に動くのは危ないんだよ…。
――というかさっきも言ったが、俺は普通に命が惜しい。
お前が助けを求めてるから、珍しく説得みたいなことをしているが、
今すぐにでも逃げだしたいのは今も変わってないんだよ。
――だからお前がこの話を拒むなら、この話は終わりだ」
「――あっ、貴方という人は……っ!!!」
のらりくらりと、堂々と情けないことをなにを悪びれることもなく言い出したカズマに思わず声を荒げるカンナだが、そんな態度にもどこ吹く風というような風のカズマは、あぁようやくこっちに来る気になったのかと呟くと、おもむろに席から立ち上がり、局長室のドアを開けて誰もいない廊下に向けて声を放つ。
「――おら、ホームレス共!
途中から聞き耳たててたんなら、いい加減こそこそしないで入ってこい!」
ひえっ、とか、なんでいつもバレるんでしょう、とか、くそぅまた負けた、とか、かくれんぼでどうしても勝てないのはなんでだろうね、とか言う四つの異なる声がしつつ、SRT特殊学園の制服に袖を通した四人の生徒が姿を現す。
意外なことに四人はカズマ先生の前に即座に整列して敬礼を行った。しかし、カズマ先生はその意図があまりよく分かっていないようで、いつまでも首を傾げて何もしない。その様子にしびれを切らしたのか「答礼してください!」とリーダー格の生徒が教練に関しての面倒を見ていた。
その顛末を見ている他三人の生徒がカズマ先生に向ける視線も、非常に柔らかいものであり、彼女たち四人からカズマ先生に対する態度が信頼に溢れていることは明らかだった。特にリーダー格の生徒のあれはちょっと……、なんだろう、私はカズマ先生と深刻な話をしていたはずだが、一体何を見せられているんだろう…。
しばらくして、四人ともの気が済んだことを確認したのか、再びカズマ先生は、ここに居る全員に語り始めた。心底いやそうに。
「――聞いての通りだが、これはまだ決定事項じゃない。
なんせ肝心の生徒からも意見を聞いてないしな。
……加えて人員も足りない、校内アンケートをする必要がある。
SRTからヴァルキューレに編入した生徒たちに、お前らホームレス共みたいに、
”この状況を打開できる可能性があるがどうする?”と聞いた上で、
まだ気合が入ってるかどうか委ねるというアンケートをな」
「――そこまで考えておられるのに、あんな言い方をするなんて、狡いお人ですね…」
「………なんだよ知らなかったのか? 大人は狡いんだよ。
もう一度肝心なことを言っておくぞ。決定権は俺にある、そしてその後の全責任も俺が取る。
――ただし、その選択権はお前にある。
はいかいいえだ。二択なんだから、いいから早く決めてくれ…。
連邦生徒会防衛室直属 ヴァルキューレ公安局局長 尾刃カンナ」
今後の状況判断に関する材料はすべて出そろっていた。
もうこれ以上抗う手段などなく、ただ絶滅するまで磨り潰されていくだけの先の見えていた消耗戦が、積極的攻勢に出て事態の解決への展望を臨むことのできる、たったひとつの冴えた一撃が、その後の全てのリスクを背負うと宣言したシャーレの先生によって、夜明けの光明の如く示されていた。
カンナはいろいろな意味で観念した。
一緒に仕事をしていた時に分かっていたつもりではあったが、それは片鱗に過ぎなかったのだ。「シャーレ」、「シャーレ」と、その組織について称賛の声を上げない生徒は、いまやキヴォトスにいないと言ってもいい。その意味が、確かにカズマ先生が最初に言ったように、大好きな屋台のおでんみたいに出汁が良く沁みて、深くその身に沁みて、実感することが出来た。
だから――。
――カンナは覚悟を決めるかのようにかたく目を瞑り……、顔中を苦悶にゆがめながら、ゆっくりと、うなずいた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――ヴァルキューレ警察学校 大講堂
「――連邦捜査部S.C.H.A.L.E緊急事態対処マニュアルに基づき、
本来なら連邦生徒会審査条項に基づいた審査を通す必要があるところを、
平常時の連邦生徒会の行政執行状況に比し、
明らかに機能していないことが強く認められるため――
――ここに連邦捜査部S.C.H.A.L.Eに認められた特権の行使を
連邦生徒会防衛室直属、ヴァルキューレ公安局局長の立会いのもと、
認めるものとする!!
………カズマ先生、壇上へ」
カンナに連れられて、あれよあれよという間に厳粛な服装に着替えさせられ、
ヴァルキューレにいるだけかき集められた元SRT学園生徒が、厳正にい並ぶ大講堂で始まった余りにも仰々しい儀式にカズマはおおいにたじろいでいた。
それに加えて見晴らしの良い場所にクロノス報道部が配置されており、様々な角度からこの様子を捉え、キヴォトス全土へ響き渡らせる準備は万端と言わんばかりに眼がギンギンになってるのが見受けられて、ますます嫌気がさしてきた。
「(――おいおいここまでやるって聞いてねーぞ、なんでこんなに仰々しいんだよ…!)」
「(……先生は御存じないかもしれないのですが、今外で起きていることも――
それにSRTが対処することを許可できる存在がいるということも、
それほどの事態なのです)」
「(―――ふっ―――――ざけんな!! じゃあなんで事前にそれを俺に教えないんだよ!!
パパっとやってチャチャっと済ませようって話だったじゃねーか!!)」
「(えぇ、ですからパパっとやってしまいましょう…、
大丈夫です大丈夫です。
カズマ先生が、さきほどまで威勢よく仰っていたことをそのまま言うだけですので…)」
「(………言うってお前……あーっと、えーっと……そうそう!!
ほ、ほら、あれだよ、あれあれ!! 俺にも心の準備があってだな…!!!)」
「(………事前にこのことを伝えていたら、先生はここまで来ていただけましたか…?)」
「(――そっ、それは…。 あ、あったりまえだろぉおお! きてたきてた!
なんてったってキヴォトスの危機だからな…!(ダラダラダラダラ…
さっ、流石の俺でも、そんな薄情なことするわけないって…!)」
「(――そうですか、それを聞けて安心しました。では、よろしくお願いしますね…)」
スススッ、と、壇上から脇によけていくカンナ。
「(……待て、待てって、お願いします待ってください!!!
ちくしょう…ちくしょぉおおおおおおおおお!!!
ハメたな!ハメやがったな、カンナァァァァァァァアアアアアアアア!!!!)」
「(――往生際が悪いですよ…、それに、貴方はとてつもないおひとよしと聞いています。
最前列にいる彼女たちの願いを、貴方は裏切ることが出来るのですか…?)」
カンナからそう指摘されてから初めて、カズマは彼女たちを見た。
そう、見えてはいたが、ちゃんと見ていなかったものが、カズマの視界に飛び込んでくる…。
――月雪ミヤコ、空井サキ、風倉モエ、霞沢ミユ。
SRT特殊学園が廃校となっても諦めず、何もない公園で、叶うかもわからない明日の為に必死に足掻いてきた生徒たち。心のどこかで、きっとこのまま水面に浮きあがれないかもしれないと分かっていても、彼女たちは溺れ続けることを選んだ。
それは何よりも難しいことだと、カズマは知っていた。
かつての自分を知る仲間からも馬鹿にされ、親しい者からも反対され、誰からも認められず、虚勢を張って生きていくしかない。疑う余地もない狂人の所業だ。狂気に正面から真摯に向き合っているからなんだというのか、そんなことで生きて行けるわけがない。
アクセルで暮らしてきた時も、キヴォトスに来てからもそんな狂った連中とばかり縁がある。もううんざりだもういい加減に――――
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
四人は黙って待っていた。
いいやその後ろの元SRT特殊学園の生徒たちも、久しぶりの制服に身を通し、黙して見上げていた。その許しを与えることのできるカズマを、ただただ見ていた。
「(………ぐ、ぐ、ぐ、ぐ、ぐ。 ちくしょぉおおおおおおおおおお!!!!!
おぼえてろよカンナ!!)」
「(――申し訳ありません、最近激務だからか物忘れが激しくて…)」
局長室でやられたことに関する意趣返しはこの辺りでいいかとカンナは考え、カズマ先生に原稿を手渡す。バシッと手荒くそれを受け取ったカズマは、本当に局長室で言ったとおりの段取りが書かれていることを読み取り、もう一度、会場にいる馬鹿共の群れを見る。
どいつもこいつもこれから始まることが分かっているのか、眼がギラギラとぎらついて、はやく獲物にかじりつきたいと言わんばかりの視線がカズマを貫く。総司令官の号令を待つ、キヴォトス最強の生徒たちの沢山の視線が訴えるところにとうとう根負けしたカズマは、この狂人共が!しょーがねぇなぁとだけ溢し…
――仕方なく、誠に遺憾だが本当に仕方なく壇上に立つ。
「――これより、臨時開校式を行う――」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「――――、―――――――――。」
粛々と儀式は進み。
「――生徒会長、月雪ミヤコ
副会長、空井サキ
会計、風倉モエ
書記、霞沢ミユ
以上四名を、連邦捜査部S.C.H.A.L.E直属 SRT特殊学園、
第01期SRT特殊学園生徒会に任命し、
現在キヴォトスで発生している異常事態に対し、
迅速にこれを解決することを要請する――」
その言葉を受け取る彼女たちの瞳からは、鳴き声もないまま透明な雫が滴り落ちて………。
――ここにキヴォトス最強の、
その後カルバノグの兎と呼ばれる者たちが、再びキヴォトスに降臨した。
――というわけでカルバノグの兎編スタートラインでした。
これがやりたかったんだよ。(兎なので「鳴き声」は誤字じゃない…
これにてムリゲー第二部前半戦、キリがいいのでいったん終わりです。
中編後編となるかもしれませんが、いまのところ前後編の構成
まだ構成だけしか作ってないので、後編はまだ当分無理かな…(誰か代わりに書いてくれないかな…