超法規的組織シャーレ で 仕事をしたくない サトウカズマ先生 作:奈音
日間ランキングで13位に到達していて、感激の極みです。
それはそうと、走り切りました、皆さんまた逢う日まで。
Breaking News!!!!!!!!!!!!!!
・美食研究会、風紀委員会と協力して違法業者を摘発!
・美食研究会、C&Cと協力して違法業者を摘発!
・美食研究会、正義実現委員会と協力して違法業者を摘発!
・美食研究会、クロノス報道部独占取材!
・etc…
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――カズマは土下座していた。今回はおふざけではなくごくごく真面目な態度で反省の意を示している。怒り狂った表情をしたフウカがドスドスドスと力強く荒い足音を立てながら押し迫ってくるのを、ジュリが引きずられながら食い止めようとしている声が聞こえるが、まぁ止められないだろう。
――バタン!!!とドアが吹き飛びそうなほどの轟音がし、怒りの足跡がカズマの体が浮き上がるほどに響いてくるのを感じながら、骨が折れるくらいで許してくれるといいな、と殊勝なことを考えていた。
―――ダン!!! と力強くカズマの頭を踏み砕きかねない勢いで足が振り下ろされる。
幸いにもそれはカズマの髪の毛を何本か散り散りにするだけの被害で終わったが、その衝撃だけでもカズマは数瞬の間は意識を失っていた。
「――カズマ先生…」
あっ死んだ。これは死んだわ。いつもあんなに優しいフウカが出していい声じゃない。
「――今から私が聞くことに素直に答えてください(ジャキジャキジャキジャキッ!!!」
「ま」
「――ま?」
「まことに申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ!!!!!」
魂からの叫びである。
カズマはここに命を賭けていた。他に手段はなかったとはいえ、フウカにどんなことをされても仕方のないことをしたという自覚がカズマにはあった。
そして、カズマは謝るだけで、それ以上の抗弁は一切しなかった。ただただ誠実に謝意だけを伝え、どういう事情でこうなっただとか、だから許してほしいだとかいうことをカズマにしては珍しいことに、一切口に出さなかった。ちぎれかけたストラップみたいになってるジュリが、必死にカズマを庇うような発言をしてなんとか宥めようとしているが、どんなにジュリがカズマを庇っても、カズマは一切発言をせず、土下座の姿勢を崩さなかった。
そうしてそのまま時間が経ち、泣き喚くジュリの発言から、今までカズマとジュリが裏で暗躍していた事実の裏取りが完全に済んでしまい、どんどんと、怒りも、嘆きも、悲しみも、殺意も、感情をつかさどる喜怒哀楽の全てがあっという間に顔から抜け落ちていったフウカは膝から崩れ落ちた。
――そうしてしばらくしてから泣いた。ガチ泣きである。
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――数日前。美食研究会とフウカ。
「――なるほど、なるほど…。
ここまで取り返しがつかなくなってようやく気が付きました。
いえ、これは私たちにとって、とてもいい結果で終わってしまっているという時点で、
わたくしたちの負けですね…フウカさん」
「……なにがよ、あんたたちの評判が良くなったのはいいことなんじゃないの?」
「最近、都合よく合法的に高級食材が手に入って楽チンですよね★」
「もーマグロは飽きたよー、お魚じゃなくてお肉が食べたいー!」
「イズミ! 贅沢言いすぎ! その魚がすっごい高いの知ってるでしょ!!」
「焼いて煮て漬け込んで蒸して刺身にして丼にして、さんざん食べたからもういいよー!」
「それはそうかも…ハルナ! 新しい食材の情報はないの?!」
「――それがとても都合のいいことに、
私の耳に新しい高級食材の情報は入っているんです。今度はお肉です」
「楽しみですね★」
「やったー、早くいこーよ!」
「――えぇ、ですがその前に、皆さんに私の推理を聞いてほしいのです。
……おそらくフウカさんが一番ショックを受けると思うので、気を強く持ってください」
「あんたたちに拉致監禁されて、
調理させられてること以上にショッキングなことなんか存在しないわよ…!」
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――数十分後。美食研究会とフウカ。
「――フウカさん…」
「ものすごい鬼の形相をしていましたね★」
「途中から難しくてよく分かんなかったけど、カズマ先生のおかげってことー?」
「ちゃんと聞いてなさいよイズミ!
私たちにとってはそうだけど、フウカにはそうじゃないって話だったでしょ?!」
「えー、でもこれってフウカの為にもなるって話じゃないのー?」
「そんなわけないでしょイズミ! そこまで踏ん切りがついたらあんなに怒らないわよ!」
「――ここまで辿り着くために被ったフウカさんの気持ちを無視していいなら、
あるいはそうかもしれません…まぁ、私たちに言えたことではないのですが」
「私たちも手のひらで転がされちゃいましたしね★」
「――ぇえ。
私たちは、まるで御仏の掌(たなごろ)の中ではしゃぐ、
孫悟空のような存在だったと言えるでしょう。
……だからこそ、私たちも確かめに行く必要があります。
その差し出された手の上に乗っているのが、
五行山なのか、緊箍児(きんこじ)なのかということを――」
「えー!難しいことはもういいから、お肉食べに行きたいよー!」
「うーん…それは私もそうかも、ハルナ! 肉の後じゃダメなの?!!」
「おそらく今すぐ行かないと、どちらも間に合わないですね★」
「――私たちの主義に反しますが…、今回ばかりは確かめに行くことを優先しましょう…。
……ふふふっ、それにうわさに聞くところによると、
シャーレの先生はとてつもないお人好しだとか。
――ですからおそらくは、
私たちの目当てのそのお肉も、いままでのお詫びとして先生から戴けるでしょう…」
「なんでそんなことが分かるのよ、ハルナ!
お肉があるかどうかなんて分からないじゃないの!」
「そーだよー。わたしもうお腹すいちゃったから、
分かってるお肉の方に行きたいー!」
「……ふふふっ、そうは言いつつも皆さん同じ方向に走っているではないですか。
――さぁ、行きましょうか…。
先生だからという理由で、生徒の為にここまでいらない苦労を背負ってくださる仏様の顔を、
拝みに行くとしましょう…」
「結局そういうことですね★」
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――連邦捜査部S.C.H.A.L.E、 佐藤和真先生についての簡易報告文書
着任して即座に同時多発テロを鎮圧、翌日返す手で裏社会のテロに関わった生徒も関わらなかった生徒もほぼ全てを掌握、そのすべてに影響力のある生徒を代理代表者に立て組織化。組織化された集団を社会奉仕活動に割り当てつつ、彼女たちの衣食住を確保、その功績を各学区に認めさせ、そのほぼ全てを各学区へ入学させることに成功させる。
この時点で各学校の組織的情報は連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの先生に筒抜けになる可能性が浮上したが、抗議もできず、むしろ社会全体として喜ばしいため文句も言えない。
この事態を受けてゲヘナは、連邦捜査部S.C.H.A.L.Eに温泉開発部と美食研究会への対応を要請。そこから数日で温泉開発部が連邦捜査部S.C.H.A.L.Eとの協賛宣言を発布。この時に、連邦捜査部S.C.H.A.L.Eは元SRT特殊学園の生徒を本人たちの同意を得て徴用。彼女たちは先生を護るということに対し、非常に勤勉であり、立ち入る隙を与えなかった。
そして現在、キヴォトス中に巻き起こっている温泉ブーム。この仕掛人も連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの先生であり、先生がキヴォトス中で広く慕われるようになったきっかけでもある…、温泉開発部を説得するために、ここまでするとは流石S.C.H.A.L.Eと称賛の呼び声が止まらない。
そして過日、連邦捜査部S.C.H.A.L.Eが、とうとう美食研究会との交渉(餌付け)に成功したという公式発表が、キヴォトスの全ての人間に激震を以て伝えられた…。
「――ふぅ、こんなものでしょうか」
「なんだノア、なに書いてるんだ…?」
「…ふふふっ、何だと思いますか?」
「――おいやめろ。
お前がその微笑みを浮かべている時は、新しい俺の弱みを握った時だろうが」
「そうだったでしょうか…?」
「――そうだったでしょうかじゃねーよ!!
【カズマ先生の一日記録簿】とかいうヤバゲな冊子をユウカが熱心に読んでるのを、
この前見つけて取り上げようとしたら
あいつ顔真っ赤にしながら、これで先生の弱みはわたしの物ですね!
―-って叫びながら逃げて行ったんだぞ!!」
「――あぁあの高く売れたあれですか…。
ユウカちゃんが買ったんですね…そうですか…ふぅーん」
「――売り飛ばすなってあれだけ言ったろうが畜生!! ちくしょう…ちくしょう…。
ノアが有能すぎて、追い出したらシャーレが回らなくなるから、
文句を言うことしかできねぇ…。
――覚えてろよノア…いつか絶対泣かせてやるからな…」
「…ふふふっ、そんな時が来るのを、楽しみにしていますね?」
「――余裕ぶりやがって。 …って、もうこんな時間か。
すまんノア!
ゲヘナの連中が俺を盛大にもてなしてくれるらしいから、ちょっくら行ってくるわ。
あと頼む!」
「――はい。ではいつもの時間になったら建物を閉めておきますね…」
「おう! ……あ、そうだこれ渡すの忘れてた。――ほれキャッチ!」
「――わっ、っとととっ…カズマ先生、これは何ですか?」
カズマ先生は、説明しているかというよりは、まるで自分自身に言い聞かせているかのように、分かるような分からないようなことを語り始めた。不安そうな、嬉しそうな、なんとも言えない声で、後のことは託したと言っているかのような声で、いつもいつもあんなに強烈な存在感のあるカズマ先生が、その時ばかりはそのまま消えてしまうんじゃないかと思うような声だった。
「……なんつーか、状況が前と全く同じなんだよな」
「だから保険だ保険…」
「俺の嫌な予感が当たらなければ、それはただの金属の塊だからなー…」
「まー心配するなって、多分大丈夫…だと思う、いややっぱりダメか…?」
「――もう…、どっちなんですか?」
「…いややっぱダメな方で考えといてくれ、だからもしもがあったら、頼むぜ全権代理」
「――え?」
……そして、その日、カズマ先生は帰ってこず、いつもならマメに送ってくるはずのモモトークにも反応がなく、夜は更けていった…。
――――――――――――――――――――――――――――
あの後、妙な胸騒ぎが収まらなかったノアは、シャーレの戸締りをした後、そのまま泊っていった。投げ渡された信頼の証について考えることもあり、なかなか寝付くことが出来ず、何度も寝返りを打ってはそれを握りしめて。
そして、なかなか寝付けないまま夜が明けようとした頃、ノアの携帯電話がけたたましく鳴り響いた。
「――はい」
≪――ノア! いまどこにいるの!!!≫
「……心配をかけてしまってごめんなさい、ユウカちゃん。
シャーレでの仕事が終わらなくて、そのまま泊ってしまって」
≪・・・・・・ということは今シャーレの戸締りは出来ていて、そこにノアしかいないのね?!≫
「…? はい、そうですけれど?」
≪――だったら今すぐテレビつけて! そして今すぐ探しはじめて――――≫
ユウカの指示通り、テレビを付ける。そして――
Breaking News!!!!!!!!!!!!!!
・連邦捜査部S.C.H.A.L.E、 違法業者に希少海産物を横流しの疑いか?!
・連邦捜査部S.C.H.A.L.E、 土地売買においてカイザーコーポレーションに恫喝の疑いか?!
・連邦捜査部S.C.H.A.L.E、 各学区への不当な内政干渉の疑いか?!
・連邦捜査部S.C.H.A.L.E、 クロノス報道部独占取材!
・etc…
「……………………………………………………………え?」
≪――今すぐ探し始めて!ヴァルキューレが来る前に! 先生の無実を!!!≫
ノア以外、誰もいないシャーレの執務室で、テレビから流れる音と、その光に照り返しを受けて輝く全権代理のバッチだけが――
超法規的組織シャーレ で 仕事をしたくない サトウカズマ先生 【第一部 完】
(短編)サトウカズマ先生、完!! でいい気もする。
そもそも短編のつもりで書いてたし、許して、許して…。
誰か、お願い…お願い…私の代わりに続きを書いてください…(懇願
第二部…? 知らない子ですね…。(投獄生活
■おまけ
いままでの本作アビドス時系列を概要だけ書いておきます。
(心配している方が多いので
一話 アビドスから雇われ不良学生排除
二話 ヘルメット団、アビドス社会奉仕(なぜか便利屋68もいる
三話 土地が少し戻ったアビドスに入学希望生徒続出
四話 シャーレ温泉開発隊到着、アビドス生徒会発足
五話 アビドス温泉郷経営開始、継続的な金銭収入が発生
(協力組織便利屋68、外部委託の治安維持組織として温泉事務所獲得
六話 元アビドス対策委員会総出で(なぜか便利屋68もいる、
菓子折りを持ってシャーレを訪ねるが先生不在