超法規的組織シャーレ で 仕事をしたくない サトウカズマ先生   作:奈音

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 みなさまのおかげで評価も爆登りで、ランキング等で10位以内に入ったのを確認したので六日目の連続更新です。(★10もっともっとください

それはそれとして、もう本当にそろそろ無理よ…


六話 美食興新倶楽部シャーレ

 「――フウカがいない…?」

 

 「はい、ついさきほど、連れ去られてしまって…」

 

 「――いつものやつか?」

 

 「いつものやつなんです…」

 

 「いつものやつかー…」

 

 部長がいないとクレームだらけになってしまうので困ります…、と悲しげにジュリが呟くが、まぁそれはそうだろうなという感想しか出てこない。

 このジュリときたら、なにをやっても食事の質を悪い方向に変質させてしまう不思議な体質を備えており、最終的に出来上がった食事を給仕させるだけのために、スープをおたまで掬わせ、米をしゃもじで盛りつけさせ、焼きあがった魚をトングで掴ませても、味が変わってしまうのだ。

 

 俺も何を言ってるのか分からないが、実際に口にしたときはもっと意味が分からなかった。フウカが何を思ってこいつを給食部に入れたのかさっぱり分からないが、もしかしたら給食部にクレームが多くて困るとフウカがいつも溢しているのはジュリのせいなのでは…?

 

 うーん、盛り付け終わった皿を給仕させるだけならなんとかなったから、最低限のラインは満たされているのか…?色々と無駄なことを考えていると腹の虫が鳴り始め、そういえばまだ何も食ってないなとカズマは思い「先生まだなにも食べて…? では私が」というジュリを押しのけて厨房に入る。

 

 「いいかジュリ」

 

 「はい」

 

 「お前の作る飯は不味い」

 

 「そ、そんなぁ…」

 

 「俺はこの前、限界までお前に付き合った、俺への報酬のはずの食事会でな。

  ――だから言う権利はある。

  ……いや本当にマジでなんでか分からないから今度ミレニアムで検査してもらおうぜ…。

  具体的に言うとお前が作った料理を成分表示してもらう。

  少しでも原因がわかればフウカも助かるだろうしな」

 

 「カズマ先生…!!」

 

 「だから俺の飯は俺が作る、いいな」

 

 「はい…」

 

 シュンとして悲しげにするジュリだが、感情に引きずられるままこいつが作る飯を食べてしまえば、下手をすると夜が明けるまで意識を失いかねない。今日はそんな無駄なことをしている暇がないので、ジュリからエプロン、三角巾、マスク、調理用手袋と必要なものを借り受けた上で、料理スキルを活性化させる。

 野営や遠出の時の為に覚えた旅用便利スキルを、まさか本格的な厨房で使うとは思ってもみなかったが、レベルを上げれば上げるほどおいしく作れる料理スキルは便利なので、とりあえず家庭料理レベルに調整しながら食材を漁り始める…。

 

 牛肉はなんか使うのが悪いから、安い海外産の豚肉とかでいいか…。

 

 「先生」

 

 「なんだジュリ、俺の今日の昼めしは豚丼にするからお前も食べるか?」

 

 「それは是非! …じゃなくて、その、先生が最近こちらに来られてるのってその…」

 

 「風紀委員会のチナツから依頼を受けてここに来てるのは知ってるだろ」

 

 「――はい、温泉開発部との交渉には成功したので、

  次は美食研究会を大人しくさせるためにこちらに来ていると、先日伺いました」

 

 「…正直気が重いんだよな。どうにかした温泉開発部はまぁいいんだ。

  組織的な破壊活動として見れば厄介極まりないが、

  全体としての方向性はまとまりがあるから、

  TOP二人相手に格付けできれば、まだ制御できた」

 

 「普通出来ないと思いますが…」

 

 

 ご飯は炊いてあったのが残っていたので、しゃもじでよそい、調理した豚をどんぶりに盛り付けて、片手間に用意した味噌汁を付け合わせる。

 

 

 「…出来たからいいんだよ、あれ以上はもう無理だが。――ほれ飯だ」

 

 「――わぁ! 私先生のご飯好きです!」

 

 

 無人の給食部で、端の机を使って二人は対面になり、いただきますをして夢中でご飯を食べ始める。

 

 

 「――俺は作ってくれた飯を食う方が好きだけどな…。

  フウカまじでシャーレで働いてくんねぇかな…。

  ……はぁ。とにかく美食研究会の犯罪経歴を追いかけて、

  どういうやつらで、何が好きで何が嫌いで、

  どういう考えを持って行動してるかを、ずーっと調べていたわけだ」

 

 「――調べて何か分かりましたか?」

 

 「まぁ、悪い奴らじゃないんだろうなってことは分かった。

  ――お、まぁまぁうまいな、流石俺」

 

 「――確かに、給食部が襲撃されたときは助けてくれたりもしましたし…あ、おいしい」

 

 「……拘り方や対応が狂ってるだけで…、まぁその時点でダメなんだが…。

  俺が知ってる狂人共と同じで、狂気に対して誠実ではあるんだよな」 

 

 「先生、無理やり褒めなくてもいいんですよ…?」

 

 「…違うって、だから俺はある意味で諦めた。

  こいつらに温泉開発部みたいな手は使えない、じゃあどうするか…。

  …んー。時間的にそろそろだな、ジュリ、テレビつけていいか?」

 

 「…はい? どうぞ?」

 

 テレビを付けるなり緊急ニュース速報が入り、いつものメンツのクロノス報道部が、

美食研究会がトリニティ学区内で行われていた違法な競売所を襲撃し「ゴールドマグロ」を奪取、事態を聞きつけた治安維持組織から逃走中(LIVE!!)

 

 ――というデカデカとしたテロップが目に飛び込んでくる。

 

 映像にはいつもの美食研究会と簀巻きにされたフウカが映っており、爆発と銃撃が絶え間なく飛び交いまるで映画のようだ。……あれ?とジュリはいぶかしむ。「ゴールドマグロ」という文字列に違和感を覚える。ここ数日にわたって、各学区の違法な競売所で摘発された魚は全てが「ゴールドマグロ」であり、供給源は何処だ!という話もニュースになっていなかっただろうか。

 

 ここ何日も、先生と一緒に、なぜか都合よく二人しかいない食堂でご飯を食べていた時、いいや違う。その前の、一緒に魚を仕入れに行った時。他の部員と一緒に船を借りて釣りに行った時。その後から急速に、いつも「ゴールドマグロ」がテレビで話題になっていて、何を話したっけ…。私も頑張って秘密にはしていたけれど、いろいろなことが起きて…。カズマ先生は何て言ってたっけ…。

 

 「俺たちがこの前大量に釣り上げたゴールドマグロ」

 「珍しいこともあるもんだ、俺たちは博物館に寄付したのに」

 「水族館に寄贈してよかったな!」

 「ジュリが無事でよかった、残念だが、ゴールドマグロは…くっ!」 

 「――フウカがいない…?」

 「――いつものやつか?」

 「いつものやつかー…」

 

 バラバラになったパズルのピースが、いろいろなところが足りなくても明確な縁取りを描き始め、その縁取りの隙間の中に連邦捜査部S.C.H.A.L.Eのカズマ先生がピタリとはまった時、最悪の想像が奔流のようにジュリの脳裏を襲った。そう、その最後のピースは、平然とした顔で、目の前でご飯を食べているカズマ先生は、いま、まるで何が起こっているのか分かっているかのように見計らってテレビを付けなかっただろうか…。言い方がとてもわざとらしくはなかっただろうか…。

 

 「……せ、せんせいまさか」

 

 「いやー、仕方ないよな仕方ない。フウカには悪いが仕方ない。

  たまたま、本当にたまたまなんだが ”運良く” 手に入った ”魚” が原因でさ…

  丁度潰したか…脅されて仕方なく…、

  生徒を助けるために、仕方なく…っ! たくさん手放すことになっちゃってさ…

  その情報がなぜか俺にはさっぱり分からないんだが…、

  その筋に詳しい生徒の耳に届くように噂みたいに拡散されちゃったもんだから…」

 

 「…あわわわわわわわわわ」

 

 ――ジュリは走馬灯のように思い出す。こうやって図ったようにタイミングよく、カズマ先生と食事をするのは何回目だったかということを。こうしてフウカ部長が連れ去られてテレビに出演することになったのは何回目だったのかということを。

 

 「せんせい私をアリバイ」

 

 「おーっと俺にはなんのことかさっ――――ぱり分からないが…

  ところでジュリ、この前、新しく入部した給食部員たちと、

  ――後俺と一緒に、魚釣りに行ったこと覚えてるか?」

 

 「(……パクパク)」

 

 「――余った魚を、”複数の業者” に卸しに行ったよな?」

 

 「せんせいは私と一緒にご飯を食べてました。」

 

 「そうだな、その通りだ。だから今後も頼むぞ? ――どうせそのうちバレる」

 

 「……せんせぇ」

 

 「――やめろやめろやめろ、そんな目で俺を見つめるんじゃない…!

  いや悪かったよ!! 他の手段を思いつけなかったんだよ…!

  俺一人でフウカに怒られるのは嫌だったんだよ…!!」

 

 「最後のが本音ですよねぇ!!」

 

 「――そうだよ悪いか!」

 

 「――悪いですぅ!!!!!」

 

 ギャーギャーワーワーと二人の声が響く給食部で、カズマは共犯者を一人手に入れることに成功した。




vs.美食研究会(+フウカ) 開幕。

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