超法規的組織シャーレ で 仕事をしたくない サトウカズマ先生 作:奈音
「――カズマ先生! これはどういうことですか!!」
「うおっ…! な、なんだよユウカ、カルシウムが足りないのか? お菓子食う?」
「お菓子は貰います……そうじゃなくて! どういうことか説明してください!」
あれから一日。
連邦捜査部S.C.H.A.L.Eは、怪しい戦隊仮面や、ヘルメットを被った郎党、×印の付いたマスクを付けてうろつく不良ばかりのメッカと成り果てていた。その建物の中にある一室で、狐面の少女を秘書のようにこき使っている最低な絵面を作り出している男と、それに抗議する少女の姿があり、どちらに非があるのかは明確であった。
「なにって、なぁ」
「主様のなさることはすべて正しいかと」
「(重すぎて怖いんだが…、俺の第六感が余計なことを言うなと言ってる)
まぁ、ワカモがいて助かってるよ」
「ワカモ?!?!?」
「まぁまぁまぁ、待て待て待て」
ステイステイステイ、と落ち着きのないドーベルマンをあやすような所作で、銃を構えて臨戦態勢をとりそうなユウカをなだめる。
「何を待てって言うんですか?! その娘は危険な指名手配犯で・・・!!」
「いやまぁそうなんだが、こいつも生徒じゃん…矯正局だっけ?
本来はそこにいるべきなんだろうけど、試しにシャーレに登録したらできちゃって」
「できちゃってじゃないですよ! なんですかその犬猫を拾ってきたみたいに!」
「ぁー、それについてなんだが、ヒフミー! おーいどこだー!
モモフレンズが好きすぎて裏」
「――ああああああああああああああああああああああああああああああ!!
お呼びですか先生!!!」
「――ヒフミちゃん?! どうしてここに?!」
「あ、あはは……、そ、その。 こんにちは、ユウカちゃん。」
不良の溜まり場と、指名手配犯と、トリニティ学園の有数の人格者の組み合わせに、とうとうユウカの頭が限界を迎え始める。
「――紹介しよう、ここの不良共のボスだ」
「違います!!!」
「え、でも昨日やるって言ったじゃん」
「言いました、言いましたけれど…!
あれは言わされたというか、言わざるを得ない状況に追い込まれたと言いますか…」
「ボソッ(――ペロロジラ」
「私がここの不良たちのボスです!!(キリリッ」
「――ヒフミちゃん??!!!」
「そういうわけだから、詳しい事情はヒフミから聞いてくれ…。
まさか一晩中走り回ることになるとは思ってなかったから、さっきから眠気がやばいわ…」
「最善を尽くします、カズマ先生(キリリリリッ」
「ちょっ…、本当に寝る気ですか? 先生? カズマ先生?!?!」
シャーレに支給された制服ではなく、機能性の高そうな緑色のジャージを着たカズマは、悲痛な女子生徒の訴えを無視して仮眠室に逃げ込むことに成功する。
部屋の前には門番よろしくワカモが立ち塞がり、梃子でも動かない構えだ。シャーレと同じく、治安維持においての特権を与えられたSRT特殊学園生徒の、そのTOPに君臨する実力を持ったFOX小隊によって、ようやく捕縛に成功した程の実力者であるワカモを制圧できる自信はユウカには存在しないため、諦めるほかない。
「嘘でしょ、ほんとに仮眠室に入っちゃうなんて…」
「あはは…、カズマ先生、昨日は本当に大変でしたから。
でも大丈夫ですよ、今日も出かけるって言ってましたから」
はいこれ予定表です。と手渡されたバインダーには今日一日のスケジュールがみっちりと詰まっていて、仮眠室に入っていった先生が一時間後には動き出すことが明記されていた。
徹夜したその上で、今日もここまで仕事の予定があるという状態を見せられて、意気軒昂としていたユウカも思わず後ずさるような業務量だ。業務というかこれはどちらかというと・・・?
「――ゴミ拾い、雑草抜き、抗争で散らばった薬莢撤去、通路を妨害する木々の伐採、
戦車によって破損した道路工事…、これが予定…?」
これではただの奉仕活動部ではないか、ユウカはいぶかしむ。
「…その、先生が言うには、キヴォトスには治安維持組織はあっても、
社会保証や社会復帰の為の組織が存在しない、もしくは敢えて作っていないと仰ってました。
だから、そいつらは俺が先に全部貰うって言って、
言葉巧みに騙、言いく、誘惑、どうか…じゃなくて勧誘をですねっ!」
「――全然隠せてないじゃない…」
もはやユウカは言葉もない。
しかし、かなり真面目に取り組んだであろうことが伺える計画書と予定表、予算の見積もりや諸元表に目を通していくと、少しずつおかしいことに気が付く。ユウカはヒフミから話を聞きつつ、書類の数字の訂正をしながら先生が起きるまで待つことにした。
10連で出た時点で強制的にシャーレ所属って怖くない? 私は怖い。