「オジサンより若い女性の口が臭い」の衝撃...気になる原因と対策

「口臭がひどい」と聞くと、「お酒やたばこを好む男性に多そう……」というイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。実は、若い女性の口臭の方が中高齢の男性よりも深刻であることが、「口臭白書」の調査で明らかになっています。それには女性特有の原因があるといいます。「歯と口の健康週間」（６月４〜１０日）に合わせ、口臭の原因や適切なケアの仕方について専門家に聞きました。

口臭白書は、歯科医療総合商社のモリタや歯科医師らが参加する「ブレス・ハザードプロジェクト」が、2019年に行った調査です。その中で、口臭レベルを測定したところ、基準値をオーバーした人は、男性8.3％に対し、女性は17.9％と、女性が２倍以上の割合になりました。年代別に見ると、40〜60歳代の「中高齢の男性」（9.3％）よりも、20〜30歳代の「若年層の女性」（11.5％）の方が、口が臭うという事実が明らかになりました。

なぜ女性の方が、口臭が深刻なのでしょうか。オーラルケア製品を手がけるサンスターで、口臭や歯周病について研究している溝口奈菜さん、永谷美幸さんに話を聞きました。

溝口さんによると、口臭は生理的なものと病的なものに分けられます。生理的口臭は起床時や、においの強いものを食べた時などに一時的に発生するものです。「女性は、生理前や生理中にも口臭が強くなる傾向があります。それは、一時的に女性ホルモンが増え、それをえさにする口の中の細菌が増殖しやすくなるからです。そうすると唾液が少なくなり、口臭が強くなります」と溝口さんは説明します。

病的口臭は、口の中の汚れや病気などに端を発します。消化器系の病気や糖尿病などが原因で口臭が発生する場合もありますが、原因で最も多いとされているのが、「歯周病」です。歯周病には、歯茎が赤く腫れたり出血したりする「歯肉炎」と、炎症がさらに進んで歯を支えている骨が溶ける「歯周炎」があります。

溝口さんは「歯周病菌は女性ホルモンを好む傾向があります。そのため、女性特有の歯周病になりやすい原因があり、口臭で悩む人も多くなっています。女性には歯周病のリスクが高まるタイミングがあります」と言います。

【女性に３度訪れる歯周病ピンチのタイミング】

（１）思春期女性ホルモンの分泌が始まり、ホルモンが増え続けて歯肉への血流量が増えます。その結果、歯茎が腫れて出血しやすくなります。

（２）妊娠・出産期妊娠期は、女性ホルモンの分泌が普段の10〜30倍にも増えるため、リスクが一気に高まります。また、産後も育児で忙しく、自分のケアをおろそかにしがちで、歯周病になってしまうケースも多いようです。

（３）更年期更年期を迎えると、女性ホルモンが減って骨密度が低くなり、歯を支える骨ももろくなります。そうすると、歯周病にかかった時に症状が悪化する恐れがあります。

女性は、思春期から更年期まで、歯周病リスクの高い状態が続きます。その中でも、特に気を付けたいのが妊娠・出産期です。妊娠すると、初期にはつわりで治療を受けるのがつらかったり、後期にはおなかが大きくて治療台に乗れなかったりと、通常の時と比較すると歯科医のもとへ通院することが難しくなります。溝口さんは「女性は、妊娠前から歯周病を予防する習慣を身につけることが大切です」とアドバイスします。

歯周病の対策としては、毎食後に歯を磨いて歯こうを取り除くことが大切です。歯ブラシだけではなく、フロスや歯間ブラシも使いましょう。永谷さんは、「歯ブラシだけでは歯と歯の間の歯こうはおよそ６割しか除去できませんが、歯間ブラシを使えば85％の歯こうを取り除けます。１日１回でもいいから使ってください」と話しています。

フロスはのこぎりを引くようにスライドさせながら挿入すると、歯茎を傷つけません。妊娠中で歯ブラシを口に入れると気持ちが悪くなる時などは無理をせず、こまめに口をゆすぐなど、出来る範囲でケアをします。

歯周病は自然に治ることがありません。一度溶けた骨は戻ることはなく、進行すると最後には歯が抜け落ちてしまいます。軽度の段階では痛みがないため、多くの人は自覚がないまま症状が進んでしまいます。

永谷さんは「歯周病の有無にかかわらず、かかりつけの歯科医の指導に従って、３か月から半年に１回は検診に行くことをおすすめします。正しいケアの方法も教えてくれます。口臭が気になったら、歯周病かもしれないと疑って、すぐに口の中をチェックしてもらってください」と呼び掛けています。

（読売新聞メディア局　バッティー・アイシャ）