第45話 「真・闘拳《The:Fighting Fist》」
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第45話 「
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——そう、これは、魔性の料理をかけた戦いだった。
「最後は、ヒレ肉を使った料理をご用意します!」
リンが、最後のメニューだと言って発表したそれに、一堂は各々の反応を見せる。無表情の者、目を細める者、舌なめずりする者、さまざま。
「……といきたいんですが、生憎ととても貴重な部位です。アッシュさんからいただいた量ではせいぜい一人分が限界かと思います」
場にも、落胆が訪れる。それを払拭するかのようにリンは、
「よってそこで! 何か簡単なゲームを行って、その勝者一人にヒレ肉料理を進呈しようかと。皆さんやっぱり、食べてみたいです?」
問いにはもちろん全員が手を挙げる。オレたちはこの一時間余りですっかり彼女に胃袋を掴まれてしまっていた。
「結構です。では、どんなゲームをやるかですが、それも皆さんに決めてもらいます」
言って、テーブルに置かれたのは中央に穴が空いたボックス。そして羊皮紙とインクとペン。
「今ここで行えそうなちょっとしたゲームを書いて、箱の中に入れてください。ランダムで一つ選びますから」
「なるほどね」お先と、アッシュがペンを取る。「ここでできるならなんでもいいの?」
「ええ。でも、あまり暴れないでくださいね? 私が店長に怒られちゃいます」
……そうして各々が羊皮紙に書き記していく。
「ねえ」トントンとレインが肩を叩いてくる。「リンは先ほどからゲームを書けと言っているけど、ゲームとは何を指しているの?」
「簡単にできるパーティーゲームの類だろ。例えば闘拳とか。最初はロック、ってやつ。知ってるだろ?」
「わかった。ではそれを書こう」
「待て、せっかくならだな」
オレは口を彼女の耳元に寄せて、提案を囁きかける。
「うぅん。二人で、そして半分か……。悪くない賭け。乗ろう」
ちょうど回ってきたペンを握って、レインはこくりと頷いた。
全員が書き終えた羊皮紙をリンへと渡す。彼女はそれらを中に放り込んで、適当にかき混ぜる。そして、迷うそぶりもなく一枚を抜き取った。
「えーと、行われるゲームは『真・闘拳』……ですか? 真? なんですかこれ」
チッ。外したか。……で、なんだって?
「このミミズみたいな字はアッシュさんですよね?」
「さらっと傷つくこと言うね? それはそうと知らない? 真の漢を決める伝説の闘拳だぜ?」
「……女もいるだろうが、このゲス茶髪が」
「だからいいんじゃん! ねえ? シーナさん?」
「うーん。私はパスね」
「あらら……ダメですか?」
「当然だ」ニアはゴミを見るような目でアッシュを睨みながら、「おい、ディーラー。このゲスの提案の無効だ。もう一度他のを引け」
状況がよく飲み込めない。闘拳……なんだろ? 何がそんなゲスいんだ?
「私は存じ上げないのですが、いったい真の闘拳ってなんなんです?」
「ああ、オレもそれが聞きたい」
「なんだよ。ヒロまで知らねえのかよ」アッシュは本気で驚いた顔をして、「ま、簡単に言えば脱衣闘拳だな。闘拳をして負けた方が一枚ずつ脱いでって全裸になった方が負け——」
「「アッシュさん⁉︎/アホなのかお前⁉︎」」
リンとオレは同時に突っ込む。リンなんて、顔が耳まで熱っている。
「いやもちろん、最低限は弁えてるぜ? 男は容赦なく最後までだが、女の子は下着まででいいって感じにすりゃあ、」
「それでもアホだよ。ったく、リンさん。さすがにちょっとこれは……」
「うーん……でも、クジで決めたことを簡単に変えては意味がありませんし……公平性に欠けます」
「公平性っつってもなぁ……」
「下着までなら、まあ、水着とかとあまり変わらないですし…………決めました。認めましょう。豚ヒレ肉を賭けたゲームは、真・闘拳です!」
なんてこった……ディーラーがリンだったのが運の尽き。アッシュには甘すぎる。なまじ料理を作ってくれる本人なのだから、決定にも逆らいづらい。少なくとも苦虫を噛み潰したような顔をしているニアはそう思っているだろう。
クソ、せっかくレインと半分こするって同盟組んで、「しりとり」を書いた紙二枚入れたんだぞ。語彙力勝負ならやりやすい……いや、別に他だっていい。みんな、馬鹿アッシュよりゃよっぽどマシなゲーム選んでるだろ。よりにもよって……。
「では、参加する方は挙手を」
当然、アッシュが手を挙げる。当然、オレは挙げない。こりゃアッシュの一人勝ちかクソと、思っていたのだが。もう一人。
「アッシュさんと……レインの二人ですね」
「なっ、ちょ、レイン本気か? 大衆の前で脱ぐんだぞ⁉︎」
「全部は恥ずかしいけど、下着までなら問題ない。たしかこれは今着てる服が多い方が有利なゲームでしょ? 手袋なども『一枚』に入るはず」
「そうだぜ。ちなみに今から追加するのは禁止だ」
ケラケラと説明を補足するアッシュ。
てかレインお前、このふざけたゲーム知ってたのかよ。相変わらず知識の振れ幅どうなってんだ。
「任せて、ヒロ。半分この同盟は忘れていない。私が勝てばちゃんと食べさせてあげるから安心して」
うぐぐ。なんか頼もしいけど情けねえ気分。
「あら、同盟。それいいわね」
と、沈黙を守っていたシーナ……姉ちゃんが、アッシュへと流し目を送る。
「ねえ、アッシュ。あたしもヒレ食べたいんだけど、半分この同盟とやら、組んでくれない」
お、おお。結構無茶苦茶なこと持ちかけるな、あんた。このタイミングに言うことじゃねえ。
……でも、リンがアッシュに甘けりゃ今度は、アッシュもシーナ姉ちゃんに対してめちゃくちゃ甘いのだ。
「もちろん。というかもともとそのつもりですよって。女のために体張るのが男ってもんです」
チラッ。
一瞬。ほんの一瞬だけアッシュと目が合った。
奴の瞳はこう言っていた。
来いよ。ビビってんのか?
「それじゃあ、ちょうど二人の参加者なので、いきなり最終戦ということで……」
「待った」
声を上げたのはオレだ。
「レインは下がっててくれ。オレがやる。やってやろうじゃねえか」
安い挑発なのはわかっている。そうまでして肉が欲しいのかと言われても違う。
ただ、
レインの裸を衆目にさらけ出すのは、なんか嫌だ!
それこそ、周りの客たちからなんだなんだと視線が集まってきている。いい感じに赤くなっている奴ばかりであり、ちょうどいい余興を観る感じだ。そこにレインの下着姿? まずいだろ?
同居人として、そして一応、男として、矢面に立つべきはオレの方だ。
「うぅん……。ヒロが出るのは構わないけれど、それならば一緒に出た方が勝率が上がると思う」
「そういうのじゃねえんだ。でも、このクソゲームにお前を参加させるのは、絶対違う」
そうこなくちゃな、とアッシュは立ち上がり拳を構える。
オレもレインに有無を言わせないと、奴に続いた。
「……そこまで言うならヒロに任せよう。ただ、気負わなくていい。自分たちの分で自分で作ればいいから。リンの料理が楽しめないのは残念だけど……」
あ……そういや、オレたちはオレたちで確保してるのか。勢いそのままに飛び出してしまったことをさっそく後悔するが、ステージには上がってしまっている。
「それでも、食ってみたいよな」
「うん。それはそう」
「よし、任せろ!」
オレも拳を前に突き出す。
「改めてルールの確認です」オレたちの間に立つリンは、それぞれの顔を見やって、「闘拳をして、負けた方が『一枚』、着衣を脱ぐ。手袋や靴などの小物も『一枚』にカウント。それでいいですね?」
オレたちは、頷く。そして拳を握りしめた。不思議な緊張感とともに、観衆の気配が消える。
「それでは、どうぞ!」
合図と、一緒に、
「「最初はロック! とう、けん——」」
「『脱ーげ! 脱ーげ!』」
どこの誰とも知らねえ男どもは、全力で同じ言葉をコールしている。クソが、もうちょい他にかける言葉はねえのか。間違いなく確信を持って言えるが、奴らはオレの性別を勘違いしてやがる。
……オレは今、脅威の五連敗を喫して絶体絶命の窮地に追い込まれていた。奴のスカしたブーツを片方脱がした初戦が最後、連戦連敗。手袋片方、靴を一足、そして髪を結ぶリボン二つ。もともと着込んでいないオレのこと、ほとんどもう後がなかった。
なによりシャツを脱いでしまえば、残るは体のラインが出るインナーのみ。着心地が良く好きでしてる服装だが、全身を見せびらかすのは普通に恥ずい!
だけど……これは男の勝負。
ええいままよと、引きちぎらんばかりにシャツを脱ぎ捨ててやった!
「『おお‼︎ おおおおおお……………………お?』」
爆発的に盛り上がった歓声に、明らかな疑問の色が生まれる。
「なんだよ、あの変ちくりんな格好。全身タイツ?」
「ていうかまな板すぎじゃね? 無駄に体格良いし……って、もしかして男か⁉︎」
「いやあの顔でそれはねーだろ。ねーよな? でも心なしか股間の辺りは……」
観衆は口々に、好き勝手語り合う。
「〜〜〜ッ‼︎」
脱いじまった手前、オレにはこの地獄の空間を耐えることしかできない。なぜ。なぜ
「ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ‼︎」
周囲の反応を見て、アッシュは今まで聞いたことのないような声で笑っている。涙が止まらなくなって、リンに介抱されている始末。
「いや、おい待て、ニアだって似たようなもんだぞ、なあ。あいつも脱がせてみればわかる!」
自分がサイテーなことを言ってるのはわかってる!
でも、このままオレがただの変態で終わるのだけは納得いかねえだろ?
「……ほざくなっ。例えそうだとしても、欲とくだらないプライドに溺れ、リスクの管理を怠った結果がそれだろう」
ニアの正論で、頭をこれでもかとどつかれた。その通りでございます。
「だーはっはっはっ! 違いねえ! やっすい挑発にほんと弱いのな!」
クッソ野郎が。一刻も早く奴を丸裸にしねえと釣り合わねえ!
「テメェ、アッシュ! 笑ってる暇あったら、さっさと拳を握りやがれ! 次は絶ッ対ェ勝つ!」
「つってもよ、お前。もうそれ脱いだら丸出しじゃねえのか⁉︎」
「まだスパッツが残ってんだよ。さっさとやるぞ、視線がうるさい!」
何を期待してたのか周りの猿どもはブーブーと文句を飛ばしてくるし。公平性がどーのと言っていたリンでさえも、口の端に浮かぶ笑みを抑えられてない。
「……っ。ヒロさんって、ひょっとして変態さんです?」
「これが自主的なもんならそうかもだけどな……」
一刻も早くその好奇の視線をやめてほしい。
クソが。やはりさっさとケリをつけるしかねえ。
まあ、オーケーだ。ここまでは一応、想定内。データは集まった。この場の勝負だけじゃない、今まで奴とやり合った全ての闘拳を追想していく。
こんな時、この大一番の一歩前。
こいつなら、こいつなら——。
「行くぞアッシュ!」
「よっしゃ!」
「「最初はロック! とう、けん——」
「『脱ーげ! 脱ーげ!』」
あー、ダメだ。半年足らずじゃデータ足りねえぜ。
もう今更抵抗する気など起きなくて、大人しくインナーを脱いでいく。クソッ、これ正直一人だと脱ぎにくいんだよ。
十数秒の格闘後、オレはスパッツ一枚であらゆる視線に耐えねばならなかった。客はグラスを片手に、店員まで仕事の手を止めて、オレの惨劇を見届けている。あれ、あれ、オレ何やってんだろマジで。
「ヒロさん、本当に男の子だったんですね……」
なぜだか神妙な顔で呟くリンに、もっとわかりやすい証拠見せてやろうかと本気で言いそうになった。
「ヒロよ。オレも
アッシュが慈悲深き顔(悔しいかな、不思議とそう見えた)で拳を突き出す。大事なものを急速に失いつつあるオレは、その慈悲に縋りそうになったところで、
「ああ……もういいや、降参する。リザイン。ギブアップ。オレの負けだ。もともとお前の肉なんだし大人しく譲るよ」
そうだ。傷が広がる前にこうすればよかったのだ。
ニアの言う通り、リスクがメリットに釣り合ってないから。
「……はあ?」
だけど、アッシュは、いや、アッシュたちはやっぱり
「おいみんなー! 聞いたか? 俺たちは男の勝負の場に上がったはずだ。なのにこのキサラギ・ヒロは、今からギブアップだとか抜かしやがった……。
——許せるわけねーよなぁ⁉︎」
「『当たり前だーーーー‼︎』」
ですよねー。
「冒険者の墓場」中に響き渡る怒声で、オレは悟る。終わった。ついには奥に篭っていたはずのオヤジまで見物に参戦していた。レンもその横でケタケタ笑ってる。
泣きそうになりながら唯一の仲間であるレインへと顔を向けると、彼女は大きく、深く頷いた。
なるほどな。
「骨は拾ってやる。安心して行ってこい」と。
くぅー。泣けてくるぜ。
「アッシュ……やろうか」
「おうよ。散り際で光ってみせな」
もはや掛け声さえもアッシュ任せで、オレは最後の勝負に踏み出した……。
「もう……ほんと最悪だ、クソ……」
全てをさらけ出すはめになったオレは、テーブル席の隅で蹲っていた。人の痴態をさんざん嘲笑った見物人たちは、良い余興だったとノリでおひねりなんか放ったりしてくれたが、ちっとも嬉しかない。
「つーか、そろそろ服返せお前ら。もう十分辱めただろうが」
「いやいやせっかく剥いたのにつまらねーだろうよ。飯食って酒飲んでしたら寒さなんて吹っ飛っての」
「オレにはデザートが並んでるようにしか見えねえんだが」
戦利品であるヒレ肉をシーナ姉ちゃん——あー、めんどくせえ——姐さん(やっぱりこれでいいだろ)とアッシュが無駄に見せつけるようにゆっくりと食べた後、食後のデザートが運ばれてきたのだ。柑橘系の香りがする氷菓子だった。
「うーん、美味し」姐さんは、ほっぺたに手を当てながら、「ヒロも拗ねてないで食べなさいよ。溶けちゃうわよ」
「気分じゃねえ。あと頼むから服返してくれよ……」
「ダーメ。それに大丈夫よ、恥ずかしがらなくて。立派立派」
明らかに下腹部に注がれる視線にオレはため息しかつけない。
「レイン……なんとか言ってくれよ」
「うぅん。私の服でよければ喜んで貸すけど……胸周りのサイズが合わないと思う。そうだ……レン! 少し頼まれて」
レインの呼び声に、給仕を再開していたレンが首を傾ける。
「なになに、注文? コーヒーとか?」
「いや……この通りヒロの着るものがなくて。なんでもいい、ヒロに服を貸してあげてほしい。同じ男だし、たしかレンは裁縫が得意だったはず」
「服ー? 喜んで! と言いたいとこだけど……職場に衣装なんか持ってきてないしねぇ……。下着ならあるけど、持ってこようか」
「それで構わない。助かる。……よかったな、ヒロ」
「あ、ああ」
なーんか、嫌な予感。
「じゃ、ほんのちょっとだけ待っててねー」
控え室へと消えていくレンを見送る。
せめて「下」だけでも隠せればと希望を抱いて待っていたが、
「じゃーん!」
レンが花咲くような笑顔で持ってきた、黒い「女物」の下着を見て、オレは宙を仰ぐ。
やっぱりな、と。
「チェンジで」
「えー、なんでなんで! あっ、替えのやつだからちゃんと新品だよ?」
「そういうことじゃねえよ。そんなことで断ってんじゃねえんだよ。いくら女顔だろうとなぁ、最低限超えちゃいけねえラインってもんがあるんだぜ……?」
「絶対ヒロくん似合うと思うのになー」レンはがっくしとうなだれる。
「いいじゃねえかー、ヒロ。せっかくのレンの好意を無駄にしてやるなよ」
「お、アッシュくんも珍しく言うこと言うねぇ! そうだよ、僕お仕事中なんだよ? バレたら店長に怒られちゃう中、頑張ったのになぁ」
ここぞとばかりに推してくる。
「そう言われても……」
困った時のレインさんを見てみるも、「頼んだのはこちら側だから道理には……でもヒロは嫌がっている……」なんて、思考の狭間にいたので話しかけるのも憚られる。
と、
「……そういえば、さっきの戦いの罰ゲーム、決めてなかったわよね」
場を心から楽しそうに眺める魔女が、妖しげに口に出す。
「罰ゲーム?」
「戦いには罰ゲームが付き物でしょ? 今回はその下着をつける、でいいんじゃないかしら」
「いやいやシーナさん、それこそ聞いてねえよ! だいたいさっきの真・闘拳が罰ゲームみたいなもんだろうが!」
「あれはゲームの過程なんだからおかしくないわよ。そしてお姉ちゃんって呼んでない。はい、罰ゲーム決定ー!」
「んな無茶苦茶な……」
彼女の声に呼応して、レンもにじり寄ってくる。く、来るな。
「待ってほしい」レインが思考を終えたのか、口を挟む。「考えたが、ヒロがさすがに可哀想だ。せめてマントだけでも返してやってくれないだろうか」
救世主レインは毅然と説得を試みてくれた。だけどね、レイン。オレのマントの丈じゃ、余計やばいビジュアルになるかもだ。
「あら、レイン。なに他人事みたいに言ってるのかしら。連帯責任って言葉を知らない? ヒロがどうしても嫌だって言うならあんたが代わりに——」
「だーっ! わかったよ! 着れば良いんだろ着れば!」
汚ねえ話だがレインは確実に話に乗る。その確信がある。もう全ての恥を晒した身だ。最後まで潔く請け負おうじゃないか。
「はい、どうぞ」
ニコニコ笑顔で渡されたヒモみたいな露出目的でしかない下着——オレは今勝手に名付ける。「馬鹿がつける下着」だ——を恐る恐る着用する。
せっかくだしこれもつけてね、と渡されたソックスやらなんかよくわからん留め具みたいなのも諦めてつけた。もう最初からその気でしかなかったこともどうだっていい。
「…………やべーな。男だとわかってんのに……どこか興奮してしまう俺がいる……」
アッシュがすこぶる気持ち悪い発言は聞かなかったことにする。
「なんであんた、そんなに似合うのかしらね」
感心した感じのシーナ姉ちゃんの反応には悲しくなる。
「似合ってるぞ、変態」
この茶番に静観を決めていたニアがぽつりと漏らした言葉は、正直、シンプルに一番傷ついた。
「………………すまない」
言うな、レイン。今日のオレの運勢は、たぶん世界で最も最悪なだけだろうから。
その後、なんでそんなものを持っているのかカメラで記念写真を撮ろうと言い出したシーナ姉ちゃんに全力で抵抗する時間が続き、皆がアルコールに沈んでいく中で足掻きの限りを尽くす羽目になった……。
ついでに帰り際。
『それあげるよ。サイズもピッタリだし、何より抜群に似合ってる。服は着る人を選ぶからね。君にこそふさわしいよ。あ、お代は結構。その代わりまた食べに来てね!』
うるっっっっせえ。二度と行くか馬鹿野郎っ!
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エクマク裏話「そのための拳」
闘拳は、皆さんご存知「じゃんけん」を海外風の「ロック・ペーパー・シザース」と合わせたものです。そして宴会芸といえば野球拳! ファンタジー世界でこーいう文化は珍しいので一度描いてみたかったのでした。
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