70歳で獲得した「新しい価値観」
大崎さんの話を聞いていると、いつもその興味や発想が好奇心の赴くままにあっちこっちにいっぱい伸びて行くのを感じる。最終的に大崎さんはどこを目指すのだろうか。
「服が好きなんやけど、今年70歳になるので昨年の秋ぐらいから、服とか新しいのを買わんとこと。それまではね、ネクタイ買ったりしたら、『これがサラリーマン生活最後のネクタイかなあ』とか、『スーツもいよいよこれ最後やろな』とか、なんやかんや思って。
このボタンダウンのシャツとかでも、アイロンもあててないし、自分で洗ってバーバーと干すだけやから、白いシャツもこの辺が毛羽だってきてて。年寄りやから、ちょっと擦り切れてても、ちゃんと洗濯した服を着てたら、それが一番、歳相応というか分相応というか、それがエエなあ。
今までやったら、服の襟の形はどうで、ブルゴーニュは何とかで、時計は何とかで、バブルの頃もあったし。けどそんなんがスコーンと落ちて、このシャツも20年ぐらいやし、なんかそのぐらいの気分ですかね。なんか自分の新しい価値観というか、70歳になって見えてきたので。
吉本興業ホールディングス・大崎会長(撮影:春川正明)
まあ当たり前やけどいつ死ぬか分からへん。もちろん頑張ってあと10年で80歳。健康な70代とは思うんですけど。『大崎さん、昨日まで元気で、またゴルフと言うてはったのにねー』ってよくある話やないですか。
そう思うと、まあ70代の自分なりの物差しみたいなのが、ちょっとだけ見えて来たので。本を買うのやったら文庫本にしとこ、服は大事に着て、毎日洗って清潔やったらよしとかって思う様になったので、ちょっと楽しみ、みたいな感じですかね」