2008年8月21日(木)「しんぶん赤旗」
主張
「秘密保護法制」
狙いは国民の目をふさぐこと
軍事・安全保障に関する情報を覆い隠すための「秘密保護法制」の制定に向けた新たな動きが、政府のなかで強まっています。最近注目されるのは、経済産業省の「技術情報等の適正な管理の在り方に関する研究会」(座長=土肥一史一橋大学大学院教授)が先月二十八日出した報告書です。
報告書は企業や大学の技術情報の管理強化を狙ったものですが、そのなかで、軍事情報の秘密化と漏えい防止の「適切な規律を設けるべき」だと「秘密保護法制」の制定を求めています。
戦争態勢づくりと一体
経産省の報告書は、軍事や原子力施設防護の秘密情報の保全が「秘密の対象、行為主体、対象行為は非常に限定的」であり、罰則も個別法で他の分野との「差異が大きい」とのべて、「秘密保護法制」の必要性を説いています。「秘密保護法制」について政府の情報機能強化検討会議が今年二月に示した、「研究の継続」に比べ、今回の報告は一歩ふみこんでいます。
「秘密保護法制」は軍事・安全保障の秘密情報の漏えい防止をたてに、マスメディアと国民の知る権利をじゅうりんする憲法違反の悪法です。日米軍事同盟の侵略的強化やアメリカとともに海外でたたかう態勢づくりを進めるために、国民の目と口をふさぐなどとうてい許されることではありません。
政府はこれまで、アメリカいいなりに秘密保護の措置をとってきました。日米相互防衛援助協定にもとづく秘密保護法や米軍地位協定にもとづく刑事特別法、国家公務員法や「改正」自衛隊法によって秘密漏えい防止措置は強まっています。戦争態勢づくりの実態を国民は知ることが困難になっているほどです。
アメリカは日本政府がとったこれまでの措置に満足せず、適用対象者や対象情報などを拡大し、保全措置の強化を求めています。
とくに、日本を海外で米軍とともに戦争させるため、米軍の秘密情報を日本に共有させる条件としてアメリカ並みのきびしい秘密保護法の制定を求めています。実際、経産省の報告書も秘密保護法の制定を求める論拠に、「機密情報を保護する法律の立法化」を日本に要求したアーミテージ元米国務副長官の二〇〇〇年の報告をあげています。
政府は、昨年八月結んだ「日米秘密軍事情報保護協定」にもとづく国内法化も狙っています。
見過ごせないのは、経産省の研究会の提起には国民すべてを適用対象にする危険があることです。報告書ではアメリカの秘密保護法が一般国民を対象にしていることを詳しく図示しています。自衛官など特定の人々だけでなく、メディアや一般国民も秘密保護法の対象にすることを含んだ提案であるのは、否定できません。
過ちをくりかえすな
戦前、政府は「軍機保護法」などの秘密保護法をつくり、国民が政府・軍部の情報を知ることをいっさい禁止しました。国民の目と口をふさいだことが侵略戦争につながったことは、歴史的な事実です。
戦前の過ちをくりかえさせるわけにはいきません。知る権利を保障した現憲法のもとで「秘密保護法制」は認められません。平和の願いに反する危険なくわだてを許さないたたかいが重要です。